国内 2025.03.02

居心地良くない。それでいい。仁熊秀斗[東京サントリーサンゴリアス/WTB]

[ 明石尚之 ]
居心地良くない。それでいい。仁熊秀斗[東京サントリーサンゴリアス/WTB]
WTB仁熊秀斗は2021年加入の26歳ⒸJRLO

 東京サントリーサンゴリアスの仁熊秀斗(にぐま・ひでと)にとって、2月15日の東芝ブレイブルーパス東京戦は約700日ぶりの公式戦だった。

 2023年3月26日のグリーンロケッツ東葛戦以来である。
 前半16分に登場、28分にはトップスピードで走り込みながらSH流大のフラットなパスを受けてトライラインにねじ込む。後半7分にはラインブレイクからFB河瀬諒介のトライをアシストした。

 23日の浦安D-Rocks戦では先発を勝ち取る。そこでもトライを挙げ、直後にはプレースキックも披露。左隅の難しい角度からでも見事に沈めた。

「高本(幹也)がシンビンだったので…。僕、(キック)上手いですから(笑)」

 3月2日の横浜キヤノンイーグルス戦でも背番号11をつける。
 待ち望んでいた試合に絡み続ける日々に、「めちゃくちゃ嬉しい」と素直な思いを口にした。

「ただ、出る以上はチームの代表なので、その重みをしっかり感じながら勝利に貢献したいです」

 大学までは大きなケガの受傷歴がないことが自慢だった。しかし、9試合に出場できた1年目を終えると、複数のケガに悩まされる。

 2年目は左足のジョーンズ骨折(第5中足骨骨折)で3試合の出場にとどまり、昨季もふくらはぎの肉離れで3か月離脱。出場ゼロでシーズンを終えた。

「2年目のシーズンでどうやって成長していくかを考え、いろんなトレーニングを取り入れました。それが原因とは限らないですが、まずは自分の体をしっかり理解することが大事と気づけました。いま何が必要なトレーニングかを選ぶ。それが今シーズンは上手くいっています」

 グラウンドに立てたない日々は苦痛だったが、「自分がいまできることを一つひとつやろう」と気持ちを切り替えられた。

「活躍している仲間を見ると、羨ましい、自分もああなりたい、早くピッチに立ちたいという思いが強くありました。でもそう思っても何も変わらないので」

 あらためて体づくりに注力し、ウエートと食事管理を徹底。体脂肪を落とし、「走りやすくなりました」と変化を実感する。

「一番は体の見た目が変わりました。それまで腹筋が割れてなくてカッコ悪かったんですけど、カッコよくなったと思います(笑)」

 シーズンオフの夏にはニュージーランドへ。オークランドのイーデンラグビークラブに約2か月間在籍し、試合を重ねた。試合勘を取り戻してから、激戦区の競争に戻れた。

 主戦場とするWTBやNZでプレーしたFBには、南アフリカ代表のチェスリン・コルビ、松島幸太朗をはじめ、今季好調の河瀬諒介、尾﨑兄弟(晟也、泰雅)、経験豊富な江見翔太らがいる。

 簡単には出場できない環境だが、仁熊は歓迎する。石見智翠館、筑波大では1年時からレギュラーを勝ち取り、一度も譲らなかった。

「競争があることは入るまでに分かっていました。自分にとって居心地の良い場所は成長が止まると思っています。そういう意味で最近はずっと居心地が良くない。そこをどう改善するかにマインドを持っていけます。すごく良い環境です」

 3月2日のイーグルス戦は、勝ち点21同士の6・7位対決。勝てばプレーオフ進出圏内の6位に浮上できる。

PICK UP