「20分レッドカード」や「時短」目的の試験的ルールをワールドラグビー執行委員会が承認。国際的試験ルールへ採用の可能性高まる。
国際統括団体ワールドラグビー(WR)は、WXV、パシフィックネーションズカップ(PNC)、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)等で施行された試験的ルールについて、執行委員会は前向きな評価を下し承認したことを10月8日に発表した。今後、国際的試験ルールとして採用される可能性が高まった。
TRCなどで導入された試験的ルールは、プレーのスピードアップ、中断時間の短縮、正確かつ一貫した試合運営のサポートにより、観戦やプレーの体験を向上することを目的としたもの。今年2月に開催されたWR主催のフォーラム「シェイプ・オブ・ザ・ゲーム」の中でもスピードとフローの向上について提言を受け、こうした意向が反映されていた。
【国際的試験ルールへの移行が推奨される競技規則】
□コンバージョンキックの制限時間の短縮
現行の90秒からペナルティキックと同じ60秒へ短縮し、ゲームのスピードアップを図る。
□スクラムとラインアウトの30秒制限
レフリーのチェックにより、スクラムとラインアウトは30秒以内にセットしなければならない。
□22mライン内でのマーク
キックオフでの争奪性をより高めるため、リスタートから22mラインの内側でマークできるようになる。
□シングルストップモール
モールが1回停止したらボールをプレーしなければならない。これによりゲームの流れを改善できる。
□ノンコンテスト(争奪なしの)ラインアウトでのプレー続行
ノンコンテストラインアウトでノットストレートでボールが投げ入れられた場合、プレーは続行される。不必要な中断を減らす。
□スクラムハーフの保護
スクラム、ラック、モールにおけるスクラムハーフの保護が強化され、流動的なオープンプレーを促進する。
【前向きなフィードバックとゲームへの影響】
試験的ルールは以下の結果をもたらしたことで、WRの執行委員会は支持を表明した。
□ボールインプレー時間の増加
2分30秒以上増加し、1試合あたり33分以上に達した。
□試合時間の短縮
中断時間の減少により、3~5分短縮。
□試合再開時の競技性の向上
キックオフでの争奪可能性が45%増加。
□よりダイナミックなモール
ボールアウトタイムが10%増加し、モールの継続時間が3秒短縮。
□ラインアウトでの反則の減少
ノットストレートスローからのプレーオンにより、ラインアウトの成功率が高まり、争奪可能性が高まった。
□セットプレーとキックの迅速化
スクラムとラインアウトの形成時間が短縮され、またゴールキックを蹴るまでの時間が15秒速くなった。
【TMOの手順とレッドカード制裁プロセスの簡素化を承認】
WR執行委員会はテレビジョンマッチオフィシャル(TMO)手順のアップデートを承認し、得点前の最終局面で明確な反則を発見する権限をTMOに与える。
また制裁の標準化、そしてレッドカードを受けたプレーヤーを20分後に交代させる機能(いわゆる『20分レッドカード』)を特徴とした、簡素化したレッドカードのプロセスについても、ワールドラグビーの大会での試験的ルールの適用が「成功」と判断され、今後トップレベルのゲームでの試験導入が支持された。
今後、試験的ルールは11月14日に開催されるWR理事会に先立ち、各国協会に通達される。その後、理事会の承認を経てWRは各国協会、大会オーナー、主要なステークホルダーと協力し、2025年1月1日からの施行に向けて、世界レベルでの試験的ルール採用のスケジュールとプロセスを確定する予定だ。