コラム 2022.10.29
【コラム】レガシーのそれから。ハカが超えた2年半

【コラム】レガシーのそれから。ハカが超えた2年半

[ 成見宏樹 ]

 10月23日、多くの子どもたちと家族の2年半を知る吉田さんら柏の人たちには、大きな感慨を抱かせる朝になった。感染症の時代は終わっていないが、ラグビー人として、なんとか繋ぎはできたのではないか。ワールドカップとオールブラックス戦を挟む時間は短いようで長かった。あの時の3年生が、今、6年生となって舞っている。

その花のように赤く燃える勇気と名誉

私たちは足を踏み締める

俺の、力

みんなの力を合わせて、生きていこう

 再び静寂。

 最高のテンションから一転。一斉にペコリとお辞儀をしてハカが終わると選手たちが快哉を叫んだ。

「校長、ニュージランド協会のかたが呼んでます」

 取材中の吉田さんにお呼びがかかった。声をかけにきたスタッフの方の顔も上気している。

「あの立派なハカはどうやって練習したのか、誰が作ったのか、経緯について聞かせてほしいって、おっしゃってます」

 立派。そりゃそうだろう。辞めずにずっと続けてきたんだもの。本当は不要でも不急でもない、みんなの大切なものだって信じてきたんだから。

 やさしい笑顔の吉田さんたち、柏の人たちが両足を踏ん張る姿が思われた。オールブラックスが、またやって来た。

【筆者プロフィール】成見宏樹( なるみ・ひろき )
1972年生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、1995年4月、株式会社ベースボール・マガジン社入社。ラグビーマガジン編集部勤務、週刊サッカーマガジン編集部勤務、ラグビーマガジン編集部勤務(8年ぶり2回目)、ソフトテニスマガジン編集長を経て、2017年からラグビーマガジン編集部(5年ぶり3回目)、編集次長。

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