【ラグリパWest】ジャイアント・キリング 中宮中学校[大阪府枚方市]
雨が降れば、校舎の廊下で雑巾がけや手押し車。階段はおんぶをして上り下り。ウエイト設備などはない。土のグラウンドは狭く、トラックは200メートルだ。
「ポールは建てられません。試合をするには出て行くしかありません」
平日の練習はコロナのため45分。さらに週2日のオフが義務づけられている。その現状を聞いて、高校時代の恩師、仰星中高の土台を作った土井崇司(現・東海大相模校長)は絶句したと言われている。
逆境でも黒田はアイデアを考える。練習中は精力的に動き、助言を送る。
「ナイス。今のパスは愛情がこもっていた」
ほめてやる気を引き出す。
「先生は教えるのがうまいです。僕たちが納得できます。楽しいしです」
主将の名取凛之輔は充実感を漂わせる。168センチ、69キロのCTBである。
名取も準優勝メンバーのひとり。越境して中宮に来た。本来は招堤(しょだい)の校区だが、ラグビー部は以前に廃部になった。路線バスで片道30分ほどかけ登下校する。
「バスの本数は結構あります」
学校は市の中心、京阪枚方市駅から車で南へ10分ほどの住宅地にある。
中宮の学校創立は1971年(昭和46)。全校生徒は500人弱の中規模校だ。ラグビー部の創部は1990年。7年ほどして廃部になったが、9年前に復活する。顧問は黒田と英語教員の秋元文利。枚方高から摂南大に進み、現役時代はWTBだった。現在の部員数は48。3年生から順に13、19、16人。弾力化のため、半数以上が経験者だ。
枚方は大阪と京都の間にあり、北に淀川を臨む。地域的には北河内と呼ばれる。含まれるのは枚方、交野、四条畷、大東、寝屋川、門真、守口の7市。この地域はラグビーが盛んで、高校全国大会の優勝校として、仰星、大阪桐蔭、常翔啓光の3校がある。
中宮を含め北河内にある中学は、勝ち続ければ最大で年間7大会をこなす。北河内の大会が3回。新人戦(1月)、春季(4月)、秋季(11月)。今年、この新人戦決勝で中宮は仰星と顔を合わせたが、コロナで中止になった。春秋の北河内大会で勝ち上がれば、それぞれの府大会に出場する。春は太陽生命カップ、秋は近畿大会の出場権がある。
ただ、太陽生命カップの出場は変則で、大阪府選抜として参加する関西大会の結果で決まる。毎年7月末に岐阜・数河(すごう)で開催される大会において、選抜が勝てば、出場権は単独チームに回って来る。この府選抜に中宮は7人を送り込んでいる。
出場権を得ても、コロナのため、2年連続で太陽生命カップが中止になる可能性もある。仮にそうなっても名取は前向きだ。
「3年は負けなしで、出る全部の大会を優勝して終わりたいです」
中学ラグビー界にすい星のごとく現れた中宮。その名前をさらに高めていくことだけを部員も指導者も考えている。