コラム 2021.06.14
【コラム】サニーズ・バック! 狼だからできた

【コラム】サニーズ・バック! 狼だからできた

[ 成見宏樹 ]

 当時のコメントが記憶に残っている。「相手を大きい、小さいでとらえたことはありません。大切なのは自分が何をすべきか」「毎週、毎週、学んで、次の試合に生かすのみです」。連敗が明けた時、契約上の事情で本人はいなかった。チームの苦難で見せ続けた背中は長いトンネルの中のチームに間違いなく影響した。その姿を、当時から日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは知っていた。チームメートたちは見せつけられていた。ラブスカフニは2019W杯の本番、2試合でゲームキャプテンを務めている。

 人が試され、ジャパンを背負う人が育つこの場を失うのはやっぱり、惜しい。

「自分のような立場の選手にとっては、インターナショナルを知る貴重な機会。当時は大学生としてこのチームを見てきた。今回は、こういうチームがあったんだということを残せればいい」(竹山)

 静岡エコパに集まったラグビーファンは1万8434人。例えば「日本代表vs日本選抜」「日本代表vsエグザイルス」の対戦では、あのスタジアムの雰囲気も、選手たちの奮闘もなかっただろう。名前だけではなく、選手招集や、強化合宿中のルーティンを支えるスタッフ配置やノウハウを含めて、サンウルブズだったから、できた。

 スーパーラグビーでの復活など叶わないことと分かってはいるが、せめて、こうした強化試合で定期的に編成予算を取ることはできないか。選考漏れした選手を鼓舞し、献身的なファンに愛されて、日本代表の強化にも資するチームを、まだ日本ラグビーは持っていた。あの文化をまだ失くしてはいなかった。

 森に戻ったと思った狼たちの、変わらない姿をまた見てしまった私たち。できることは何もないか。文化を体現できる選手がいる今なら、まだ間に合うのではないか。

試合後のサンウルブズの面々。兄貴分の日本代表にとってもハッピーな存在だ(撮影:松本かおり)
【筆者プロフィール】成見宏樹( なるみ・ひろき )
1972年生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、1995年4月、株式会社ベースボール・マガジン社入社。ラグビーマガジン編集部勤務、週刊サッカーマガジン編集部勤務、ラグビーマガジン編集部勤務(8年ぶり2回目)、ソフトテニスマガジン編集長を経て、2017年からラグビーマガジン編集部(5年ぶり3回目)、編集次長。

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