【ラグリパWest】最終学年、もう一度『荒ぶる』を。河瀬諒介[早大FB]
開始6分、最初にインゴールに飛び込む。試合は31−27。前に新人で早明戦の15番を託されたのはキックポーズでおなじみの五郎丸歩(現ヤマハ発動機)。以来14年ぶり。諒介は日本代表キャップ57を誇る先輩に並ぶ。
諒介は五郎丸に負けず華もある。
183センチの背丈、マスクは俳優ばりに甘い。ただ、本人にその自覚はない。
「僕より格好いい人はいっぱいいます。例えば? 児玉とか」
明治の同期である児玉樹の名前を出した。諒介より9センチ高いCTBである。
そのプレーは速さで左右を抜く。スタイルは違うが、豪快さは遺伝する。父・泰治は「怪物」と呼ばれたNO8だった。片手でボールを鷲づかみ、ハンドオフで跳ね飛ばす。日本代表キャップは10を持つ。
「諒介はまだまだ伸びますよ。負けたロッカーで泣いていました」
相良は昨年12月6日の早明戦を振り返った。14−34と敗れる。
「勝ちたかった。でも、何もできませんでした。自分自身が不甲斐なくて…」
2年前の笑いは涙に変わる。悔しさは進化に不可欠。そのことを相良は知っている。
1月11日、57回目の大学選手権決勝は天理に28−55で敗れた。
「プレッシャーがきつかったです」
良化への動機づけがさらに加わる。1年からの選手権は4強、優勝、準優勝になった。
早稲田は『荒ぶる』を有する。この第二部歌は原則、日本一になった時にのみ歌える。
「歌いたいです」
厳密に言えば、この歌は優勝を果たした代、その4年生だけのものである。3年生以下は卒業後の結婚式や同期会で歌えない。
だからこそ、諒介は勝ちたい。
「チームに勢いをつけたり、救える選手になりたい。そのため、フィジカルの部分を鍛えていきます。当たり負けをしないように」
腰など、これまで痛めた部位は癒えた。目標は松島幸太朗(現ASMクレルモン)。タックルされても倒れない。
トップリーグからの求人は殺到する。東芝府中(現・東芝)で本格的な現役を終えた父の願いはただひとつ。
「プロではなく、社員として働いてほしい」
摂南大の総監督として、還暦越えの先達として、人生を渡り切る難しさを知る。
父は明治出身でもあった。進路は諒介の意志。永遠のライバルには感謝がある。
「よく育てていただいた。あれだけの選手になってくれたんやから」
諒介は昨年、日本代表の下に位置するジュニアジャパンに選ばれている。
諒介の就職への判断基準は明確だ。
「日本代表になりたいです。自分を成長させてくれるところを考えています」
もうひと伸びを納得したチームで得たい。
その位置に届くためにも、荒ぶるの熱唱は不可欠。諒介にとって最後の挑戦が始まる。