コラム 2019.02.07
【コラム】夕暮れ時のトゥールーズ~箕内拓郎からのメッセージ。

【コラム】夕暮れ時のトゥールーズ~箕内拓郎からのメッセージ。

[ 中川文如 ]


 それでも、この試合で体重を6キロ落としたLO大野均の献身は語り草だ。
 コンビを組んだルーク・トンプソンは、まだ日本国籍を取ってトンプソンルークとなる前だったけれど、やっぱり関西弁がおちゃめな密集の大黒柱だった。
 BKリーダーの大西将太郎は、パス一つ満足に回らない現実に苦悩しながら、日本が日本らしく攻める術を探求していた。
 スタジアム全体を味方につけた最後の猛攻は、途中出場だった小野澤宏時のカウンターアタックから始まった。軽やか、かつ粘り腰の走りは先発落ちし、逆に鋭さを増していた。
 それぞれに尊い姿だった。

 少し話は飛ぶ。オールブラックスの話だ。
 彼らが漆黒のジャージーに身を包む時、その背番号の先達の雄姿に決まって思いをはせるのだという。王国が紡いできた歴史の重みだ。先達に恥じないプレーをしようと、彼らは体を張る。
 たとえ王国には及ばなくても、日本も歴史を紡いできた。嫌になるほど繰り返した惨敗、惜敗が下地となって、15年の躍進は生まれた。

 9月20日。一生に一度という触れ込みのW杯日本大会が幕を開ける。一生に一度の桜のジャージーに身を包む者たちは、先達が味わってきた苦境、悔しさ、それら全てを背負って昇華させるべく、ピッチに立つ者たちだ。
 その重み、プレッシャーを受け止めるだけの覚悟が求められる。覚悟が備わった時、先達の思いが桜に宿り、背中を押す。日本で開かれるW杯は、ジャパンにとって、そんなW杯であってほしい。

「フィジカルも経験も、昔といまとじゃ、全てが違いますよ」
 箕内は優しくほほ笑んだ。
 あと、7か月。

あれから12年。日本ラグビーの環境は大きく変わっている。(撮影/BBM)



【筆者プロフィール】
中川文如(なかがわ ふみゆき)
朝日新聞記者。1975年生まれ。スクール☆ウォーズや雪の早明戦に憧れて高校でラグビー部に入ったが、あまりに下手すぎて大学では同好会へ。この7年間でBKすべてのポジションを経験した。
朝日新聞入社後は2007年ワールドカップの現地取材などを経て、2018年、ほぼ10年ぶりにラグビー担当に復帰。 ツイッター(@nakagawafumi)、ウェブサイト(https://www.asahi.com/sports/rugby/worldcup/)で発信中。好きな選手は元アイルランド代表のCTBブライアン・オドリスコル。間合いで相手を外すプレーがたまらなかった。

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