帝京倒した天理大・島根一磨のルーツ。弟分・「テンコウ」は春王者とあす対戦。
全国高校大会 準々決勝・天理vs桐蔭学園は13時20分開始
1月1日の花園3回戦(全国高校ラグビー)。中部大春日丘を21-10で破った試合は、天理苦戦と言える一戦だ。ただ試合メンバー表をあとで見て驚いた人は少なくないはず。
高校日本代表候補としても知られるLOの山村勝悟が、背番号13を着けていた。BKの攻守のキーマンとなるアウトサイドCTBを、FWの選手が務め上げ、勝った試合だった。ちなみに、初戦2回戦でHOだった平見尚はこの日、LOで出場していた。
天理高の松隈孝照(たかてる)監督は「ウチは工夫、(人のやりくりを)せざるを得ないんです」、さらりと言う。背番号があまり関係ないチームなのかもしれない。
ぱっと見から他のチームと違う。15人のうち10人ほどは背格好が同じ。先発メンバーで身長175センチを超える選手は3名。最高身長はFB本田飛翔の179センチ。通常HOが務めることが多いスローワーはLOの吉野直希が担う。最重量のPR中山律希はいま花園のアイドルだ。俊足とステップのキレとハンドリングでトライを量産、チャンスメーカーとして各校のマークを受ける。
本来LOの山村は、1年時までCTBの選手だった。CTBだった選手(177センチ)をLOに移したそもそもの決断も大胆だ。天理ではポジションごとの序列だけではなく、その年のチームのラグビーを体現する選手がピッチに立っている。
今回、この本番に及んでの位置替えは、チームの大きな試練が発端だ。12月12日にエースFB津野来真(つの・らいま/3年)が骨折、無念の欠場となったことへの対応だった。山村は津野がケガをした翌日、12月13日からCTBの練習を始めたという。「試合でCTBをするのは、1年生以来です」(山村)。
「マイナスを、プラスに変えるんです」とは松隈監督。
アクシデントが起きた12日の夜中、松隈監督のスマートホンが鳴った。コーチから、『いかに津野の穴を埋めるか』を考えていた監督にもたらされたのが、CTB山村起用の提案だった。穴を埋めるという発想が吹っ飛んだ。このマイナスを、いままでなかったプラスに変える。
試合運びの共通理解、アタックのテンポ、選手が起き上がるスピード、ディフェンスの鋭さ。そして試練を乗り越える力。どれもラグビーの中核になる能力だ。彼らが何を育て、高めてきたかは、テンコウ、テンダイの試合を観れば分かる。
漆黒のテンダイは帝京を倒した。春の王者に挑む、純白のテンコウの勝負はあした。