18シーズン続いたトップリーグは2月20日に開幕するトップリーグ2021で幕を下ろす。2003年から始まったトップリーグ。その始まりをラグビーマガジンの掲載の記事から振り返りたい。最後となる第6回はマイクロソフトカップ誕生について。
◆第1回(初めて明るみに出た「日本リーグ」構想)
◆第2回(2003年度から開始決定!「スーパーリーグ」構想)
◆第3回(名称は「ジャパンラグビートップリーグ」に決定も寂しい会見)
◆第4回(「ジャパンラグビートップリーグ」概要発表・前編)
◆第5回(「ジャパンラグビートップリーグ」概要発表・後編)
ラグビーマガジン2003年7月号掲載
文◎美土路昭一
トップ8トーナメント冠スポンサー決定
トップリーグが『予選』になる⁉
決着は「マイクロソフトカップ」で
今年9月13日に開幕するトップリーグのリーグ戦上位8チームによる勝ち上がり方式の新大会、トップ8トーナメントの冠スポンサーに、コンピューターソフトメーカーのマイクロソフト日本法人が決まり、大会名も「マイクロソフトカップ」として行われることが、7日、日本協会で行われた記者会見で発表された。同社は日本代表の「サポーティングカンパニー」としても協賛する。
マイクロソフトにとって、マイククロソフトカップはスポーツ分野での冠協賛の初めての例となる。阿多親市社長は協賛に踏み切った理由について「日本協会の『ラグビーを日本で愛され、親しまれ、人気の高いスポーツにする』というビジョンが、マイクロソフトが日本でビジネスを展開する上での『愛され、親しまれ、信頼される企業になる』という企業活動方針に合致している」と説明。さらに高校時代、冬の体育の授業で、ラグビーに親しんだという阿多社長は、2000年5月の就任以来、故・大西鐵之祐氏の攻撃理論を端的に表す言葉として有名な『接近、連続、展開』を「顧客に接近し、サービスを連続して展開しよう」と言い換えて、約2千人の全社員に、顧客へ直接働きかけていく姿勢を徹底しているエピソードも明らかにした。
ラグビーのどういったところに経済的なメリットを見いだしているかという問いに「トップリーグの参加チームにはパートナーや直接の顧客もいるが、経済効率は後から計算するもの。あくまで理念が合致したことが一番。(ラグビー以外)の他の話だったら、今までの私たちの活動から、初めてのスポーツイベントに乗り出せたかは疑問」と阿多社長。一方、では将来性への投資か、との質問には「ラグビーの現時点の価値を評価している。イメージアップに間違いなくつながる。マイクロソフトカップが人気を博すれば、そのバリューはさらに高くなってくると理解している」とも強調した。
今年2月に日本協会が広告会社向けに行った協賛募集に関する説明会で提示されたトップ8トーナメントの冠協賛金は6千万円。今回は、日本代表への支援と合わせて年間で計1億円程度の規模と見られている。阿多社長は、具体的な協賛期間については明らかにしなかったが「できるだけ長くサポートしていきたい」 としている。日本協会側も「複数年の支援を期待している」(真下昇専務理事)。同社の宣伝広告活動の中でラグビーを取り上げるなどのサポートについては、阿多社長は「すべて検討段階で、現時点で話せること。はない」と答えるにとどまった。
国際的にも知名度の極めて高い冠スポンサーの獲得は、国内ラグビーの構造を大きく変えてスタートするトップリーグにとっては好材料。一方、気になるのは、トップリーグのリーグ戦や日本選手権に代わるジャパンカップ (仮称)との関係だ。日本協会は「トップリーグのチャンピオンとこのマイクロソフトカップのチャンピオン、そしてジャパンカップのチャンピオンは、それぞれがチャンピオンで、その間の序列は付けない」(真下専務理事)という姿勢をとっているが、トップリーグ8強による同カップは、もともと協会側も「注目度、バリューがあると踏んでいた、ハイライトのトーナメント」(真下専務理事)と位置づけている存在だけに、強力なスポンサーを得た同カップばかりが突出することにもなりかねない。
マイクロソフトカップのような、負けたら終わりという勝ら上がり式の短期決戦は盛り上がりやすい。しかし、総当たりの各チーム11試合という長丁場のタフなリーグ戦で国内ラグビーの底上げを図るというのが、トップリーグ創設の重要な目的のはずだ。そのリーグ戦を、いわば同カップへの「予選」や、自動降格や入れ替え戦に回る4チームをふるい落とすためだけの戦いにしてしまわないよう、各大会の売り物、性格付けを明確にした上でのプロモーションが必要となってくる。