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新型コロナでスーパーラグビー中断決定! 欧州、アメリカ、アフリカのラグビー界も大混乱

2020.03.14

試合延期が決まり、鍵がかけられたウェールズのプリンシパリティスタジアム(Photo: Getty Images)


 日本チームのサンウルブズも参戦している「スーパーラグビー」の中断が決まった。
 新型コロナウイルスによる死者は世界中で5000人を超え、世界保健機関(WHO)が「パンデミック」と宣言して世界的な大流行になっているとの認識を示した3日後の3月14日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相が、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、自国民も含め海外から入国するすべての人に14日間の自主隔離を求めると発表。これを受け、スーパーラグビーを統括するSANZAARの執行委員会はただちに電話会議をおこない、今週末の試合をもって2020年のスーパーラグビーを一旦中断することが決まった。

 スーパーラグビーは5か国(日本、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン)から計15チームが集まる国際リーグで、今年は1月31日から6月20日まで開催されることになっている(プレーオフを含む)。
 日本でもイベント自粛の要請が政府から出され、サンウルブズは国内で開催予定だった2試合をオーストラリアの会場に変更して実施。また、主要なスポーツイベントへの観客入場禁止が出たアルゼンチンや、16日から500人以上の不要不急の集会を自粛するよう政府から求められたオーストラリアのラグビー界は無観客で試合をおこなうことを決めていたが、SANZAARの決定により大会自体が中断されることになった。

クルセイダーズ戦後のサンウルブズ。最悪の場合これが最後の試合になる可能性もある(撮影:松本かおり)

 SANZAARのアンディ・マリノスCEOは、「選手、ファン、放送局、パートナーにとっては非常に残念なことだが、大会構造の複雑さ、およびカバーする複数の地域を考えると、これ以外の選択肢はない。現在海外にいるすべての選手が帰国し、家族と一緒にいる時間だと考えている」とコメントした。

 SANZAARはスーパーラグビー再開へ向けて努力していくという。今後の詳しい情報は決まり次第発表される。

 現在ブリスベン(オーストラリア)にいるサンウルブズは、この先のことはわからないが、予定どおり明日メルボルンへ移動するとのこと。そして、SANZAARからの詳しい発表を待ち、再開に備える。選手には、14日のクルセイダーズ戦後に大会の中断が伝えられた。
 サンウルブズを運営するジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは、「(2020年大会を最後にサンウルブズはスーパーラグビーから除外されるため)ラストシーズンということで、選手たちは『やってやろう』『見返してやろう』という気持ちを持って戦っており、なんとか再開して、最後までやり遂げさせてやりたい。こんなことはなかなか経験できないので、選手たちはメンタル的に強くなれると思う」とコメントした。

3月14日、NZ・オークランドのイーデンパーク。ブルーズ×ライオンズ戦の入場口で、
新型コロナウイルス感染防止のため手袋をはめチケットを確認するスタッフ(Photo: Getty Images)

 そして、イタリアやスペイン、ドイツ、フランスなどヨーロッパ(欧州)でも感染者が急増しており、欧州の強豪6か国が競う「シックスネーションズ」は今週末、チャンピオンを決めるエキサイティングな最終ラウンドになるはずだったが、3月14日に予定されていた3試合はすべて延期が決定した。
 無観客での開催も検討されていたローマでのイタリア代表×イングランド代表戦は1週間以上前に延期が発表され、パリでのフランス代表×アイルランド代表戦も予定通りの開催は不可能となった。そして、実施の方向で準備を進めていたカーディフでのウェールズ代表×スコットランド代表戦も試合前日に延期が決定。第4節のアイルランド代表×イタリア代表戦も延期となっている。女子や20歳以下代表の試合も同様だ。

 そして、ジョージア代表など欧州のセカンドグループが競う「ラグビーヨーロッパ・インターナショナルチャンピオンシップ」も最終節の延期が決定。4戦全勝のジョージア代表がすでに優勝を決めているが、3月14日にトビリシで予定されていたロシア代表戦は延期となり、3年連続のグランドスラム(全勝優勝)はお預けとなった。

 死者が1200人を超え(感染者1万7000人超)欧州で最も深刻なイタリアでは、国内全土で移動制限をしており、クラブリーグの「トップ12(旧 エッチェレンツァ)」は2月15日の試合を最後に中断している。

 イタリアチームのベネトンとゼブレが参加している「プロ14」(ほかにアイルランド、ウェールズ、スコットランド、南アフリカのチームも参加するリーグ)は、2月下旬からイタリア開催試合のみを延期していたが、欧州のその他の国も事態が悪化するなかで国境を越えた移動はリスクが高く、イタリアとアイルランドの政府がすでに公共活動と旅行に関する明確な指令と制限を設けていることから、大会を無期限で中断することが3月12日に発表された。

 フランス最高峰リーグの「トップ14」もこれに続き、3月13日に無期限の中断が発表され、各クラブには集団でのトレーニングもしないよう要請している。

 イングランド最高峰リーグの「プレミアシップ」では、現地時間3月15日に予定されていたカップ戦の決勝(セール・シャークス vs ハーレクインズ)が延期となった。

 そして、欧州クラブ王者を決める「ハイネケン・チャンピオンズカップ」は4月4日、5日に準々決勝を予定しているが、8強入りしたチームの多くが活動を制限されており、日程どおりの開催は難しいと見られている。

 ドナルド・トランプ大統領が非常事態宣言をしたアメリカでも、北米最高峰プロリーグの「メジャーリーグラグビー(MLR)」が1か月間の中断を決めた。今年のMLRには日本代表プロップとして78キャップを持つ畠山健介(ニューイングランド・フリージャックス)が挑戦している。

 そして、いまのところ大流行になっていないアフリカでも影響が出始めており、女子セブンズ日本代表も参加して3月28日、29日に南アフリカのステレンボッシュで開催予定だった女子の「ワールドラグビー セブンズチャレンジャーシリーズ」が延期となった。
 さらに、コートジボワール、ケニア、マダガスカル、ナミビア、セネガル、チュニジア、ザンビア、ジンバブエのU20代表が集まってケニアのナイロビで開催される予定だった大会も「追って通知があるまで」延期に。
 また、ラグビーワールドカップ2021(女子)の世界最終予選進出をかけた女子ケニア代表×女子コロンビア代表のプレーオフは4月18日にナイロビで予定されていたが、延期となった。

スタジアムの前で試合延期を残念がるスコットランドのファン(Photo: Getty Images)