TOP14の王者スタッド・トゥールーザンに所属するフランス代表FBトマ・ラモス(31)が、2026-27シーズン限りでクラブを退団し、2027年7月よりラシン92へ移籍することが確定した。契約期間は2030年6月までの3年間。フランス代表史上最多得点記録(563ポイント)を持ち、トゥールーズでも歴代最多の2,321ポイントを積み上げてきた、クラブを象徴する選手の退団決定は、フランスラグビー界に大きな衝撃を与えている。
幼少期からスタッド・トゥールーザンの大ファンだったラモスは、15歳でクラブの下部組織に加入。2016-17シーズンのProD2(2部)のコロミエへの期限付きレンタル移籍を除き、15年以上にわたるキャリアを赤と黒のジャージーに捧げてきた。
2019年以降のトゥールーズの「黄金時代」において、フランソワ・クロスと並び8度の決勝戦すべて(TOP14で6度、チャンピオンズカップ2度)に出場・勝利した唯一の選手である。キッカーとしてだけでなく、卓越したラグビーIQと高いゲーム読解力を備え、ピッチ上では絶え間なく声を発してチームに指示を飛ばす。「ピッチ上の監督」とも呼ばれており、トゥールーズで現役を終えた後は、そのままクラブの指導者に就任するものと誰もが信じて疑わなかった。
6月27日、モンペリエを下してTOP14の4連覇という歴史的偉業を達成した直後、ラモスはニヤリと笑みを浮かべながら「まだ終わりじゃない」と語り、この黄金世代でのさらなるタイトル獲得に強い意欲を見せていた。しかし、事態はわずか1か月の間で急展開を迎える。
TOP14の規定では、7月1日以降、そのシーズン限りで契約が切れる選手に対して他クラブが公式に接触・交渉を行うことが解禁される。この解禁日を迎えたことで、水面下で滞っていた移籍交渉が一気に加速した。
トゥールーズとラモスの間で最初の具体的な協議が行われたのは、約1年前の2025年夏の終わり頃だったとされる。当時提示されたのは将来にわたる構想であり、ラモス本人が希望すれば現役引退後に指導陣入りする可能性も含まれていた。本人もその提案に意欲的で、交渉はスムーズに進むと思われていた。
またクラブ側からは、以前から運用されてきた「30代以上の選手に対する一律の減給措置(ラグビー専門紙『Midi Olympique』によると約25%の引き下げ)」という年俸方針についても説明がなされていた。これまでもCTBピタ・アキ、PRチャーリー・ファウムイナ、FB/WTBマキシム・メダールといった主力選手たちが、最後の契約延長時にこのルールに従ってきた経緯がある。
今回はさらに、代表選手を抱えるクラブに与えられていたサラリーキャップの超過枠が削減されるなど、ここ数か月で可決されたリーグの規定改訂にも適応する必要があった。それでも、ラモスがトゥールーズ以外のクラブでキャリアを終えることになるとは誰一人として想像しておらず、それは本人にとっても同様だったはずだ。
しかし同紙が指摘するように、トゥールーズ側からの具体的なオファー提示は遅れを見せることとなる。クラブは2026年6月に契約満了を迎える他の主力選手(LOチボー・フラマンや、FB/SO/WTBをこなすフアン=クルス・マリアなど)との交渉を数多く抱えていた。さらに、アントニー・ジュロンやアントワンヌ・デュポンの肖像権契約を巡る流出報道や、サラリーキャップ違反に関する新たな疑惑など、ピッチ外での激しい混乱が追い打ちをかけた。結果として、TOP14で4連覇中の王者は288万ユーロ(約5億3000万円)の巨額罰金を命じられる事態となっている。なお、クラブ側はこれを不服として控訴している。
両者の話し合いが滞る中、7月1日の交渉解禁とともに最も迅速かつ攻撃的なアプローチをかけたのがラシン92だった。ラシン92は破格かつ強気な3年間の大型契約を提示すると同時に、ラモスを中心に据えたプロジェクトを提示。その中には、彼をSOとして起用する構想も含まれていた。10番は彼が元々育成年代でプレーしていたポジションであり、本人も好んで務めてきた役割で、トゥールーズや代表でも10番の穴埋めを務める機会が多く、ラシン92から提示されたこの長期的な戦略に心を動かされたという。
また『Midi Olympique』紙は、ラモスが代理人に対し、来年開催されるワールドカップへと続く重要なシーズンに全精力を注ぐため「夏の終わりまでに去就を確定させたい」という強い意向を示していたことも伝えている。この意向が彼の退団という選択肢を一気に決定づけることとなった。
ラシン92は2027年5月、現在改修中の本拠地「スタッド・イヴ=デュ=マノワール」への帰還を予定しており、ラモスはその新時代の象徴として迎えられる。ちなみに、ラシン92が現在の「パリ・ラデファンス・アリーナ」へホームを移す直前、この旧本拠地でプレーしていた世界のレジェンドがダン・カーターであり、ラモスはその歴史と系譜を継ぐ存在として期待を寄せられている。
トゥールーズにはスコットランド代表ブレア・キングホーンやイタリア代表アンジュ・カプオッゾらが控えており、ポジション上の穴埋め自体は可能と見られている。しかし、秀でた戦術眼と勝利への猛烈な執着、正確無比なキック、そして何より味方を鼓舞する強烈なリーダーシップでチームを勝ちに導いてきたラモスの退団は、間違いなく一つの時代の終わりを意味する。
ラモスは「この決断を下すのは極めて困難だったが、スタッド・トゥールーザンへの感謝と敬意は変わらない。今シーズンのすべてのエネルギーをこのジャージーに注ぎ、最後の目標達成のために全力を尽くす」とコメント。同選手は2026-27シーズンをトゥールーズで戦い抜いた後、2027年W杯を経て新たな挑戦へと向かう。
