最高の代表戦デビューを飾ったようで、当の本人は違う感覚を抱いていた。
明大ラグビー部4年の伊藤龍之介は7月4日、東京・秩父宮ラグビー場で日本代表のジャージーを着た。新設ネーションズチャンピオンシップ初戦に司令塔のSOとして先発し、巧みにキックを操り、戦前の世界ランクで10位だったイタリア代表を27-10で下した。しかし…。
「思うような結果が出せなかったし、いまは日本代表の10番としてやっていけるレベルではないと実感しました」
11、18日に、同3、4位のアイルランド代表、フランス代表にそれぞれ20-36、15-42で敗れていた。大会を通して日本代表は12位から10位にランクアップしたが、前半3連戦の通算戦績は1勝2敗とした。
捲土重来を目指す。8月の対オーストラリア代表2連戦を控え、7月25日からは網走合宿に参加する。
「このままではよくない。これからは自分のなかでいくつか目標を決めて、それに関して(進捗度合いなどについて)コーチたちとコミュニケーションを取って、もう1段階レベルアップできるようにしたい」
ここでの「目標」にはまず、仕掛けが挙がる。向こうの防御を崩しきれぬ感覚を抱いたのだろう。本来の得意技であるランを、より多用できたらよい。
「(7月は)アタックで少し消極的になっていました。(今後は)いかに前を見て、相手にとって脅威になれるか。(国際舞台では、穴場を)見る余裕がない、というイメージです。大学であればその余裕があって走る選択ができるのですが、少し迷うだけで(その間に隙間が埋まり)そうできなくなるところもある。まずはもっと前を見ることと次のプレーを考えることを同時におこなうのを、網走では意識します。練習を、いかに試合に近づけてやれるか(が肝)」
ゲーム制御にも磨きをかけたい。いつ蹴り、いつ走り、いつテンポアップするかを誤らず、年上がほとんどの仲間をより戦いやすくさせたい。
「大学生で若手ですが、10番はそれに関係なく周りを動かさないといけない。自信を持って引っ張っていけるよう意識しています」
フランス代表戦後は、約1週間のオフがあった。主にしたのは「勉強」。ちょうど商学部の試験期間にあった。いわば、卒業のかかる勝負の時だった。
「前期(の単位を)しっかり取れれば…って感じですね」
何より部員寮のある東京は暑かった。いまは自身が生き生きするフィールドに、それも、夏にして最高気温が20度台前半という北の大地に戻れた。その感慨も口にする。
「涼しい環境のなかで、東京とかではできないハードな練習ができている。すごくいいな、って。この(取材に応じた29日までの)3日間は、大体ずっと同じサイクル(トレーニングの流れ)で動いていて、今日は少し強度が高めです。ゲーム形式(のセッション)では、少ないフェーズでトライを取る(のを心がける)」
走り回った末にファンサービスを終えた後、身長172センチ、体重77キロのプレーメーカーが決意を明かした。
今度のシリーズでは、FBもできる上ノ坊駿介と定位置を争う。
天理大前主将で、コベルコ神戸スティーラーズの一員として国内リーグワンの新人賞に輝いたばかりの22歳だ。切磋琢磨する2人は網走のホテルで同部屋。上ノ坊によると、進路や近況についてもよく話すようだ。
