※韓国留学ラグビー体験記①から続く
4月26日には韓国の実業団リーグの第5節を観戦した。ソウルから交通機関を乗り継ぎ2時間弱。仁川市にあるラグビー場でおこなわれた。想像以上に観客が多いのに驚いた。おそらく、企業から招待された観客が多かったのだろう。実際、周りから聞こえる観客の会話では、「アドバンテージ」や「オフサイド」などはよくわかっていないようだった。(リーグワンでもそうかもしれない)
初戦は現代グロービス対韓国電力。フィジカル的に優位な現代と、ラインアウトで主導権を握った韓国電力の激突は、かなり拮抗した試合になった。
前半は電力がキックを有効に使って優位に進め、19-12とリードして前半を終える。しかし後半に入ると、現代は中盤からモールを組み、試合をコントロールし始める。対する電力はハイパントを使うようになり、トライにつながるプレゼントキックが1本あったものの、それ以外はうまくアンストラクチャーを作り、テンポも上げながら、アタックを繰り出した。
迎えた79分、ずっと優位に立っていたラインアウトから展開しトライ。33-36で韓国電力が逆転勝利を収めた。
2戦目はOK金融対ポスコEMC。OK金融はいまだ勝利がないため、どうにか1勝でもしたいところであったが、圧倒的な差を見せつけられる試合となってしまった。
ポスコが、バックドアをうまく活用しながら、ボールを縦横無尽に動かしていく。エッジには14番モセセ、15番キチオネ選手がスピードとフィジカルを生かしゲインしていく。陣地を返しても、ラインアウトが安定せず、結局自陣でのプレーを強いられる。
OKも39分に中井健人(2024-25シーズンまで三菱重工相模原ダイナボアーズ所属)がPGを沈め、前半を43-3で折り返す。後半開始早々、OK10番金諒(きむ・りゃん。トップイーストBのライオン・ファングス所属。大阪朝高-帝京大)がトライ。しかし、その後OKはトライラインに近づくも取るには至らず。55-10でノーサイドを迎えた(5月3日に全日程を終え韓国電力が6戦全勝優勝。OKは全敗4位で終えた)。
OKでこの日、15番をつけてFBでプレーした中井健人に試合前、インタビューをすることができた。中井は、2019年、法大から静岡ブルーレヴスへ入団。22年から相模原DBとキャリアを積み、25年に相模原DBを退団した。
そこからオーストラリアに渡り、スーパーラグビーに属するフォースの下部組織に所属し、チャンスをうかがっていたという。その時に法政大の同期である呉洸太(お・ぐぁんて。現・三重ホンダヒートSO)の父親でOKの監督である呉英吉氏(お・よんぎる。元大阪朝高監督)の勧誘を受け、入団を決めた。
日本のラグビーとの違いは「まず何よりも語学。韓国で生まれ育った選手は英語を流ちょうに話せる選手が少なく壁を感じる。チームメイトであるジンバブエ代表の選手たちや、金諒、スタッフたちとは困らないのが救いだ」と話した。
ラグビーそのものに関しては、韓国人のフィジカルレベルは評価しつつも、「単発」だと語る。「たとえば、ラインアウトの一次攻撃。せっかくオプションを作っているのに、当たることしか考えてない」。ディフェンスの決まり事など、ラグビーの知識の部分でリーグワンとの隔たりを感じる。「プレーへのフィードバックとそのための個人練習が少ない」という。相模原DB時代には、日本代表キャップを持つ選手も多い環境にいた中井選手にとっては、違いを大きく感じたとも語った。
そんな環境で、「チーム全体を向上させることが現在の役割」と考える。呉監督からもそのような役割を求められているとのことである。法政大から静岡BRに入団した当初、出会った長谷川慎コーチから「自分らしく暴れてくれ」と言われていた。相模原DBに移籍して以降は出場時間が減った。その原因は「自分を変えなかったこと」と分析する。
「コーチが求めることをやることが真の一流」。静岡BRでは「自分らしく」が求められていたが、相模原DBは違った。そのことに気づくのが遅かった。だからこそ、OKでは呉監督が求めた役割を実践しようと奮闘している。サインを増やし、スペースを生かすことを周りに指導しながら練習している。「韓国人選手の特徴として、向上心を持ってはいるが、それを活かす環境がない」ことを感じている。しかし、恵まれている環境であるとも語る。
「日本ではありえないですが、基本試合の2日前に会場近くに移動し、前日にキャプテンズランをする。これほど恵まれている環境はないと思いますよ」。だからこそ、OK金融の選手には勝利を通して自信をつけてほしいと語る。
韓国ラグビーにリーグワンから参戦することについては、「違う環境でありながら、文化的、地理的に日本に近い土地でできること。自分が外国人選手になる環境では、いままでと違う責任感を背負いながらプレーすることになるので、様々な視野を持ちながらプレーできる。チームの規模が30人ほどと小さく、試合も圧倒的に少ないことがデメリットです。ただ、プロ選手としてゲームタイムを確保するためには、手段の一つとして広がっても面白い」と語る。
今後のキャリアについては、「今の目標を勝利としつつも自分が楽しむ」。地元九州(福岡県筑紫高OB)のリーグワンクラブでラグビーをできる機会があればいいが、今できることをとにかくやるだけだと語った。「これがプロ選手のおもしろさ。何があるかわからない」。
