10月7日はリーチ マイケルの誕生日だ。37歳になった。
別府市内でのラグビー日本代表のFW合宿が2日目を迎え、夕方から夜までのセッションは公開練習となった。全てが終われば延べ400人のファンを市の職員が呼びかけ、ゴールポストをバックに選手と集合写真を撮った。
集合の間、選手の誰かがメロディを口ずさんでいた。
「ハッピーバースデーリーチさんー」
7月のツアーで主将だったリーチをはじめ、9月までのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)を戦ったメンバーや新戦力4名ら計22名が日没後のフィールドに立った。
BKで唯一大分入りしたSHの北村瞬太郎が黙々とパスセッションをこなす傍ら、宮崎にいるティエナン・コストリーを除くFWのほとんどがセットプレーの確認に励む。
25日以降に対戦する5カ国には、モールの強いチームがある。ジャパンは自らの塊を強固にしながら、相手のプッシュへの対策法も確認する。
向こうのパックに頭を突き刺すタイミング、人数、角度を共有し、実戦さながらの強度でシミュレーションする。
片方が押しにかかり、もう片方がせき止めようとする。そのバトルにあっては、初選出のタイラー・ポールが渋く光った。
南アフリカ出身の30歳が守る側の一員として身体を差し込んだ箇所は、攻める側にストッパーがかかったように映った。かねて本人は宣言していた。
「ハードワーク。それだけです」
ラインアウトを教える伊藤鐘平アシスタントコーチが仕切ることの多い今回のキャンプに、この夜はニール・ハットリーコーチングコーディネーターも合流していた。
複数のナショナルチームでエディー・ジョーンズヘッドコーチを支えた腹心は、スクラムの基本を復習した。
訴えたのは「芝」。1勝1敗だった7月の対ウェールズ代表2連戦の前から導入したキーワードだ。膝を地面とすれすれの位置に保ち、列強国へ粘り腰で対抗するイメージを表す。
まずは輪を作って決まった姿勢を取り、匍匐前進を重ねる。その後はペアになって組み、複数名同士で対になることもあった。
「絆を深めることをテーマにして、よりタイトに、ユニットとして、やっています」
こう語るのはワーナー・ディアンズ。リーチがいなかった9月までのPNCでは、今回怪我で選外の原田衛とともに共同主将を務めた23歳だ。身長201センチ、体重117キロのLOは、キャンペーン中のリーダーシップも期待される。ここでも強調するのは「絆」という単語だ。
「スクラム、ラインアウトにはコネクションがないとできない。オフ・ザ・フィールドで、例えばご飯の時に一緒に試合や練習の映像を見て、話し合って、絆を深める。個人練習もして、絆を深める」