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フランス代表がオールブラックスとの第1テストのメンバーを発表。NZ側の「敬意の欠如」の批判にガルチエHCは「選手たちを尊重する」とコメント

2025.07.04

活躍が期待されるSHノラン・ルガレック(Photo/Getty Images)



 フランス代表のファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(HC)は、7月5日(日本時間16時05分)にニュージーランドとのテストマッチシリーズ初戦を迎えるにあたり、メンバーを発表した。予想通り、代表経験の浅い選手が多く選出されている。

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 先発メンバーには、PRジョルジ・ベリア、LOタイラー・デュギド、FLアレクサンドル・フィッシャー、SOジョリス・スゴン、WTBトム・スプリング、の5人のノンキャップの選手が含まれる。さらにベンチにもPRレジス・モンターニュ、PRポール・マレーズ、FLヤコブス・ファン・トンダーの3人のノンキャップ選手が控えており、計8人のテストマッチ未経験選手が選出された。

 その中でも、スゴンとベリアは、昨夏アルゼンチンツアー中にウルグアイで「フランス・デベロップメント」として試合に出場経験がある。また、デュギド、マレーズ、ファン・トンダー、そしてフィッシャーは、ニュージーランドへの出発前にトゥイッケナムで行われたイングランドとの準備試合(24対26で勝利)に参加している。

 この若いチームの中で、キャプテンのCTBガエル・フィクー(94キャップ)、右PRラバ・スリマニ(57キャップ)、そしてLOロマン・タオフィフェヌア(54キャップ)が、平均14キャップのチームの経験値を引き上げている。

 HOガエタン・バルロー、NO8ミカエル・ギヤール、SHノラン・ルガレック、CTBガエル・フィクー、エミリアン・ガイユトン、FBテオ・アティソグベの軸は、イングランド戦から継続される。

 スリマニと、直近の代表試合で10キャップを獲得し、すっかりメンバーに定着したギヤールを除けば、FWの経験値は低い。HOガエタン・バルローは9キャップを記録しているが、先発出場は今回が初めてだ。LOユーゴ・オラドゥは昨夏のアルゼンチン以来となる2度目の先発出場。一方、FLキリアン・ティクセロンはトップ14では経験を積み、評価も得ているが、国際舞台での経験は昨夏のアルゼンチンでの13分間だけだ。

 しかし、ベンチにはHOピエール・ブルガリット、LO/FLカメロン・ウォキ、LOロマン・タオフィフェヌアといった経験を積んでいる選手が控えている。

 LOタイラー・デュギド(24歳)について、ウィリアム・セルヴァットFWコーチは「チームのために全力を尽くすファイターであり、非常に良いボールキャリアでもある。ラックでも非常に熱心に働き、陰の仕事も丁寧にこなす」と評価している。

 FLアレクサンドル・フィッシャー(27歳)はタックラーであり、ジャッカルもこなし、密集で激しく戦う。ガルチエ体制の初期から期待されていた選手の一人だが、2021年のオーストラリア遠征ではパスポートの問題で乗り継ぎ地点のドバイからフランスへ帰国することになり、その後は度重なる怪我で機会を逃してきた。「遅れてきた有望株」とセルヴァットFWコーチも期待を寄せる。

 ベンチスタートのPRポール・マレーズ(24歳)はトゥールーズ所属だが、現在はプロD2のプロヴァンスにレンタル移籍している。本来は右PRのマレーズだが、ガルチエHCによると、クラブではよく左PRで試合を終えており、彼の代表チームでの将来は左PRにあると考えている。

 BKは、今週月曜日の練習中にFBシェイク・チベルギアンが右ハムストリングを負傷したため、当初はWTBで起用される予定だったテオ・アティソグベがFBに入る。これにより、WTBトム・スプリングが父親の祖国でデビューを飾ることになった。彼は、2022年夏に日本遠征に参加したWTBマックス・スプリングの弟だ。元々はFBの選手だが、今季終盤、バイヨンヌでメキメキと頭角を表した。

 もう片方のWTBには、週の初めに背中の痛みに見舞われ練習から外れていたギャバン・ヴィリエールが出場することになった。水曜日にグループに合流したFBレオ・バレ、CTBニコラ・ドゥポルテール、CTBピエール=ルイ・バラシの3選手が、来週のウェリントンでの第2テストから参加し、メンバー構成を変える可能性がある。

 HBにはSHルガレックとSOジョリス・スゴン(28歳)のコンビが選ばれた。スゴンはプレースキックの正確さと、とてつもない距離の出るキック力を持つ。ロングキックを使ったゲームプランに重点を置くことが予想される。

 リザーブのSHバティスト・ジョノー(21歳)は、ガルチエHCが「将来を担う重要な選手になる」と見ている逸材だ。NZ出発前の合宿では、ガルチエHCが直々にマンツーマンでジョノーにボックスキックの指導をする姿も見られている。

 2022年にクレルモンでジョノーと一緒にプレーしていた松島幸太朗の折り紙つきで、「彼はすごい選手になると思う。自分の芯を持っているし、自分のやりたいことをしっかりフィールドで出すことができ、チームに勢いをつける素質がある。小さいけど、デュポンみたいな感じで積極的にアタックし、ディフェンスもどんどんいく」とコメントしていた。

 この記者会見では、今回の遠征メンバーについてNZで「敬意の欠如」と批判の声が上がっていることについて、ガルチエHCは時間をとってコメントした。

「11月に無敗で、シックスネーションズを制したチームがここにいないことが理解できないのは、非常によく分かります。我々はこれを実行している唯一の国です」と厳しい状況を認める一方、フランス独自の事情を説明。

 夏の遠征メンバーの選考が、シックスネーションズ、11月のテストマッチ、トップ14、そしてチャンピオンズカップといった過密日程による制約を受けていることを強調。「出発前に選手たちに尋ねました。『この挑戦は不可能に思える。君は参加するのか?』と。彼らは皆、『はい』と答えました」と、選手たちの覚悟を前面に押し出した。

 さらに、主力選手たちが今ツアーへの参加を見送った背景には、過酷なシーズンを終えた後の疲労があることも示唆。「シックスネーションズで8週間、代表で一緒に過ごし、別れを告げた後、トップ14やチャンピオンズカップの決勝ステージに進出しなければならないという現実に彼らは引き戻された。スマートマウスガードで試合出場数を追跡し、コンタクトの回数に関するデータもある。代表メンバー発表の1週間前まで、私は彼らと連絡を取り合っており、彼らには『参加したい』と言う選択肢があったが、彼らは休養と、来季の準備を優先することを選びました。懸命な判断をしたと思う」と、選手への理解を示した。

 そして、「残念ながら、現状ではこれ以上のことはできない。しかし、私はまず、ここにいる選手たちを尊重する。自分たちについてどんなことを言われているかを聞いている選手たちを尊重したい。私たちにできる最善のことは、試合で最高のパフォーマンスを出すことだ」と、選ばれた選手たちへの信頼と、試合でのパフォーマンスで応える覚悟を表明した。

 対戦相手のオールブラックスについては、「常にあらゆる地点から攻撃を仕掛けてくる。インゴールからのドロップアウトですら、ボールを奪い返すために蹴られることがある。これはディフェンスにとって絶え間ないチャレンジになる」と分析し、「オールブラックスとの試合の準備はとても楽しい。彼らの映像やプレーを研究しているとワクワクしてくる。オールブラックスと対戦することは、不可能に思えるほど巨大な挑戦だ」と語るガルチエHCは楽しんでいるようにも見えた。

 一方、オールブラックスのスコット・ロバートソンHCはミディ・オランピックの取材に応じて、「このフランス代表チームが弱いと言う権利が私にあるでしょうか? むしろ、私は彼らが自由だと考えている。彼らの肩には重荷がなく、非常に危険な存在になり得る。最も重要なのは、私たちが準備において彼らを尊重し、彼らの強みを理解することだ」と述べている。

 メディアがフランス劣勢と報じていることについては、「まさにそのような時こそ、彼らが最も危険になるのではないでしょうか?こういった状況でこそ、フランス代表は奮起し、獰猛なチームになるのです」と警戒すらしている。

 果たして、フランス代表は獰猛なチームになることができるだろうか?オールブラックスに対し、どのような戦いを見せるのか、今回のツアーも非常に楽しみである。

フランス代表チーム NZ遠征第1戦メンバー

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