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【フランスTOP14決勝】100分にわたる激闘制し、トゥールーズが3連覇達成!

2025.07.01

3年連続24回目のタイトルを獲得したトゥールーズ。出番はなかったものの、齋藤直人も決勝のメンバーに名を連ねた(Photo/Getty Images)



 まさに決勝にふさわしい試合だった。100分間にわたる激闘を39-33で制したスタッド・トゥールーザンが、3年連続でタイトルを守り抜いた。

 トップ14での優勝は過去6シーズンで5度目となる。ブレニュス盾(トップ14の優勝盾)にスタッド・トゥールーザンの名が刻まれるのは24度目で最多記録だ。

 今季4回目となる両者の最終決戦は熱く、激しく、そして壮大だった。2005年以来となる決勝での延長戦にもつれ込み、多くのラグビーファンを魅了する両チームの戦いに決着がついた

 今、勢いに乗っているボルドーか? それとも経験のトゥールーズか? と論じられ、「今年はボルドーだろう」と戦前予想はボルドーが優勢だった。しかし、それが昨年度チャンピオンの闘争本能を呼び覚ました。彼らは「決勝」という言葉が目の前に閃くと、戦う獣へと変貌するのだ。

 78,534人の観客で埋め尽くされた満員御礼のスタッド・ド・フランスで、文字通り激しくぶつかり合う白熱した決勝戦が繰り広げられた。両チームは互いに一歩も引かない激しい攻防を見せ、相手が得点するたびに、すぐに反撃し得点を重ねる応酬が続いた。

 火蓋を切ったのはボルドーのSHマキシム・リュキュだった。今季はSOマチュー・ジャリベールがキッカーを務めていたが、この日はリュキュに委ねられ、試合開始3分で先制点を挙げた。しかし、その1分後には、トゥールーズのFBトマ・ラモスがPGで応戦。キッカー同士の対決が続き、前半30分でボルドーが9-6とリードしていた。

 ここでトゥールーズのFWが破壊工作を開始。HOジュリアン・マルシャンが力強いトライを決めたかに見えたが、ボールが手からこぼれていることがTMOで確認され取り消された。動じることなくゴール前で得たペナルティから用意されたサインプレーを見事に遂行し、NO8アントニー・ジェロンが弾丸の如くゴール前で構えるボルドーのディフェンスを突き抜けトライを決めた(13-9、31分)

 その後、トゥールーズの22m線内にボルドーが入ったが、猛烈なディフェンスに後退させられる。しかし、リュキュがディフェンスの裏へ巧みに足で転がし、WTBダミアン・プノーが飛び出してボールを拾い、トライラインを超え再びボルドーがリードした(13-16、35分)。

 プノーの活躍ぶりとは対照的に、ボルドーのもう1人のトライゲッター、『LBB』ことWTBルイ・ビエル=ビアレのコンディションには不安を感じた。6月7日のヴァンヌ戦で頭部にショックを受け、めまいや頭痛を訴え、6月21日の準決勝には出場していなかった。スタンドから準決勝を観戦していた際も、スタジアムの騒音に苦しんでいたと伝えられている。

 しかし、この週の初めには完全な復調を見せたと言われており、ヤニック・ブリュ ヘッドコーチ(以下、HC)は「準決勝の夜には想像もできなかった、本当に目覚ましい変化があったことを保証する」と、今シーズン、ボルドーで21試合出場、21トライを記録した超速WTBの先発起用を説明していた。しかし、22本目のトライは生まれなかった。

 当然のことながら、試合開始直後からトゥールーズに徹底的に狙われた。すぐに腰を痛め、足を引きずるようになった。結局、ハーフタイムで交代となり、その後、松葉杖をついて観客席に現れた。

 試合後、ブリュHCは「彼の体調とは関係ない。ルイ(ビエル=ビアレ)は腸骨稜(ちょうこつりょう)に打撃を受け、痛みがひどくてプレーを続けられなかった」と語った。おそらくそうなのだろう。しかし、その前から覇気がなく、後手に回り、ボールを持っても前進できず、タックルも2回外していた。フランス代表とボルドーでの試合を合わせると、今シーズン2300分以上プレーした彼にとって、今回の試合は無理があったのでは。

 前半終盤、トゥールーズのFWが再びスクラムを圧倒してペナルティを獲得。ボルドーゴール前のラインアウトからモールを押し込んでFLジャック・ウィリスが力でトライを奪った(20-16、38分)。この試合、トゥールーズのFWはチャンピオンズカップ準決勝で圧倒された雪辱を誓い合っていたに違いない。スクラム、モール、ラックとボルドーのFWを徹底的に苦しめた。

 ハーフタイムのロッカールームで、トゥールーズSOロマン・ンタマックが涙する姿が映し出された。前半、スマートマウスガードが反応してHIAで退場したが、10分で復帰。しかし、その後肩を痛め、手を握ることができなくなった。2023年に手術した左膝の痛みを抱え、注射を打ちながら決勝に臨んでいた。トゥールーズのスタッフはこれ以上無理をさせることを選ばなかった。ラモスがSOに入り、FBにはWTBで先発していたブレア・キングホーンが入った。来季こそ彼が怪我に悩まされないことを願うばかりだ。

 後半はボルドーの反撃で始まった。ラックでペナルティを得てトゥールーズのゴール前ラインアウトからフェーズを重ね、ラックから出たボールをリュキュが素早くさばいた。CTBヨラム・モエファナからボールを受け取ったジャリベールがゴールポストの真下に走り込みトライ。リュキュのコンバージョンも成功しボルドーが逆転した(20-23、43分)。

 しかしトゥールーズも間髪入れずに反撃する。この夜、まさに怪物と化したウィリスが、再び渾身のトライを決めた(27-23、45分)

 この時点で、ボルドーは疲れを見せ始めた。トゥールーズが優勢に立ち、ラモスが正確なキックで相手の反則を着実に得点に変え、リードを広げていく。56分には30-23、そして64分には33-23。ついに決勝の勝者が決まったかに見えたが、そう考えるのは間違いだった。

 ボルドーはあらゆる地点から攻撃を仕掛け、目を見張るような連続プレーからLOギド・ペッティがトライを奪った。スコアは33-30となり、残り時間は10分。

 息詰まる展開となる。トゥールーズのFWがスクラムで圧倒的な力を見せ続け、ボルドーのフロントローをねじ伏せて次々とペナルティを獲得する。このままトゥールーズがリードを守り切るかと思われた。

 しかし、78 分56秒、トゥールーズがモールでペナルティを犯す。リュキュがゴールポストを指し示す。距離は40m。リュキュはすでにこの試合で50mの距離からも決めている。

 ボルドーのスタッフがゆっくり歩いてティーを持ってくる。レフリーが時計を止める。ティーが届いた。時計をスタートさせた。リュキュが蹴ったボールはホーンと同時にバーの上を通過。同点に追いつき(33-33)、延長戦へと突入した。

 興奮と緊張が最高潮に達した延長戦。両チームは必死のディフェンスを見せ、最初の10分間は無得点で終わる。

 そして95分、後半から出場したトゥールーズのCTBピタ・アキがラックでボールを奪取。ラモスが3点を追加する。99分に、再びアキがジャッカルに成功。ラモスが完璧なキック(9本中9本成功、24得点)でトゥールーズに優勝をもたらした(39-33)。

 試合後、MOMに選ばれたラモスは、「話しすぎると泣いてしまいそう。今週は今シーズンで最高の準備ができた。ボルドーはダテにヨーロッパチャンピオンじゃない。彼らも讃えられるべき。そのボルドーと戦った。本当にタフなゲームだった。マキシム・リュキュが延長戦に持ち込むペナルティを決めた時は、心臓が止まるかと思った。延長戦の最後で勝利が僕たちに転がり込んできたけど、逆の結果になってもおかしくなかった」と振り返った。

 そして、「FWの圧倒的な仕事ぶりや、チームのディフェンス、CTBやWTBの活躍を思うと、自分がマン・オブ・ザ・マッチだなんて考えられない。今シーズン、これほど素晴らしいマインドセットで臨めた試合は滅多になかった。チャンピオンズカップ準決勝で完敗して、今回はしくじるわけにはいかなかった。スタッド・トゥールーザンは自分たちの力を信じている」とチームのメンタルの強さを強調した。

 今季、なかなか思うような試合ができなかった中で、決勝戦で今季最高の試合を見せる。これこそが、まさにトゥールーズというチームなのだ。

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