南アフリカ代表”スプリングボクス”が初めてワールドカップのトロフィーを掲げてから、今月でちょうど30年になる。
1995年のフランソワ・ピナール主将の偉業に始まり、2007年のジョン・スミット主将のチーム、そして2019年、2023年に歴史を塗り替えたシヤ・コリシ主将のチームへと続いていった。
私は1995年の決勝戦にジャーナリストとして現地で取材に訪れており、そのとき初めて「ラグビーマガジン」との繋がりができた。
2007年と2019年の大会にも現地で立ち会い、2023年の前人未到の4度目の優勝は、ヨハネスブルグの混み合ったパブで目撃した。
時代を比べるのは無意味かもしれない。しかし、楽しいのも事実です。
というわけで、私なりに「歴代最高のスプリングボクスW杯XV(ベスト15)」を選んでみた。
異論は大歓迎。むしろそれが醍醐味だ。
ぜひ皆さんもコメント欄に自分のベストチームを投稿してほしい。
◆歴代スプリングボクス・ワールドカップXV(ベスト15)
FB15 アンドレ・ジュベール(1995)
ウィリー・ルルーも緑と金のジャージーで数々の素晴らしい瞬間を見せてくれた。パーシー・モンゴメリーは2007年の決勝で勝利を導くキックを決め、いまも代表最多得点記録を保持している。ダミアン・ヴィレムセは、史上最年少で2度のW杯優勝を経験した選手だ。しかし、私の選出は”フルバック界のロールスロイス”とも称されたアンドレ・ジュベール。1995年に彼が示したプレースタイルは、現代の攻撃的フルバック像の原型となった。
WTB14 チェスリン・コルビ(2019・2023)
ジェームズ・スモールは情熱的なスプリングボクで、長年トライ数の最多記録を保持していた。JP・ピーターセンも魂のこもったプレーで知られた。カート=リー・アレンゼは今後ますます期待される選手だ。それでも、私はチェスリン・コルビを選ぶ。2023年は左ウイングだったが、2019年の活躍はまさに圧巻。決勝でのトライはいまや名場面集の定番となった。
CTB13 ジャック・フーリー(2007)
1995年のヤッピー・ムルダーはディフェンスの鉄壁ぶりで知られ、2023年のジェシー・クリエルも自己最高のシーズンを送った。中でもルカニョ・アムとジャック・フーリーのどちらかで悩んだが、最終的に選んだのはフーリー。両者ともに攻守のセンスに長けているが、アムは2023年にケガの影響で精彩を欠いたためである。
CTB12 フランソワ・ステイン(2007・2019)
1995年のヘニー・ルルーのような創造力のある司令塔型から、パワフルなプレーで2度の優勝を支えたダミアン・デアレンデまで、個性豊かな選手たちが揃った。私は19歳で初優勝を経験し、キックやスキルなど多才さを併せ持つフランソワ・ステインを選んだ。
WTB11 ブライアン・ハバナ(2007)
チェスター・ウィリアムズは優れたフィニッシャーであり、1995年の象徴的存在だった。マカゾレ・マピンピは、W杯決勝で南アフリカ初のトライを決めた選手だ。それでも、2007年にジョナ・ロムーのトライ記録に並んだブライアン・ハバナの輝きは別格。代表通算67トライという記録も、次点の選手に倍近い差をつけている。
SO10 ハンドレ・ポラード(2019・2023)
ジョエル・ストランスキーは、1995年の決勝で有名なドロップゴールを決めた。ブッチ・ジェームズは2007年に堅実なプレーを見せた。しかし、ポラードは2度の優勝で際立った存在感を放った。特に2023年の決勝ではまさに神経を疑うほど冷静だった。
SH9 フーリー・デュプレア(2007)
ファフ・デクラークは2度の優勝に貢献。ユースト・ファンデルヴェストハイゼン(故人)はフィジカルなプレーが印象に残る名選手だった。それでもゲームメイク力や全体の試合運びを評価して、フーリー・デュプレアに軍配が上がった。
NO8 ドウェイン・フェルミューレン(2019・2023)
1995年の決勝ではLOだったマーク・アンドリュースがNO8にコンバートされ、それは2007年のダニー・ロッソウも同様だった。しかし、ドウェイン・フェルミューレンはパワー、ブレイクダウンの巧さ、驚異のワークレートで語り継がれる伝説的存在となった。
FL7 ピーターステフ・デュトイ(2019・2023)
ルーベン・クルーガーは”静かなる刺客”と称され、2007年のジュアン・スミスはひたむきな働き者だった。それでも、2019年と2023年の両決勝でのピーターステフ・デュトイの活躍は群を抜いており、選出は当然だろう。
FL6 シヤ・コリシ(2019・2023/主将)
1995年のフランソワ・ピナールは偉大なリーダーだったが、選手としては平凡だった。2007年のスカルク・バーガーは、重病を乗り越えた伝説的存在だ。しかし、2度のW杯を主将として制し、代表で常に安定したプレーを見せてきたコリシを外すことはできない。
LO5 ヴィクター・マットフィールド(2007)
1995年のハンネス・ストライダムは実直なプレーで支え、2019年のルード・デヤハーは決勝で特に輝きを見せた。2023年にはフランコ・モスタートが16タックルを記録したが、ラインアウトの名手として”一代限り”の存在だったヴィクター・マットフィールドを推す。
LO4 エベン・エツベス(2019・2023)
1995年のコーバス・ヴィーゼは屈強な巨漢。2007年のバッキース・ボタは”エンフォーサー(制圧者)”の代名詞。しかし、エベン・エツベスは歴代最多キャップ保持者であり、2027年には3連覇を狙う選手だ。
PR3 フランス・マルハーバ(2019・2023)
2007年のCJ・ファンデルリンデも堅実だった。1995年のバリー・スワートは準決勝で肋骨を負傷しながら決勝を戦った。しかし、2019年と2023年のスクラムの屋台骨を支えたマルハーバは安定感が抜群だった。
HO マルコム・マークス(2019)
2007年の主将、ジョン・スミットはレジェンドだが、近年ではマルコム・マークスとボンギ・ンボナンビがHOのレベルをさらに引き上げた。マークスは2019年で際立ったプレーを見せ、2023年は負傷に泣いたものの、僅差でンボナンビを上回ると判断した。
PR1 オス・デュラント(1995・2007)
スティーヴン・キッツォフも2度のW杯優勝経験者であり、2019年は途中出場、2023年は先発として貢献した。“ビースト”ことテンダイ・ムタワリラは2019年の立役者。オックス・ンチェは未来の希望だ。しかし、オス・デュラントはキャリアを脅かすケガから復帰し、12年の歳月を経て再び優勝した数少ない存在であり、特別な選手である。