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【TOP14】準決勝の対戦カード決まる。トゥーロンのノヌは43歳で史上最年長トライをマーク。

2025.06.20

大一番で真価を発揮したノヌ。トゥーロンにさまざまな面で好影響を与えている(Photo/Getty Images)



 6月13日から14日にかけて、トップ14の準決勝進出をかけた熱戦が繰り広げられた。

 6月13日金曜日、激しい雷雨が降りしきるピレネー=アトランティック県バイヨンヌ。落雷、強風、激しい雨を伴う嵐の警報が発令され試合開催も危ぶまれたが、15,000人の観客で埋め尽くされたスタッド・ジャン=ドージェでは、クレルモンとの準々決勝が敢行された。

 試合序盤はクレルモンがやや優勢に進めるも、バイヨンヌは今季で引退するSOカミーユ・ロペスの後継者であるジョリス・スゴンがPGとDGで着実に得点を重ねる。一方、こちらも今季でスパイクを脱ぐことを発表しているクレルモンのSOベンハミン・ウルダピジェタはキックを外し、チーム同様に調子の悪さを見せた。

 ポゼッション、テリトリー、ゲインメーターで徐々にバイヨンヌが圧倒するが決定力を欠き9-3とバイヨンヌのリードで折り返す。

 後半に入るとバイヨンヌの優位は顕著となり、55分に投入されたカミーユ・ロペスのクロスキックからWTBトム・スプリングが唯一のトライを決め、点差を広げた。その後もクレルモンを圧倒し、トップ14形式移行後、クラブ史上初の準決勝進出を決めた。昇格3年目の快挙である。

 準決勝の相手は、昨年度の欧州王者にしてフランス王者でもあるトゥールーズ。「巨人」対「親指トム」と現地メディアが称するこの対戦は、レギュラーシーズンでバイヨンヌがホームで勝利(12-8)したものの、アウェイでは大敗(6-41)を喫している。

 欧州の頂をボルドーに譲り、フランス王者の座を死守すべく、屈辱を糧に虎視眈々と準備を進めるトゥールーズに対し、バイヨンヌは失うものはない。圧倒的劣勢の予想を覆せるか、バイヨンヌの挑戦が注目される。

 翌日、トゥーロン対カストルの準々決勝が行われた。発売後数時間でチケット完売となった先のバイヨンヌ対クレルモンに対して、こちらはチケット販売が伸び悩んだ。直近のトゥーロンの不調や、プレーオフはリーグ運営になり、いつものスタッド・マヨールでもチケット価格が高くなったことや、この日、トゥーロンのエスポワールの決勝が約350km離れた場所であることなどが理由にあげられている。

 今季、慢性的な不安定さを克服し、レギュラーシーズンを堂々の3位で終えたトゥーロンだが、4月の欧州チャンピオンズカップ準々決勝敗退後、2勝4敗と調子を戻せずにいた。

 しかし、トゥーロンは目覚めた。前半はカストルの強固なディフェンスに苦しみ、攻め急いだ。ミスもあった。WTBセタレキ・トゥイクヴがSHバティスト・セランに対し「一人でプレーするな!マジでムカつく!チームのことを考えろ!」と諌める場面もあった。前半を12-10でリードして終えた。

 トゥイクヴのファインプレーはこれだけではない。トゥーロンのもう1人のフライング・フィジアン、WTBチウタ・ワイニンゴロとトゥイクヴがボールを持つたびにカストルのディフェンスをかき乱した。

 後半、カストルがPGで3点を追加し逆転したが、その後、トゥーロン陣22mに攻め入るカストルのボールをセランがインターセプト、ラックから持ち出したFLファクンド・イサからボールを受け取ったワイニンゴロがカストルゴール前までディフェンスを交わしながら駆け上がり、サポートについてきたFBメルヴィン・ジャミネがラインを超えてボールを押さえた。コンバージョンも成功して19-13。

 カストルは再びPGで3点追加するが(19-16)、すぐにカストルゴール前まで猛進したモールから、セランがタッチラインぎわのトゥイクヴにパス、トゥイクヴから再びボールを受け取ったセランがラインを超えた。ジャミネがコンバージョンを成功させて2点を加えた(26-16)。

 カストルもすぐに取り返した(26-23)。どちらのチームにも足が攣って伸ばす選手が見られる。死闘である。しかし、カストルは前半にSOルイ・ルブランとWTBジョフレイ・パリスを失い、SHサンチャゴ・アラタがWTBに入るなど応急処置の体制を強いられ、より疲れが見えてきた。トゥーロンがモールを押し込んでトライを挙げ30点を超えた(33-23)。

 続くカストルのキックオフからもトゥーロンはどんどん仕掛ける。CTBレスター・ファインガアヌクからワイニンゴロがパスを受け、足に引っ掛ける。ボールはカストルのトライゾーンに転がる。ワイニンゴロとカストルのNO8アブラハム・パパリイが追いかけるが押さえられず、セランに代わって入っていたスコットランド代表SHベン・ホワイトが後ろから走り込んできて押さえた。彼のトゥーロンでの初トライだ(40-23)。

 72分、満を持してマーア・ノヌがピッチに入った。チームメイトに言葉をかける。スタンドが盛り上がる。彼のドレッドヘアーが宙を舞うとテンションが上がる。10年前にタイムスリップしたようだ。

 77分、カストルゴール前スクラムから出たボールをホワイトがノヌにパス。そのまま突進してタックルに来たアラタを引きずりながらトライゾーンに手を伸ばしてボールを押さえた(47-23)。マーア・ノヌ、43歳。トップ14プレーオフにおける史上最年長記録だ。

 トップ14で最後にノヌがトライを決めたのは2018年4月のカストル戦だった。それから7年を経て、再びカストルからトライを奪った。チームメイトが駆け寄ってきて祝福する。いつの間にかスクラムでNO8の位置に入っていたファインガアヌクはマオリ式に鼻と鼻を付き合わせて喜びを分かち合った。

 今年2月にメディカルジョーカーとしてトゥーロンと契約して以来、ノヌはここまで3試合、プレー時間は100分に達していなかった。ノヌは毎朝6時にトレーニングセンターに来て黙々とトレーニングに励む。他の選手も早く来るようになった。ノヌは休みの日も自主トレに励む。全体練習後も個人でスキルの練習を続ける。そして準々決勝出場を掴んだ。

「彼のトライは最高の巡り合わせだ。彼の努力が報われて嬉しい。そして、彼が毎日チームにもたらしてくれるもの全てに感謝している」とトゥーロンのピエール・ミニョニ ヘッドコーチ(以下、HC)は喜びを抑えられない。

 その後、カストルのキックオフからトゥーロンのノックフォワードでスクラムになるが、そのスクラムでトゥーロンがペナルティをとった。ホーンが鳴った。しかし、ホワイトはそこから攻めた。ジャミネが転がし、“フライング”ワイニンゴロが押さえてトドメをさした。最終スコア52-23。スタジアムは興奮のるつぼと化した。

 トゥーロンは8年ぶりに準決勝に駒を進め、勢いに乗るボルドーと対戦する。ボルドーは、6月7日のヴァンヌ戦で頭部に受けたショックからまだ十分に回復していない超速WTBルイ・ビエル=ビアレの欠場が発表されている。

 一方、トゥーロンは準々決勝に出られなかったWTBギャバン・ヴィリエール(脳震盪)と、今季急成長のWTBガエル・ドレアン(家庭の事情)の復帰が見込まれている。2人のフライング・フィジアンが良かっただけに、ミニョニHCも起用に頭を悩ませるだろう。

「自分たちの歴史を刻みたい。過去を振り返るのではない、2025年の歴史を書きたいんだ。私だけじゃない。選手たちが2025年の歴史を刻みたいと願っている。そして、チームだけでそれを成し遂げることはできない。私たちにはサポーターが必要だ」とミニョニHCは力強いメッセージを送った。

 試合後、5月に交通事故で急逝したカストルのWTBチョサイア・ライスンゲのために両チームの選手が輪になって、フィジーの歌を捧げた。

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