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ラモスか、ジャリベールか。SOの起用法に注目。秋のフランス代表スコッド決定。

2024.10.25

今季シックスネーションズの終盤戦で10番を着けたトマ・ラモス。秋のテストシリーズでもSOでの起用が濃厚か(Getty Images)


 秋のオータム・ネーションズシリーズに向けたフランス代表スコッドが発表された。

 2020年にファビアン・ガルチエがヘッドコーチ(以下、HC)に就任して以来、フランス協会とLNR(仏プロリーグ運営団体)の間で協定が結ばれ、各クラブの協力のもと42名の選手を招集してきたところ、昨年のワールドカップ後にクラブから声が上がり、今年のシックスネーションズでは34名になった。しかし、今回のオータム・ネーションズシリーズを前に再協議され、ガルチエHCの希望通り、再び42名の選手を集めることができるようになった。

 選手は、10月27日(日)にパリ郊外にある国立ラグビーセンターの合宿所に集合する(27日の21時に試合が行われるトゥールーズ対トゥーロンに出場する選手は翌日朝に合流)が、11月2、3日に行われるトップ14の試合のために、19人の選手は水曜日の夜にリリースされる。翌週、負傷者の状態などに合わせて新たに召集される選手が発表され、11月9日の日本戦、16日のNZ戦、そして22日のアルゼンチン戦に向けて準備を進める。

 今回のリストでは、トゥールーズの選手が11名、ボルドーの選手が9名と、この2チームがほぼ半数を占めている。そこにラ・ロシェルの6名、トゥーロンが4名と続き、トップ14の第7節を終えた順位通りで、現在のチームの勢いがそのまま表れる形となった。

 ノンキャップの選手は8名入った。その中でも注目されているのが、現在ボルドーでプレーする日本代表のNO8と同姓同名のバイヨンヌのPRテビタ・タタフ(22歳)だ。トンガ生まれで17歳で渡仏し、先月フランス代表資格を取得したばかり。昨季はバイヨンヌで28試合に出場し、183cm、133kgという体格からも、代表でウイニ・アトニオ(34歳、196cm/145kg)の後継者として期待されている。
 バイヨンヌの公式サイトによると、日本代表のタタフの従兄弟にあたるという。

 ガルチエHCが『プレミアム』と呼んでいる主力選手のうち、負傷のため今回のリストに名前がないのがPRシリル・バイユ、SOロマン・ンタマック、HOジュリアン・マルシャンだが、後者2名は早ければ第2戦のNZ戦から復帰するのではと伝えられている。

 現地で話題になっているのは、「誰が10番の背番号をつけるのか?」ということだ。「代表スタッフは、マチュー・ジャリベールではなく、トゥールーズでアントワンヌ・デュポンとプレーしていて息が合っているトマ・ラモスを起用したいようだ」と『ミディ・オランピック』紙が報じている。

 この件について、リスト発表の翌日に『レキップ』紙に掲載されたインタビューでガルチエHCは、

「10番にはマチュー・ジャリベールとトマ・ラモスというオプションがある。トマはシックスネーションズ(以下、6N)を10番で終えた。チームを安定させ、団結させてくれた。優れたキッカーでもあり、FBもできる。私たちにとって重要なポイントです。マチューは5年間、10番のフィニッシャーとして、私たちと過ごしてきた。素晴らしいパフォーマンスもあった。ボルドーでチームの勢いに乗っているが、チームの勢いだけではなく、そこには代表チームでの経験もある」と語っている。

「FBのラモスを一番手にし、今季開幕からボルドーで好調のSOジャリベールをベンチスタートさせるのは、大胆な選択では?」という問いに対しては、

「そういう見方もあるでしょう。でも、今年の6Nの最後の2試合を10番でプレーし、またトゥールーズでは10番でプレーしてチャンピオンになった10番の経験が豊富な選手を10番に置いたという私たちの論理も理解できるのではないでしょうか」と切り返す。

 ガルチエHCにとっては今年の6Nの最後の2試合が重要になっているようだ。初戦はアイルランドに17-38と完敗、続くスコットランド戦は20-16で勝利したが「恥ずべき勝利」と批判され、3戦目のイタリアは13-13となんとか敗戦は免れたものの、ワールドカップ(以下、W杯)の失望とショックが消化できていないのではと不安の声が高まった。

 4戦目はウェールズに45-24と勝利し、最終のイングランド戦では79分にラモスが50mのロングPGを成功させ逆転、33-31で勝利をもぎ取った。この2試合の勝利のおかげで大会2位で終えることができ、面目を保つことができた。

 ただ、6NでラモスがSOに入った時にFBをしていたレオ・バレが、所属するスタッド・フランセの低迷と同調して、納得するパフォーマンスができず苦戦している。

「確かに彼は今、クラブで苦戦していますが、代表チームでは6Nでもアルゼンチン戦でも、難しい状況で良いパフォーマンスを見せていました。彼も競技者なのだから、クラブを立て直すためにさらに努力するでしょう」
 やはり、ラモスをSOに据える方向なのだろうか。

 6Nの最後の2戦のパフォーマンスで今回のメンバーを選ぶなら、CTBガエル・フィクーとペアを組んでいたニコラ・ドゥポルテルが負傷しており、ヨラム・モエファナも先週の試合でレッドカードを受け、出場停止になる可能性がある。それについては、

「エミリアン・ガイユトンがいる。今回代表合宿に初参加のポール・コストもとても勢いがある。アルゼンチン戦でデビューしたアントワンヌ・フリッシュもいる。ジョナタン・ダンティーも帰ってきた。競争力のあるCTBのペアを見つけたい。新たな才能が開花することを期待している」と述べている。

 ガルチエHCは今回の代表チーム集合を「再会の場」と言う。

「アントワンヌ(デュポン)のように1年ぶりに会う選手もいる。この4週間は2027年に向けてのビジョンと目標について取り組みたい。参加できない選手もいるが、これが私たちのW杯後の本当の意味での最初の集合になる」

 デュポンも復帰しての再スタートとなるこのオータム・ネーションズシリーズでは、戦績だけではなく、夏の南米遠征でのメルヴィン・ジャミネの人種差別発言に続き、オスカー・ジェグとユーゴ・オラドゥが性的暴行で起訴され、傷ついてしまったラグビーフランス代表チームのイメージを回復させると言うミッションも、彼らは背負っている。

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