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【トップ14】トゥールーズにアウェイ初勝利。ボルドー・ベーグルの進化

2024.10.03

昨季ファイナルの雪辱を果たし喜ぶボルドーの選手たち。第4節終了時点で首位に立った(Getty Images)


 昨季の決勝戦のリマッチとなったトップ14第4節の最終戦、トゥールーズ対ボルドーは、ボルドーが王者トゥールーズとの激戦を制して勝利をつかんだ。2006年にボルドーの大学生クラブチームとベーグルのアマチュアクラブチームが合併し、現在の『ユニオン・ボルドー・ベーグル』が誕生して以来、初めて敵地トゥールーズで勝利を挙げた。新たにクラブの歴史を刻んだ。

 初めて進出した決勝は、厳しい教訓となった(3-59)。しかし、昨季ヤニック・ブリュがヘッドコーチ(HC)に着任して生まれた勢いが途切れることはなかった。むしろ、より優勝に近づくチームになるための道を示してくれるものとなった。スタッフも選手も、自分たちのこの1年の進化の手応えを感じている。そしてこれからの可能性を信じている。

 サポーターもそうだ。今季開幕前には、年間シートの販売数が17000を超えた。昨季の12096から30%増、2021-2022シーズンの8000からは倍増している。32500人のキャパシティーを持つホームスタジアムのスタッド・シャバン・デルマスは今季行われた2試合とも満員で、今週末のバイヨンヌ戦もすでにチケット完売だ。

 昨季の決勝戦の後、ブリュHCは「予定より早く決勝戦に到達してしまったのかもしれない」と漏らしていた。もう一つ想定外だったのは、シックスネーションズでSHマキシム・リュキュ、SOマチュー・ジャリベール、WTBダミアン・プノー、CTBヨラム・モエファナだけでなく、まだ若いWTB/FBルイ・ビエル=ビアレ(21歳)、CTBニコラ・ドゥポルテル(21歳)までフランス代表に召集されたことだ。その準備はできていなかった。その間に順位を2位から6位に落としてしまい、プレーオフ進出のために、ワールドカップから休みなく動員されている代表選手たちを起用し続けなければならなかった。準々決勝から決勝まで12日間で3試合というスケジュールで、疲弊した状態で挑んだ決勝には、負傷しているジャリベールとPRベン・タメイフナまで出場させざるを得なかった。

 今季は選手をローテーションさせながら起用する。そのためにこの夏、戦力を補強した。スコットランド代表LOジョニー・グレイ(30歳)、オーストラリア代表FLラクラン・スウィントン(27歳)、アイルランド代表SOジョーイ・カーベリー(28歳)、そして日本の横浜キヤノンイーグルスでもプレーした南アフリカ代表のCTBローハン・ヤンセ・ファンレンズバーグ(29歳)など、若く、少し「ライト」とも言われていたチームに足りなかったハード系の経験豊富な選手が数多く加入した。

 開幕からここまで、アウェイでのリヨン戦で80分にPGを決められて逆転されたが(26-28)、トータル17トライ、124点はどちらもリーグ最多で、高い攻撃力を見せている。しかし失点も少なくはなく、ディフェンスの不安が指摘されていた。

 一方、トゥールーズは開幕から3連勝、順位も2位のボルドーと3ポイント差で1位ではあったが、自分たちが目指しているラグビーに達していない状態だった。

 この試合のボールインプレーの時間は41分。トップ14の1試合平均は34分だから、いかに激しい試合だったかがわかる。スピード、パワー、そして熱量で優ったボルドーが、トゥールーズを上回った。

 その差はまずディフェンスに見られた。ボルドーのこの試合でのタックル数は162で、そのうちミスタックルは28。一方トゥールーズはタックル数80に対して30のミスタックルをしている。

 コリジョンでもボルドーが常に前に出た。この日、ボルドーで初スタメンのファンレンズバーグは4度のボールキャリーで4度のディフェンス突破を記録している。機動力のドゥポルテルを休ませ、フィジカルの強いファンレンズバーグを起用した意図が読める。

「ラックでの戦いに敗れた」と昨季の決勝後にブリュHCは言っていたが、今回ラックを支配したのはボルドーだった。「ラックが130あって、7回ターンオーバーに成功した」と試合翌日にラジオ番組に出演したボルドーのディフェンスコーチは言う。

「ラックディフェンスはディフェンスの鍵。相手の球出しを遅らせ、できればコンテストしてペナルティを誘う。この試合に向けて少し強調したが、昨季から特に変えたことはない。選手が意識できたのでは」と続けた。

 最後の場面でもトゥールーズが4点差を追ってボルドーのゴール前まで攻め入ったが、密集でボルドーがペナルティを誘い守り切った。チームの絆が感じられた。

「リアリズムと決定力に欠けた。3度ゴール前まで行っているのに得点できていない。ポジティブなアクションを3つと続けることができなかった」とトゥールーズのユーゴ・モラHCは自身のチームを分析する。

 それとは対照的にボルドーは持ち前の攻撃力を発揮し、少ないチャンスをものにした。ボールキャリーの数はトゥールーズの166に対してボルドーは82と半分だが、ラインブレイクの数はボルドーが7でトゥールーズの3を上回った。この日FBで起用されたルイ・ビエル=ビアレは3度ラインブレイクに成功し、一つは自らトライ、もう一つはトライアシストと、ボルドーの2つのトライを生んだ。

 ボルドーのアタックを選手たちは「サーフィン」と呼んでいる。昨季、ブリュHCとともにアタックコーチに就任したノエル・マクナマラのネーミングだ。マクナマラはアイルランド出身で、レンスター、アイルランドの年齢別カテゴリー代表、NZのノースハーバー、南アフリカのシャークスで経験を積んできた。シャークス時代、アタックのコンセプトを模索している時に、インド洋でサーフィンする人たちを見てピンと来た。

「波に乗る時の自由と責任、グラウンドと同じだ。波は毎回異なる。今良い波が来たからといって、次に来る波も良いとは限らない。良いと見た波には乗らなきゃいけない」と「サーフィン」という言葉に込めた意図を説明する。

 ボールを持っていないBKの選手が自由に動き、相手を混乱させ数的有利を作る戦術はマクナマラの商標特許ではないが、「サーフィン」というネーミングが、自由を愛するタレント集団のボルドーのBKの選手たちに合っている。彼らのイメージを掻き立て、グラウンド上であたかも波に乗っているように、駆け引きを楽しみながら自由にプレーしているのが感じられる。

 この試合には関係ないが、もう一つラグビーファンが注目していることがある。ジャリベールのボルドーとの契約が、今季で終了する。すでにクラブはジャリベールに延長のオファーを提示しているが、ジャリベールが保留している。もちろん他のクラブからも誘いはある。現在のボルドーの環境、勢い、ムードの中で、彼もさらに責任を担い満ち足りているように思えるのだが、どう決断するか楽しみだ。

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