フランスの国内ラグビーもシーズン終盤に突入して激戦が続いている。
そんな中、プロリーグ運営団体であるLNRから今季の観客動員数が発表された。
トップ14のスタジアムでの観戦者数は21節を終えて、220万4597名。昨年比3.5パーセントの増加で、現在のフォーマットになってからは最多を記録した。チケット販売や飲食、グッズ販売、またVIPラウンジ等のホスピタリティーパッケージなど、試合日の収入が大事な財源となっているクラブにとって、とても喜ばしいことだ。
最も観客動員数が多かったのは、2万8500人の収容規模を持つスタッド・シャバン=デルマスをホームスタジアムにしているボルドーで、1試合平均で2万7656人を記録した。
続くトゥールーズは、ホームの約1万9000人収容のスタッド・エルネスト=ワロンだけでなく、昨年のワールドカップ会場にもなった3万3000人収容のスタジアム・ド・トゥールーズでやこなった1試合も含めて、今季のホスト試合すべてが満員御礼で、1試合平均1万9823人。
先日もスタジアム・ド・トゥールーズでおこなわれる欧州チャンピオンズカップ準決勝のチケットが発売から20分で完売したばかり。ホームスタジアムの拡張も検討している。
3位は1万7276人のトゥーロンだ。近年、ホームのスタッド・マヨールを埋めることができず苦労しているが、4月20日にマルセイユのスタッド・ヴェロドロームで行ったトゥールーズ戦では、6万2000の観客を集めた。
昨年に比べて観客数の増加が大きいのは、今季好調で首位を維持しているスタッド・フランセで、昨年比16パーセント増(1万3006人)、続いて若いチームで今季健闘しているポーで12パーセント増(1万2605人)だ。
チームの成績やスター選手の存在も観客数増加につながっているが、それだけではない。すでにスタジアムに足を運んでくれている『ラグビー通』だけでなく、新たなファンを取り込むために、スタジアムでのラグビー観戦を、『スタジアムを楽しむ体験型のエンターテイメント』として仕掛けた各クラブの取り組みが実を結んでいる。
SNSを使った情報発信で若い層に働きかけ、試合チケットでも『大学生チケット』を設けた。ゴールポスト裏の座席だが、スタッド・フランセのホーム試合では10ユーロ。現在の円安のレートで換算すると約1680円になるが、現地の人の感覚では1300円ほどだろう。
トゥールーズでは9ユーロ(約1511円)、ボルドーだと5ユーロ(約840円)で観戦できる。
試合中は白熱した試合の空気を生で味わいながら、飲んで、食べて、歌って、楽しく騒げる。
試合終了後もDJのかける音楽でクラブ化したスタジアム内のバーでさらに盛り上がる。ラシン92のアリーナでは、屋内の利点を活かし、照明を落とし、色とりどりのライトの演出を加える。ついさっきまで試合が行われていたピッチ全体がクラブと化す。選手も現れる。
このバーは試合終了から2時間半オープンしており、21時キックオフの試合でも翌朝1時30分まで遊べるのだ。飲食の割引もつけたスタッド・フランセでは、観客の平均年齢が42歳から32歳に下がったという。
もはやラグビーは飲んで騒ぐための口実でしかないかもしれない。
しかし、それでも良い。まずはスタジアムで楽しい時間を過ごしてもらえれば、そしてまた遊びに来てもらえれば良いのだ。