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ブルーズ終盤に大逆転でNZ女子『スーパーラグビー・アウピキ』初優勝! 永田虹歩は後半から出場

2024.04.14

歓喜のブルーズ。最前列、左から3人目が永田虹歩。(Getty Images)



 ブルーズの永田虹歩がNZ女子『スーパーラグビー・アウピキ』の決勝メンバーに入ったニュースを先日お伝えした。
 その決勝が4月13日にオークランドにあるイーデンパークでおこなわれ、ブルーズが残り時間2分で逆転して24-18とチーフス・マナワを破った。
 初の栄冠を手にしたその試合には永田も後半から出場し、勝利に貢献した。

◆硬さの見えた前半はロースコア。

 レギュラーシーズン1位通過のブルーズが同2位のチーフスをホームに迎えてのフィナル。
 決勝ではニュージーランド(以下、NZ)国歌の斉唱があり、その後は、チーフスのハカもおこなわれた。決勝前に2連敗しているだけに、もう負けられないと言う気持ちが溢れたか、殺気立っている様子もうかがえた。

 ハカが終わってまもなくして、キックオフの笛が鳴った。決勝の大舞台に、両チームに硬さが感じられた。
 しかし、先制トライは、あっさり生まれた。前半6分、チーフスがWTBルビ・トゥイのチップキックからチャンスを掴んでFBレニー・ホームズがインゴールに押さえる。
5-0と先制した。

 そこから試合が動くと思われた。しかし、選手の硬さは取れずミスが目立つ。
 レフリーがラック周辺で厳しめに笛を吹いた影響もあり、両チームの反則が重なる。なかなか得点シーンは見られなかった。

 その後、スコアボードが動いたのは33分だった。チーフスのFBホームズがペナルティゴール(PG)を決めて8-0とする。
 その2分後にはチーフスのWTBトゥイの反則から、ブルーズが速攻を仕掛けてスイッチが入った。

 敵陣22メートルに入ったブルーズは、ボールキャリーの良いフロントローの突破を数回からめて前に出。。そこからBKに展開した。
 最後は抜群の決定力を持っているWTBケイトリン・ヴァハァコロがファイブポインターとなる。8-5と3点差に追い上げた。(35分)
 そのスコアのまま、チーフのスリードで前半が終了した。

高い決定力でチームを優勝に導いたWTBケイトリン・ヴァハァコロ。(Getty Images)

◆後半、チーフスが突き放すもブルーズが逆転。悲願の初優勝!

 後半に入って両軍にスイッチが入った。男子顔負けのコリジョン(衝突)があり、ボールも良く動く。
 しかし、オークランド独特の激しい雨が降ったり、止んだりと天候の影響もあってミスは減らない。スコアボードはなかなか動かなかった。

 次の得点がようやく刻まれたのは55分だった。チーフスが敵陣深くのラインアウトから得意のモールでトライを狙いにいった。
 ブルーズが上手く対応するも、ゴール前での激しいFW戦を制したのはチーフスだ。背番号6ミア・アンダーソンがディフェンスを数人引きずってインゴールになだれ込んだ。FBホームズのゴールも決まって15-5とした。

 このトライで勢いが増したチーフスに対し、ブルーズの反則が増えた。59分にはPGを追加したチーフス。18-5とリードを13点と広げた。
 逆転するには2トライ2ゴールが必要だ。大雨が降っていた。追う側にとっては厳しい条件と思われた。

 しかし、ここからブルーズの逆襲が始まった。
 66分に途中出場のSHカーリア・アワがトライ。72分には、ヴァハァコロがスピードを活かしてディフェンスを振り切る。この日2つ目のトライを奪い、SOクリステン・コットレルのゴールも決まり18-17とわずか1点差に迫った。

 嵐のような雨が降る中、残り時間が5分を切った。ブルーズの15番パトリシア・マリポは、自陣からカウンターアタックを仕掛けず、ボールをチーフス陣に蹴った。
 途中出場のチーフスの22番チェルシー・センプルが自陣ゴール前でボールを拾い上げる。そこからタッチに蹴りだすと思われたがディフェンスの間に走り込み展開を試みる。それが裏目に出てノックオンとなった。

 残り時間が僅かな中、ブルーズは、絶好のチャンスを得た。チーフスのゴールライン前6メートルのところでマイボールのスクラム。そこからFWにこだわり、トライを狙いにいった。
 最後は、フィジカルに強いNO8リアナ・ミカエレ=トゥウがインゴールに飛び込んだ。ブルーズが残り時間2分で逆転。24-18とした。

 その後、フルタイムはまもなく訪れた。
 終盤に3連続トライで見事逆転をしたブルーズがスーパーラグビー・アウピキで初の頂点に立った。ブルーズの選手たちは、抱き合い、飛び上がりながら喜んだ。

 ブルーズは、2年前の優勝をかけた対戦でチーフスに0-35と散々な目にあった。それだけに絶対に勝ちたい思いがあった。
 この日の主役は、やはり2トライのヴァハァコロ。彼女に、良いタイミングでボールを共有できたことが大きな勝因となった。

 一方のチーフスのWTBトゥイには、スペースのある局面でボールを供給される場面はほとんどなかった。
 ブルーズが最後まで切れずに戦い続け、FW陣がラインアウト、スクラムで相手にプレシャーをかけた事も大きかった。

 ブルーズの16番を付けた永田虹歩は60分から、HOでなく、右PRで出場した。
 トイメンはブラックファーンズ(女子NZ代表)の選手も、良いスクラムを組んだ。そして、この日もボールを持ったら積極的に前に出た。

 日本人がラグビー王国のスーパーラグビーの頂点に立った。
 快挙の言葉だけでは足りないくらいの偉業をやり遂げた。ひた向きな永田のプレーを見ていると、これからまだまだ進化していくのだろうと感じる。

 来年も今年と同じようなフォーマットでスーパーラグビー・アウピキが行われる予定だ。
 その後、2026年からはオーストラリアのチームも交えての大会が検討されている。今後、チーフスでプレーした齊藤聖奈、ブルーズの永田に続いて日本人女性が海外で活躍する日を見るのが楽しみだ。

 日本人でもレベルの高いところでも通用すると証明してくれた2人を誇りに思う。
 残念ながら決勝のメンバーに選ばれなかった斎藤だったが、クライストチャーチでおこなわれたマタトゥ戦後の様子を見ていると、チーム、そしてファンの皆さんからとても愛されていると伝わってきた。

 ちびっこからもサイン攻めにあっている姿もあった。NZの女子ラグビーのレベルの高さを肌で感じただけでなく、女子ラグビーを見守る温かさも感じてもらえたと思う。
 女子ラグビー最高です!

ファンにサインをねだられるチーフス・マナワの齊藤聖奈。(撮影/松尾智規)



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