2027年のラグビーワールドカップ、さらにその先の目標へ向け、第2次エディー・ジョーンズ体制の日本代表候補となる選手たちが動き出した。男子15人制トレーニングスコッドとして招集され、2月6日から2日間、福岡県のJAPAN BASEで合宿を実施。現在開催中のクロスボーダーマッチに挑んでいる昨季リーグワン4強のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、埼玉パナソニックワイルドナイツ、横浜キヤノンイーグルス、東京サントリーサンゴリアス以外のチームから、34人が参加した(当初のメンバー発表後、コンディション不良や個人の事情により3選手が不参加。京都産業大学1年のSH高木城治が追加招集)。
今回の合宿参加メンバーのうち、日本代表キャップホルダーは昨年のワールドカップに出場した姫野和樹、リーチ マイケル、ワーナー・ディアンズ、アマト・ファカタヴァ、サウマキ アマナキ、李承信を含む11人(福田健太とシオサイア・フィフィタは合宿不参加)で、その他の23人は、9人の大学生を含むフレッシュな顔ぶれとなった。
初日、メディアに公開された練習は約1時間で、ゲーム形式の練習ではエディー・ジョーンズ ヘッドコーチの「スバラシイ!」「グッドラン!」など快活な声が響くなかおこなわれた。選手たちのコーリングやコミュニケーションも多く、短い時間で集中力高い練習を重ね、ハドルもよく組んで何度も話し合いの機会が設けられていた。
スコッド入りした19歳の石橋チューカ(京都産業大学1年)は、U20日本代表候補フォワード合宿を一時離れての参加となった。ハードなスケジュールとなるが、この高いレベルでも多くのことを学びたい。
「自分が全然できない部分が見つかったんで、よくなるように改善していきたいと思いました。基礎的なことで、キャッチするときの動き方やパスするときの精度だったりとか、そういう基本的な動きをもっと改善しようと思いました」
全体練習後は、同じロックとしてスコッド入りした35歳のベテラン、リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)と個別練習をおこなった。
「ジャッカルとタックルを教えてもらったんです。自分は苦手なので、強みに変えていけるようにと思っています。ジャッカルでは、まずフィジカルで勝って、ボディコントロールすることで敵を引き倒す。で、そこでジャッカルに行く動きとか、力の入れ方とか、そういうところを教えてもらいました」
リーチは石橋について、「スピードもあってサイズもあって、絶対伸びてくる選手だと思います。すごくまじめ」と高く評価していた。
身長190センチ、体重95キロ。石橋自身はフィジカルがずっと課題だと思っていて、ジョーンズ ヘッドコーチには「もっといっぱい食べて体重を増やしなさい」と言われたという。
「ジャパンでもロックをしたいと思ったんですけど、自分より身長が高い選手が多いんで、ちょっと自信をなくしたところはあります。でもその分、スピードで頑張っていきたいと思いました」
エディー・ジャパンがどういうラグビーをしていくのか、その一員になれるように、しっかり理解して近づいていきたい。
今回の合宿には19歳が3人参加しており、LO石橋チューカや追加招集のSH高木城治とともに、エキサイティングなフルバックである矢崎由高(早稲田大学1年)も刺激を受けている。
「ショートな練習を高い集中で続けて、いままでやってきた学生のラグビーとはすごく違うなと感じました。ここではプロの選手や外国人の選手もいて、もうひとつふたつ、スピードもパワーも上がるんで、そこは今までやってきたこととは違うなと思います。スピードチェンジや意識の切り替えだったり、練習の態度など、レベルが違うなと感じました」
初日の練習を終えた感想は、「楽しかったというより、驚きの方が勝ちました」。高校日本代表のときから一緒にやってきた同級生もおり、「すごく心強いですし、自分も頑張ろうという気持ちになれます」と語った。
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大学選手権で3連覇を果たした帝京大学からは、今春卒業でリコーブラックラムズ東京への入団が決まっているWTB高本とむと、現在3年生のFL青木恵斗が招集された。
高本は、今年度の自分のパフォーマンスには手応えがあったそうで、「見てもらえてるんだなと感じて、嬉しかったです。日本代表に入ってワールドカップで活躍したいというのがラグビーを始めたころからの夢でした。だから、呼ばれたいと思っていました。(初日の練習を終え)ちょっと緊張もありましたが、実際に体を動かしてみたら気負うことなくいつも通りできました」と振り返った。
高本が、自身の練習に対する意識や取り組みが変わったのは大学2年時、大学選手権の決勝でメンバーから落とされてベンチから見守ることになり、このままでは足りないと思ったからだ。それ以来、走り込みやウエイトトレーニングにしっかり取り組み、スピードやフィジカルが向上したと感じている。「言ってみれば、自分の体は商売道具なんで、自分がどれだけ頑張れるかで将来が変わってくる」。だから、これからも努力を怠らない。
「エディーさんは、動き続けるという部分をすごく大事にしていると思います。プレータイム時に歩かずどんだけ走り続けられるか、というところを重要視していると思うんで、どんだけスプリントして、80分間どれだけできるかというのが大事だと思うので、それに応えられる選手になりたいなと思います」
青木は初日の練習後、アピールできたかと報道陣に訊かれ、「いや、自分の最悪が出ちゃいました」と苦笑いした。「人見知りというか、緊張するんで、ちょっと今日は自分らしさがあまり出なくて、縮こまった感じになっちゃったんで」
全体練習後は、大学の先輩でもある姫野とセッションをしていた。
「姫野さんは話しやすいというか、いろいろ教えてもらっています。ポジションも一緒で、姫野さんから声をかけていただいてすごく助かりました」
ジャッカルの名手である姫野から得るものは大きかった。
「大学ラグビーをしていて、あまりフィジカルのことでは困らなかったんですが、姫野さんに教えていただいて、コンタクトで勝ってからの相手の倒し方までの向きだったり、そういったところのスキルがすごく必要なことを学びました。これまでは、(体の)向きを考えずにだたムキになっていたので(笑)。今日、姫野さんとやってみて、もっと工夫して、力の入れ方だったり、スキルの考え方をめちゃめちゃ学べたんで、吸収するものが多かったです」
今回の男子15人制トレーニングスコッド福岡合宿に参加したメンバーは以下のとおり。
<大学生>
HO 佐藤 健次(早稲田大学3年/21歳)
LO 石橋 チューカ(京都産業大学1年/19歳)
FL 青木 恵斗(帝京大学3年/21歳)
SH 土永 旭(京都産業大学3年/21歳)
SH 高木 城治(京都産業大学1年/19歳)
SO 伊藤 耕太郎(明治大学4年→リコーブラックラムズ東京/22歳)
CTB 秋濱 悠太(明治大学3年/21歳)
WTB 高本 とむ(帝京大学4年→リコーブラックラムズ東京/22歳)
FB 矢崎 由高(早稲田大学1年/19歳)
<テストマッチ未経験者>
PR 眞壁 照男(東芝ブレイブルーパス東京/27歳)
PR 茂原 隆由(静岡ブルーレヴズ/23歳)
HO 原田 衛(東芝ブレイブルーパス東京/24歳)
FL 古田 凌(三重ホンダヒート/28歳)
FL 伊藤 鐘平(東芝ブレイブルーパス東京/26歳)
NO8 ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ/23歳)
CTB 池田 悠希(リコーブラックラムズ東京/28歳)
CTB サミソニ・トゥア(浦安D-Rocks/28歳)
CTB 眞野 泰地(東芝ブレイブルーパス東京/26歳)
CTB チャーリー・ローレンス(トヨタヴェルブリッツ/25歳)
WTB マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ/27歳)
WTB ネタ二・ヴァカヤリア(リコーブラックラムズ東京/25歳)
WTB 松永 貫汰(コベルコ神戸スティーラーズ/24歳)
FB 奥村 翔(静岡ブルーレヴズ/25歳)
<ラグビーワールドカップ2023出場選手>
LO リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京/35歳/日本代表 84 caps)
LO アマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京/29歳/日本代表 7 caps)
LO ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京/21歳/日本代表 11 caps)
FL 姫野 和樹(トヨタヴェルブリッツ/29歳/日本代表 32 caps)
FL サウマキ アマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ/26歳/日本代表 3 caps)
SO 李 承信(コベルコ神戸スティーラーズ/23歳/日本代表 11 caps)
<日本代表キャップホルダー>
PR 三浦 昌悟(トヨタヴェルブリッツ/28歳/日本代表 9 caps)
PR 竹内 柊平(浦安D-Rocks/26歳/日本代表 3 caps)
FL 松橋 周平(リコーブラックラムズ東京/30歳/日本代表 8 caps)
FL ウィリアム・トゥポウ(トヨタヴェルブリッツ/33歳/日本代表 12 caps/RWC2019)
WTB 高橋 汰地(トヨタヴェルブリッツ/27歳/日本代表 1 cap)
※ ポジションはメディアリリースによるもの。
<メンバー発表後の不参加選手>
SH 福田 健太(トヨタヴェルブリッツ/27歳/日本代表 1 cap/RWC2023)
SO 家村 健太(静岡ブルーレヴズ/23歳)
CTB シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ/25歳/日本代表 13 caps/RWC2023)