「クロスボーダーマッチは、エキサイティングな試合になるだろう」
そう語ったのは、今季トヨタヴェルブリッツに加入したボーデン・バレットだった。
バレットと言えば、ニュージーランド(以下、NZ)代表として、2015,2019、2023年と3度のワールドカップに出場。積み重ねた代表キャップは123。これまでに2度のワールドラグビー年間最優秀選手賞(2016,2017年)を受賞。まぎれもない大スターである。
日本でのプレーは、前回の東京サントリーサンゴリアス(2020〜2021年度)に続いて、今回で2度目となる。
バレットは、1月31日にNZのラジオ番組に20分ほど出演した。
番組の冒頭は、東芝ブレイブルーパス東京戦で負傷した膝のけがの具合の話題から始まった。
その問いかけにバレットは、「そんなに深刻ではないよ。4〜6週間くらいかな」。
続けて、「クロスボーダーマッチがあるので、(ケガの)タイミングとしては良かった」と普段通りの落ち着いた受け答えをした。
クロスボーダーマッチが終わって数週間後には、ピッチに戻れる予定でいることを説明した。
ケガはハイボールをキャッチした直後にタックルを受け、その時に膝を捻ったことを告白した。
バレットにタックルに入ったのは、オールブラックスのチームメイトのFLシャノン・フリゼル。そして日本代表のFL/NO8のリーチ・マイケル。
彼らから上と下でダブルタックルを受けたことに対して、バレットは、「理想的ではないよね」と、フィジカルに強い2人に同時にタックルされた事を冗談を交えて話した。
バレットのケガの具合は、日本のラグビーファンも心配しているだろう。
サバティカルで来日しているバレットは、日本のシーズンが終わりNZに帰国したら直でオールブラックスに合流する。NZのメディアも、ラグビーファンも気になっているようだ。
日本での自身のプレーに関して、フィジカルの状態も良く、よいプレーができていると語るも、まだチームにしっかりとクリック(意気投合)していない事を話していた。
それでも、バレットらしく自信があるような語り方だった。今後チームにしっかりとコミットしていくことで(ヴェルブリッツが)調子を上げていく事に自信があるようだった。
日本でのプレーを楽しんでいると同時に、挑戦でもあると語った。プレーだけでなく、家族と共に日本の生活をエンジョイしているとのことだ。
日本のラグビーの印象については、大学ラグビーの盛り上がりにも触れた。
リーグワンについては、大勢の外国人選手の存在を伝えた。南アフリカ、オーストラリア、パシフィックアイランダーの選手たちがいて、ヨーロッパの選手も入ってくるなど、多国籍でミックスされている事を紹介した。
日本のクオリティーに関しては、とても速いラグビーだと強調した。
番組の中ではさらに突っ込んで「日本のラグビーがどの位置にいるか」の質問もあった。
司会者は、「NPC(NZの州代表)、それともNPCとスーパーラグビーの間くらいのレベルになるのか?」と興味深々にバレットに問いかけた。
それに対してバレットは、少し考えながら、「4チーム(トップ4)は、スーパーラグビーに通用すると思う」。と答えた。
司会者は、「ワォー!ワォー!」とびっくりしていた。
まさか日本チームがスーパーラグビーレベルで通用するとは思っていなかったようだ。
バレットは、付け加えるように、2つのチームの名前を出した。
「当日(クロスボーダーマッチ)の23人のメンバー次第だが、パナソニック(埼玉パナソニックワイルドナイツ)とサントリー(東京サントリーサンゴリアス)がフルスコッド(ベストメンバー)であるならば、NZチームもしっかりしたメンバーを組む必要がある」と真剣に語った。
クロスボーダーマッチは、エキサイティングな試合になると太鼓判を押した。
バレットのラジオ出演も終盤に入り、日本のシーズンが終わりNZに帰国したあとの事に話が変わる。
もっとも印象的だったのは、「いつもこの時期になると言うけど、10番をやりたい」と切実に語っていた事だ。オールブラックスの司令塔をやりたいんだ、という猛烈なアピールだ。
しかしながら、これまで通りに15番も受け入れる意思もあることをほのめかし、ブラックジャージを着る事がバレットにとって何よりもスペシャルな事を強調した。
ケガが治ってチームに復帰した後は、どんなプレーを見せてくれるのか。そしてNZに戻ってからは、オールブラックスでダミアンマッケンジーとの10番争いも待っている。
※現在のNZラグビーユニオンのルールでは、東芝ブレイブルーパス東京と3年契約をしているリッチーモウンガには、NZ代表になる資格がない。
日本でのプレーに集中していると語ったバレットだが、NZに帰国してからの、ブラックジャージでの挑戦の話題をいちばん熱く語っていたように思えた。
現代ラグビーにおいて32歳は、まだまだ衰える年齢ではない。2027年までNZラグビーと契約をしたことは、自信があるからだろう。
ボーデン・バレットから目が離せない。