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イングランド代表主将のファレル、来年のシックスネーションズ欠場。「精神的健康を優先」

2023.11.30

2023年ワールドカップでは銅メダルをかけたイングランド代表主将のオーウェン・ファレル(Photo: Getty Images)


 世界的スターのひとりであるイングランド代表キャプテンのオーウェン・ファレルが、来年2月2日から3月16日にかけて開催されるシックスネーションズ(欧州強豪6カ国対抗戦)には参加しないことを発表した。「自分と家族の精神的健康を優先するため」休暇を取ることを決めたという。

 アイルランド代表現ヘッドコーチであるアンディ・ファレルの息子で、17歳のときにプロデビューしたオーウェン・ファレル。スタンドオフやインサイドセンターとしてプレーし、所属するサラセンズでは数多くのタイトル獲得に貢献、欧州最優秀選手賞に2度輝いたこともある。イングランド代表としてのキャリアは12年で、シックスネーションズは3度優勝(2016年はグランドスラム)、ワールドカップには2015年から3大会連続出場し、今年開催されたフランス大会ではイングランド代表歴代最多得点記録を塗り替えた(通算1237得点)。しかし、チームは準決勝で南アフリカ代表との死闘に敗れ3位に終わっていた。

 ワールドラグビー年間最優秀選手賞に3度ノミネートされたことがある32歳のファレルは、しばらくインターナショナルラグビーから離れるものの、引退はしない。所属クラブのサラセンズによれば、「彼はサラセンズでプレーし続け、クラブのキャプテンを務める。いつものように、オーウェンはクラブ全員の全面的なサポートを受けるだろう」とのこと。

 イングランドラグビー協会も声明を出し、代表チームのスティーヴ・ボーズウィック ヘッドコーチは「イングランドラグビーの全員がオーウェンの決断を全面的に支持している。デビュー以来、彼は10年以上イングランド代表に不可欠な存在であり、エリートアスリートに対する要求は非常に厳しいものだ。彼は模範的な選手であり、キャプテンであり、リーダーであり、常に母国のために全力を尽くしている。オーウェンがこのような形で心を開くという決断を下したのは、勇気のいることだ。彼が今後必要とするサポートを得られるよう全力を尽くす」とコメントしている。

 イングランド代表として112キャップを重ね(ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズには3度選出)、2018年からキャプテンを務めてきたオーウェン・ファレル。これまで多くの人々から尊敬され称賛を受けてきたが、今年のワールドカップ直前には危険なタックルで重い出場停止処分を受け、一部メディアによれば、復帰後もソーシャルメディアなどで非難され観客からブーイングを浴びることもあったという。

 BBCスポーツのラグビー特派員であるクリス・ジョーンズ氏は、「ファレルはきわめて厳格な人柄のためか、ピッチ上での対決姿勢のためか、特にイングランド国外の一部の人たちからしばしば非難の矢面に立たされてきた。はたから見れば、それは彼に影響を与えていないかのように見え、ワールドカップやサラセンズに戻ってからの彼の調子は苦戦しているようには見えなかった。しかし、若い家族と、30代になってもプレーを続けたいという野心を持ったファレルは、短期的にイングランド代表から離れるという勇気ある決断を下した。 これは、最もひるむことなく精神的に立ち直るアスリートでも、水面下では脆弱になる可能性があることをハッと思い出させてくれる」と分析している。

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