2か月後、大舞台でふたたび戦う相手に24-22と競り勝った。
7月22日、サモア代表は北海道・札幌ドームで日本代表から勝利を挙げた。
10点を先行された。
しかしサモア代表は前半30分、日本代表NO8リーチ マイケルが相手頭部への危険なプレーにより退場となったこともあり、数的優位な状況に立った。
前半終了時までに10-10と追いつくと、後半に入って2PGを奪われ、10-16とされるも慌てなかった。
8分、SHジョナサン・タウマティネのキックチャージからのトライ(Gも)で17-16と逆転する。
その後、SO李承信の2PGによって再逆転され、17-22とリードを許す。
しかしWTBトゥムア・マヌのトライで同点とし(後半24分/22-22)、コンバージョンキックで勝ち越した。
23人の出場予定選手のうち、3人がノンキャッププレーヤーだったこの日のサモア代表。
国際舞台での経験は豊富も、特別な気持ちでキックオフを迎えた選手がいた。
SOクリスチャン・リアリーファノはオーストラリア代表26を持つベテランも、サモア代表でプレーするのは、この日が初めてだった。
ワールドラグビーの規定変更により、『最初の代表チームで最後に試合出場してから36か月間以上経過していること』、『選手が代表資格変更を希望する国で生まれている、または親や祖父母のうち誰かがその国で生まれていること』という条件を満たせば、2か国目の代表選手となることができるようになった。
2019年ワールドカップ(以下、W杯)のイングランド戦(19月19日)を最後にオーストラリア代表としての出場がないリアリーファノは、それらの条件を満たし、サモア代表として出場することが可能になった。
試合前のナショナルアンセム時には感極まった表情を見せた。
2016年には白血病の診断を受けて苦しんだ過去がある。
妹からの骨髄移植を受けるなど約1年間の闘病生活を経て戦列に復帰。人生にはいろいろある。
35歳になって、あらためてサモア代表として国際舞台を踏むことができた。心が震えた。
今回の日本代表戦、リアリーファノは80分ピッチに立ち続け、落ち着いたゲームメークを見せた。
接戦の中、司令塔としてチームを勝利に導いたことはさすがだった。
キックも冴えた。3つのコンバージョンキックと1つのPGを成功させる。
プレースキックは100パーセントの成功率で9得点。チームへの貢献は大きかった。
試合後、サモア代表初キャップの感想を問われたリアリーファノは、「言葉にし難い気持ちです。(多くの)祝福を受け、特別な気分。家族、国を代表してプレーできたことを誇りに思う」と胸中を言葉にした。
若手も多いチームの中で、自身の持っているものをシェアしてきた。
「経験を(周囲に)伝えようとしています。試合の中の瞬間、瞬間にやるべきことや、日々の準備の必要性、マッチデーの過ごし方。自分の経験、知識をもとに伝えようと思ってきました」と話した。
セイララ・マプスア ヘッドコーチが、経験豊富な男の存在が、周囲にどれだけの影響を与えているか話した。
「若い選手たちは(経験ある選手たちの)言葉を聞くだけでなく、言った本人がどういう行動をしているかを見ています。クリスチャンは、テストマッチの準備をどうするかを示してくれました」
指揮官は続けて、「日々いい習慣を重ね、いい選択をしていくことが必要です。それを実行することで、土曜日(試合日)にいいパフォーマンスができる」と言った。
「チームの外にいる人たちは試合の80分のことしか分からないと思いますが、毎日をクリスチャンらと過ごすことで、どれたけ影響があるか。彼はチームにインパクトを与え、本当にオープンマインドで経験をシェアしてくれる。そして何より、彼が自分自身を成長させるため、学び続ける姿勢を見せてくれているところが素晴らしい」
サモア代表にはリアリーファノ以外にも、同じような経験を持つ選手たちがいる。
日本戦に後半13分から出場したPRチャーリー・ファウムイナもその一人で、ニュージーランド代表キャップ50を持っている。
W杯スコッドには、他にも強豪国キャップホルダーが加わるだろう。
日本代表と同じプールDで戦うライバルの進化は、この先も続きそうだ。