フランスでは、7月14日は1789年のフランス革命のバスティーユ奪取を記念する国の祭日である。前夜には各地で花火大会がおこなわれ、当日はパリのシャンゼリゼ通りで大統領臨席のもと大規模な軍事パレードもあり、上空には赤、白、青の三色旗がフランス空軍のアクロバットチームにより描かれ盛大に祝われる。
また、この日から夏のバカンスが本格的に始まり、フランス中がお祭りムードに包まれる。
この7月14日に、U20フランス代表はワールドラグビーU20チャンピオンシップで優勝し3連覇を達成した。ラグビーファンにはさらにめでたい日となった。
準決勝のイングランド戦では、開始15分で0-17とリードされたが、「前半は風下だったからなんとかしのぐことを考えていた。取られたトライも自分たちのミスが原因だったからハーフタイムも落ち着いていた。勝てると信じていた。僕たちの多くはプロの試合に出場していて、こういう状況も経験している。試合は80分続く、10分で終わりじゃないということがわかっていた」と、試合後、キャプテンのレニ・ヌシが振り返った。
最終的に7トライ(1つはペナルティトライ)をあげ、52-31で勝利し決勝へ進んだ。今大会のプール戦3試合で毎回2枚のカードを出されていたが、それも修正できた。
決勝の相手のアイルランドとは、2月のU20シックスネーションズでも接戦だった。78分に敵にペナルティを与え31-33と逆転され、その後80分に敵ゴール前のラインアウトを得たが、タイミングが合わず敵にボールが渡り、試合が終わった。
この決勝前の練習でコーチが「精度、コントロール、そして自由」と言っていた。まさにその通りのプレーを選手たちは披露し、後半はもう手がつけられない状態で、50-14と大差での勝利となった。
「ポイントは、プールステージのNZ戦でしっかり勝てたことだった。難しい試合だったが、選手はとてつもないパフォーマンスをしてくれた。そのおかげで次のウェールズ戦でメンバーをローテーションさせることができ、決勝トーナメントで主力がフレッシュな状態で連戦できた」とセバスチャン・カルヴェ ヘッドコーチ(以後、HC)が試合後の会見で述べた。
また、フランスの選手はU20シックスネーションズの後、それぞれのクラブのプロチームの試合でプレーを続け経験を積んだことも選手を成長させた。シックスネーションズでは副キャプテンでもなかったヌシを今大会のキャプテンに選んだのは、「トップ14で連戦して自信をつけたから」とカルヴェHCは説明していた。
「才能溢れる選手たちにプレー時間を与えることで、優勝に貢献してくれたすべてのクラブのHCに感謝する。若い選手たちを信頼してくれたことに感謝し、またこれからも彼らを信頼し続けてほしい。彼らは外国人選手に劣らない。彼らがフランスラグビーの未来なのだ」とカルヴェHCは呼びかける。
今大会の最優秀選手に選ばれたNO8のマルコ・ガゾッティ(18歳)は、所属クラブのグルノーブル(2部リーグ)で昨年10月にプロデビューを果たした。パワフルでランのセンスもあり、また周囲を生かすこともできる。今大会でも豊富な運動量でグラウンドのあちこちに現れ、ボールを持って前進し、3トライあげている。
ガゾッティはコロナ禍で試合がなかった期間を利用して、徹底的に身体を作り、1年で12キロ増やした。現在は192センチ、110キロになっている。
ラグビーだけではなく、勉強も怠らない。現在、大学で経済・経営学を学んでいる。
LNR(プロリーグ運営団体)もプロクラブも、現役引退後、また負傷などで突然引退を余儀なくされた場合にも、選手が困ることがないように選手の学業、職業訓練を奨励している。フランスラグビー協会からメディアに提供されるU20フランス代表の30人の選手を紹介するガイドブックには、選手の身長、体重、出身クラブとともに、学業についての欄もあり、ビジネススクールでマネージメントを学ぶ者、土木工学を専攻する者、また体育教師の資格コース、スポーツクラブのコーチの国家資格コースなどさまざまである。
彼らの先輩のアントワンヌ・デュポンも、トゥールーズで毎週試合に出ながら、スポーツマネージメントのマスターを取得した。
プロ選手という意識が選手に浸透するにつれ、アフターラグビーのことを早くから考えるようになってきているようだが、両立するには相当な意志の強さが求められる。
そのガイドブックによると、「ラグビーでの最高の思い出は?」という質問に、ガゾッティは「今季の(2部リーグの)準決勝での勝利」と答えているが、今なら「世界チャンピオンになったこと!」と答えるだろう。
「僕たちは、僕たちの歴史を作った。このチームができた時から『最後まで行くぞ』と言い合ってきて、それが実現した。僕たちの優勝がフランス代表に良い影響を与えてくれて彼らもワールドカップで優勝できれば、フランスラグビーにとって完璧だ」と言う。
フランスのラグビーファン、みんながそれを期待している。