ナイトア・アクオイは、「暑い、暑い」と笑顔で何度も繰り返した。
23歳のLOは、196センチ、116キロの体躯を誇り、大きな可能性を秘めている。
7月8日、秩父宮ラグビー場でおこなわれるジャパンXV戦で、オールブラックスXVの4番を任されている。
試合前日の練習を終えたアクオイは報道陣の前に姿を現すと、「すごく暑い。皆さんが服を着ているのが信じられない」と、陽気に話した。
自身は来日後1週間の滞在の間に、「慣れてきた」という。
アクオイは2020シーズンにチーフスでスーパーラグビーデビューを果たし、以来、49キャップを重ねている。
チーフスにはブロディー・レタリック、トゥポウ・ヴァアイというオールブラックスのLOたちがいるためベンチスタートが多い。
しかし今季のスーパーラグビー・パシフィックでは15戦に出場し、クルセイダーズとのファイナルにも出場した。
オールブラックスXVは、全員が正代表のすぐ下のレベルの力を持つ。9月開幕のワールドカップへの出場を狙っている。
アクオイは、今回の日本ツアーを「すごくいいチャンス」と感じている。
「オールブラックスではない選手たちが手を挙げて、自分の存在を見せる。以前代表にいて、カムバックしたい人もいる。いい競争ができています」
個々が自身の能力をアピールしながらも、チームの勝利のために貢献する集団だ。
その中に身を置いてアクオイは、「すごく楽しい」と話す。
「暑い中で、強度の高い、ハードトレーニングを積んでいます。オールブラックスの経験がある選手たちは、その知見をシェアしてくれる。自分のような若い選手にとって貴重な時間です」
自身の強みを「ハードワーク。暑い中でもタックルをするし、ラインアウトの空中戦でも活躍したい」と話す男は、「いいラグビーをできる自信はある。楽しむ」と気持ちを口にした。
「日本はすごくいいチーム。長く合宿をしてきているし、優れたコーチ陣もいます。選手一人ひとりのことは詳しく知りませんが、ワールドカップへ向けていい準備をしている。タフマッチになるでしょう」
14番を背に、WTBで先発するベイリン・サリヴァンも22歳と若い選手だ。
187センチ、89キロと大柄で、ハリケーンズに所属。チーフス時代の4季とハリケーンズでの2季で、計26キャップの経験がある。
サリヴァンもジャパンXVを警戒する。「十分なトレーニングを積んできているし、一体感があり、ハードワーカー揃い。軽く見ることはできない相手です。我々のやれることすべてをやる」と話す。
秩父宮ラグビー場は、サリヴァンにとって思い出の地だ。
2018年、チーフスでスーパーラグビーデビューを飾った試合が、同スタジアムでのサンウルブズ戦。後半15分からピッチに立ち、61-10と大勝したチームに貢献した。
まだ19歳だった。
「強さが武器」と言うウインガーは、今回のチャンスをものにしたいと気合十分だ。「自分を思い切って表現したい」と話す。
昨秋もオールブラックスXVに選ばれ、ヨーロッパ遠征に参加した。そのチームからは正代表にステップアップした選手もいる。
その中のひとり、チーフスのFBショーン・スティーブンソンの存在に刺激を受けたそうだ。
スティーブンソンは今季のスーパーラグビー・パシフィックでプレーオフを含む17戦に出場し、12トライを奪う活躍を見せた。
まだ万全でないWTBマーク・テレアの代わりではあるが、ザ・ラグビーチャンピオンシップの代表スコッドに加わっている。
「年齢を重ねる中でチャンスをつかみ(スティーブンソンは26歳)、認められる存在となった。自分も続きたい」
一人ひとりの情熱の量は大きい。
W杯へ向かう日本代表にとってオールブラックスXVとの戦いは、2か月後に飛躍するための重要な2戦となる。