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「退任することは確か」。日本代表ジョセフHC決断も、信頼できる選手たちと「W杯で勝つ」

2023.07.06

宮崎の新トレーニング施設については「世界トップクラス」と話したジョセフHC。(撮影/松本かおり)



 雨の予報がはずれ、曇り空。蒸し暑かったが、グラウンドのまわりでは533人のファンが選手たちのトレーニングを見つめた。

 7月5日、日本代表の宮崎合宿が報道陣とファンに公開された。
 チームは千葉・浦安から宮崎に場所を移し、9月に開幕するワールドカップ(以下、W杯)への準備を進めている。

 7月8日には、大会に向けてチーム力を高める機会となる、国内での5試合のシリーズが始まる。
 初戦の相手はオールブラックスXV。日本側もジャパンXVで戦うが、ハードトレーニングの積み重ねで疲労が残っている状態で挑むこと以外は、テストマッチとなんら変わりはない。

 選手たちが「これまででいちばんキツい」と漏らした浦安でおこなったような練習の過酷さではなくなり、ここからは、試合を戦う準備もしながら鍛錬を続ける。
 今週の月曜から宮崎であらためて動き始めた選手たちの動きを見て、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(以下、HC)は「いいスタートができている」と明るい表情だった。

「浦安では重要な時間を過ごしました。フィジカル、メンタルの強化は、W杯に向けてチャレンジすべき点でした。そのお陰でコンディションも整ってきました」

 選手たちから自信を感じるという。ただ、一人ひとりの理解力は高まってはいても、チーム作りとは時間がかかるものだ。
 W杯まで2か月ある。選手たちとともに、結束力の強い戦闘集団へと成長していくつもりだ。

 数人のリーダーたちを中心に、全員でチーム力を伸ばしている最中の同代表は、まだキャプテンを発表していない。
 昨秋までチームの先頭に立ったHO坂手淳史は、コンディション調整が周囲より遅れている。

 ジョセフHCはそれを踏まえ、「ただ、リーダーシップのある選手に恵まれているチーム」と言う。
「自身4度目のW杯に臨む選手もいますし、(自分が)在任中の7、8年でリーダーの育成もできたと感じています」

 今年のチームについては、複数キャプテン制を敷く可能性もある。
「スタメンのゲームキャプテンが必ずしも80分間出場するわけではない現代ラグビーにおいて、メンバー内に複数のリーダーがいることはチームにとって好ましいこと」と考えるからだ。

「特に試合で最もプレッシャーのかかる終盤に、スタメンのキャプテンが仮に交代でいなくても、(複数キャプテン制なら)他のリーダーがリードしてくれるでしょう」

 7月8日のオールブラックスXV戦では、FL/NO8のリーチ マイケルとSH流大を共同キャプテンに指名し、リーチがゲームキャプテンを務める。
 少なくとも国内の5試合では、同様のスタイルがとられそうだ。ジョセフHCは、「試合最終盤に誰がフィールドにいるかを考えながら選手を起用(リーダー指名)する」と話した。

 この日は、先に報道された自身の去就についても触れ、「退任することは確かです。日本での時間は素晴らしいものでした。誰か別の人に道を譲る良いタイミングだと感じています。家族との時間も作りたい。ただ、日本が大好きなので、また帰ってきます。これは確か」と話した。

 大勝負を前に退任を決めても、心は乱れない。「影響はありません。自分の仕事をやるだけ。優先順位はW杯で勝つことが一番、というより唯一。このチームを率いることが今の自分の責務だと理解しています」と言う。

「世界でもトップクラスのハードワークができる選手たちが揃っているのは幸運です」と続けた。

「日本はティア1(最上位国グループ)ではないかもしれませんが、選手たち自身、そして彼らの取り組む姿勢に大きな愛情を感じます。選手たちはお金のために戦うのではなく、プロとして誇りを持ってティア1を含む世界の強豪と戦っています」

 W杯という険しい山の頂上を、信頼できる仲間たちと目指す気持ちはぶれない。
 リーチ マイケルは、好結果で指揮官を送り出したいと話した。


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