4年ぶりの開催となった「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」。フランスは初戦の相手、日本を75-12と圧倒して3連覇への意気込みを見せた。
このチームにはすでにトップ14やプロD2(ディビジョン2)で馴染みの顔がいくつも見られる。
中でも、この試合で背番号9をつけていたピンクのヘッドキャップのバティスト・ジョノーは今季クレルモンで30試合、特に今年に入ってからはほぼスタメンで出場し、プレー時間は1000分を超えた。
「彼はすごい選手になると思う。自分の芯を持っているし、自分のやりたいことをしっかりフィールドで出すことができ、チームに勢いをつける素質がある。一味違う感じ。まだ小さいけどデュポンみたいな感じで積極的にアタックし、ディフェンスもどんどん行く。かなりいい選手になっていくと思う」とかつてのチームメイトの松島幸太朗のお墨付きである。
フランス国内では『デュポンの後継者』という声も聞かれる。
他にも、キャプテンの6.ヌシ(モンペリエ)、4.オラドゥ(ポー)、12.ドゥポルテール(ボルドー)、14.ドゥルエ(2部・プロヴァンス)、15.フェルテ(ブリーヴ)、21.カルボノー(ブリーヴ)らがプロのレベルで10試合以上経験を積んでいる。
彼ら以外の選手も、所属クラブのエスポワール(アカデミー)に所属しながらも日常的にプロチームと練習をしており、強度もスピードもプロのレベルを経験している。
また、フランスU20代表は代表合宿期間中、フランス正代表のゲーム形式の練習のスパーリングパートナーを務める。フルコンタクトの強度の高い練習だ。
ここで、テストマッチレベルを身をもって学んでいる。
「ファビアン・ガルチエ体制になってから、正代表とU20の間がオープンになり、合同練習もある。これは僕たちにとって大きなチャンス。代表チームは強度も高くスピードもあるが、僕たちがしていることと共通していることも多くある」と言っていたのは、正代表の大会と並行して行われた今年のU20シックスネーションズで、フランスU20のキャプテンを務めていたCTBエミリアン・ガイユトンだ。
U20代表ヘッドコーチ(以下HC)のセバスチャン・カルヴェは「フランス代表と若いカテゴリー代表の間に、強い関係が築かれている。私たちはフランス代表のプレーをU20の選手に合わせながら最大限落とし込み、同じラグビーをしている。だから合同練習をしても選手が戸惑うこともなく、理想的な条件で高いレベルの大会に向けての準備をすることができる」と、代表チームのスタッフとのコラボレーションを高く評価している。
ところで、前述のガイユトンは所属クラブのポーで今季24試合に出場し、14トライ。トップ14のトライ王となった。
今大会でもチームをリードしてくれることが期待されていたが、代表チームのワールドカップ準備合宿の参加メンバーに選ばれた。同じくU20の主力であったFB/WTBのルイ・ビエル=ビアレもボルドーで連戦し、ミディ・オランピック紙が選ぶ今季の新人賞を獲得する活躍で代表チームの合宿に招集された。
「2人はこのチームのXファクター。このチームにほしい選手だが、U20の目標は代表チームに選ばれる選手を育てることで、これは喜ばしいこと。2人がいなくても世界チャンピオンの座を勝ち取りに行くチャレンジができるチームだ」とU20のカルヴェHCはチームの力を信じる。
6月29日のNZ戦のメンバーが発表された。
3、5、7とスクラムの右側が代わったが、大きな変更は見られない。第1戦の日本戦と第2戦のNZ戦に照準を合わせてベストメンバーを揃えてくるだろうという現地メディアの予想通りとなった。
5番には、ビザ申請の書類が間に合わず、チームに遅れて合流したポソロ・トゥイランギが入った。
父のヘンリー・トゥイランギがプレーしたペルピニャンで今季トップ14デビューし、192センチ、145キロの巨体。父譲りの爆発的なパワーを持ち、敵チームの選手を薙ぎ倒していくシーンが何度も見られた。
「トゥイランギという名前を持っている以上、人から期待されるが重荷ではない。自分はラグビーを通してファミリーを代表しているのだと自身に言い聞かせている。この名前を持った偉大な選手が何人もいて、そこに続くことが僕のモチベーション」と18歳のトゥイランギは言う。
「ポソロ(トゥイランギ)は今とてもハングリー。NZとの対戦を前にしてとてもワクワクしている」とカルヴェHCがメンバー発表後の会見で記者に伝えた。
また、「フランスの育成が順調で、競争力のある強化ができていることをこの大会で見せたい」とも指揮官は言う。
このチームにとって初めての南半球のチームとの対戦。注目の一戦だ。