ラグビーリパブリック

日本ラグビー協会「女子ラグビー中長期戦略計画」を発表

2023.04.12

昨年開催の女子W杯で奮闘した女子日本代表 (Photo: Hannah Peters - World Rugby via Getty Images)


 日本ラグビー協会(JRFU)が4月12日、「女子ラグビー中長期戦略計画」を発表した。

 日本女子ラグビー戦略策定の意義としては、JRFUが「JAPAN RUGBY 2050」でターゲットとして掲げる「W杯の日本招致」を達成するため、男子ラグビーの盛り上がりに注力すると同時に、女子ラグビーも競技として確立する重要性が高まる、などがある。ラグビーW杯の自国招致のために女子独自のターゲット・ミッション・ビジョン策定がキーであり、女子ラグビーは競技を超えた女性の社会モデル輩出をビジョンとして掲げる。

 国際統括団体のワールドラグビーは、女子ラグビーにおける重点領域を定義し、実行に必要なガイドラインを提示しており、日本に対してアジア内でのイニシアチブをとることを期待している。また、女子戦略に従い、パートナー企業を活用し女子ラグビー投資を本格化。各ラグビー協会に対して男子・女子ラグビーを対等に位置づけるように推奨している。

 JRFUは、日本女子ラグビーの現在地を把握するため、協会内部・外部の有識者へインタビュー実施し、現状業務から現状課題を抽出。ヒアリングの結果、「持続的なパスウェイ構築」「女子ラグビーの提供価値を共有する場の提供」「リーダーシップ育成による海外ネットーワークの構築」が課題であると判明した。また、パスウェイ上の課題としては、選手は小学校から高校まで女子ラグビーを継続するための環境が十分に整備されておらず、関係者も引退後、日常的に女子ラグビーに関与できる循環が発生していないという実情もある。
 現在、日本における女子ラグビーの選手登録者数は約5000人だが、年率6.5%で拡大させて2050年に1万人を達成することを目標としている。

 日本女子ラグビー戦略の目指す姿・アクションプランとしては、「JAPAN RUGBY 2050」をベースに、女子ラグビーという競技を通じて日本の女性アスリートのロールモデルを輩出するというビジョンを設定した。
 目標は、「ワールドカップを再び日本に招致し、世界一になる(女子は最短で、2037年)」。
 女子ラグビーの使命は、「生涯に亘って女子ラグビーを日常的に感じ、ウェルビーイングをもたらすラグビーコミュニティの形成」「誰もが個性を発揮し、参加できる社会実現」とし、未来像は「競技で培った『リーダーシップ』を、社会で発揮する女性のロールモデル輩出」「ラグビーを通して多様性の価値を体現・発信する先駆者となる」ことを掲げた。

最高に盛り上がった昨年の女子ラグビーW杯。将来、日本での開催も期待される(Photo: Getty Images)

ラグビーW杯の自国招致のために女子独自のターゲット・ミッション・ビジョン策定がキーであり、女子ラグビーは競技を超えた女性の社会モデル輩出をビジョンとして掲げる

<日本女子ラグビー戦略策定の意義>

■World Rugby(WR)が女子ラグビーの戦略計画を発表し、女子ラグビーの重要性を強調。それに伴い、強豪国のラグビー協会が女子ラグビーの独自戦略・予算を対外的に策定・発信

■WRは直近のワールドカップ開催地を男女同国に選定しており、今後もワールドカップ開催地は男女セットで選定される可能性がある(2027年&29年:オーストラリア男女/2031年&33年:アメリカ男女)

■JRFUが「JAPAN RUGBY2050」でターゲットとして掲げる「W杯の日本招致」を達成するため、男子ラグビーの盛り上がりに注力すると同時に、女子ラグビーも競技として確立する重要性が高まる。日本女子ラグビーが進むべき方向性を定義し、ポジショニングを確立する必要がある

<日本女子ラグビーのターゲット/ミッション/ビジョン>

■日本女子ラグビーにおける課題を抽出するために、JRFU内部の関係者・現役選手・クラブ・海外協会等へのヒアリングをもとに女子ラグビー独自のターゲット・ミッション・ビジョンを選定

■女子ラグビーのターゲット
・ワールドカップを再び日本に招致し世界一になる(ジャパンラグビー2050同様)

■女子ラグビーのミッション
・生涯に亘って女子ラグビーを日常的に感じ、ウェルビーイングをもたらすラグビーコミュニティ形成
・誰もが個性を発揮し、参加できる社会実現

■女子ラグビーのビジョン
・競技で培ったリーダーシップを、社会で発揮する女性のロールモデル輩出
・ラグビーを通して多様性の価値を体現・発信する先駆者となる

女子ラグビーの提供価値を可視化・共有・発信する場であるコミュニティ形成がビジョン実現において重要である。

<日本女子ラグビーの重点領域>

■定義したターゲット・ミッション・ビジョンを実現するための重点領域を以下の3つと設定

(1)持続的なパスウェイ構築
・いつでも・どこでも・誰でもラグビーに携わる環境を整備
・女子ラグビーへ関与し続けることによるウェルビーイング向上につながる循環サイクル実現

(2)女子ラグビーコミュニティ構築
・女子ラグビーの存在意義を顕在化させる「場」の提供
・コミュニティ内では、女子ラグビーの価値を共有・発信

(3)リーダーシップの育成
• 女子ラグビーという競技を通じてリーダーシップを体得
• グローバルな視点を保有する人材輩出に貢献し、女性の社会進出のフロントランナーへ成長


◆女子ラグビー中長期戦略計画の位置づけ 全体像

本戦略計画は、「JAPAN RUGBY 2050」をもとに、女子ラグビーが今後の目指すべき方向性とそのアクションプランを示すものである

◆女子ラグビー中長期戦略計画の位置づけ JRFUを取り巻く市場環境

WRが女子ラグビーに対する戦略に応じて、各国の海外協会が女子ラグビー独自の戦略策定と投資計画を発表

◆女子ラグビー中長期戦略計画の位置づけ World Rugbyの女子ラグビーへの取り組み

WRは女子ラグビーにおける重点領域を定義し、実行に必要なガイドラインを提示しており、WRは日本に対してアジア内でのイニシアチブをとることを期待

◆本書の位置づけ World Rugbyの女子ラグビーへの取り組み

WRは女子戦略に従い、パートナー企業を活用し女子ラグビー投資を本格化。各ラグビー協会に対して男子・女子ラグビーを対等に位置づけるように推奨

◆女子ラグビー中長期戦略計画の位置づけ 女子スポーツの市場環境

女子スポーツは近年、視聴者数・入場者数が急増し、欧米を中心に商業化に成功。日本女子ラグビーも提供価値を再定義し価値訴求することが求められる

◆女子ラグビー中長期戦略計画の位置づけ World Rugbyの女子ラグビーへの取り組み

ワールドカップの開催地が男女セットで決定する傾向が続いており、ワールドカップ招致に向けて女子ラグビーの位置づけが重要な選定基準になると推察

◆女子ラグビー中長期戦略計画の位置づけ 日本へのワールドカップ再招致と女子ラグビーの関係性

日本へW杯を再招致するためには、男子ラグビーから女子ラグビーへ盛り上がりを波及させて顧客を誘導させることがかポイントとなる

海外大会で女子セブンズ日本代表を応援するファン(Photo: Mike Lee – KLC fotos for World Rugby)


◆日本女子ラグビーの現状把握 調査概要

日本女子ラグビーの現在地を把握のために、JRFU内部・外部の有識者へインタビュー実施し、現状業務から現状課題を抽出

◆日本女子ラグビーの現状把握 課題一覧

ヒアリングの結果、「持続的なパスウェイ構築」「女子ラグビーの提供価値を共有する場の提供」「リーダーシップ育成による海外ネットーワークの構築」が課題であると判明

◆日本ラグビーの現状把握 パスウェイの課題

選手は小学校から高校まで女子ラグビーを継続するための環境が十分に整備されておらず、関係者も引退後、日常的に女子ラグビーに関与できる循環が発生していない

◆日本女子ラグビーの現状把握 男子ラグビーの提供価値

日本の男子ラグビーは「ダイバーシティ」・「One Team」と標語と共にポジショニングを確立。女子ラグビーのポジショニングを明確にする必要がある

◆日本女子ラグビーの現状把握 女子ラグビーのポジショニング

女子ラグビーは他の女子スポーツと比較し、身体的な強さとリーダーシップ性を保有するユニークなポジショニングに位置付けられており、それらを存在意義・提供価値として打ち出すべきである


◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン 女子独自のミッション・ビジョン

「JAPAN RUGBY 2050」をベースに、女子ラグビーという競技を通じて日本の女性アスリートのロールモデルを輩出するというビジョンを設定

【TARGET(目標)】
ワールドカップを再び日本に招致し、世界一になる(女子は最短で、2037年)

【MISSION(使命)】
ラグビーが、世界一身近にある国へ

〔女子ラグビーのMISSION〕
・生涯に亘って女子ラグビーを日常的に感じ、ウェルビーイングをもたらすラグビーコミュニティの形成
・誰もが個性を発揮し、参加できる社会実現

【VISION(未来像)】
世界のラグビーをリードし、スポーツを越えた社会変革の主体者となる

〔女子ラグビーのVISION〕
・競技で培った「リーダーシップ」を、社会で発揮する女性のロールモデル輩出
・ラグビーを通して多様性の価値を体現・発信する先駆者となる

試合前、アメリカの主将と握手する女子セブンズ日本代表主将の平野優芽
(Photo: Mike Lee – KLC fotos for World Rugby)

◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン 重点領域

女子ラグビーのミッション・ビジョンを実現するために、WRの重点領域に合致する以下の3点を重点領域として設定

1.持続的なパスウェイの構築
・いつでも、どこでも、誰でもラグビーに携わることができる環境を整備し、競技団体としての核を構築
・女子ラグビーへ人々が持続的に関与することで、関与する人々のウェルビーイング向上に貢献

2.女子ラグビーのコミュニティ(女子ラグビー関係者が女子ラグビーのミッション・ビジョン・バリューを共有・発信する空間)構築
・女子ラグビーが保有する存在意義・提供価値が集約し、顕在化させる
・女子ラグビーに関わる全てのステークホルダーが女子ラグビーの価値を共有し、その価値を発信

3.リーダーシップ育成
・女子ラグビーに関わる全てのステークホルダーが競技を通じてリーダーシップを体得
・グローバルな視点をもつ人材輩出に貢献し、JRFUが女性の社会進出を体現するフロントランナーへ成長

◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン 重点領域

パスウェイ構築は都道府県協会・クラブとコミュニケーションを行い、女子コミュニティとリーダーシッププログラムは実施内容の精緻化がファーストステップ

【パスウェイ構築】
<普及>
・各都道府県で定期的な拠点活動の実施
・女性のRegional Development Officerの配置

<育成>
・各9ブロックへのコーチ派遣、タレント発掘の実施
・コーチインターン制度の導入

<強化>
・競技レベルが均衡した国際試合・国内試合の試合数確保
・代表とクラブ間の連携による強化方針の浸透
・エリートレフリー・エリートコーチの育成・強化

【女子コミュニティ構築】
・女子ラグビーに関する情報・コンテンツの発信の強化
・女子ラグビーコミュニティ活動の活性化によるメンバー・パートナーの拡大

【リーダーシップ育成】
・海外ネットワークを構築するために必要な英語教育支援
・既存のリーダーシッププログラムの活用/ラグビーを通したリーダーシッププログラムの開発

◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン 重点領域

持続的なパスウェイと女子ラグビーの提供価値を共有できるコミュニティを構築し、女性のロールモデルを社会に輩出するミッションを実現

◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン 重点領域とKPIの関係性

3点の重点領域は以下4カテゴリで定義される女子ラグビー関係者数で達成度を測定

◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン KPI

女子ラグビーの選手登録者数を年率6.5%で拡大させて2050年に1万人を達成

◆日本女子ラグビー戦略の目指す姿/アクションプラン 重点領域のロードマップ・アクションプラン

女子ラグビーの提供価値を浸透・確立し、女子ラグビーというスポーツ競技の枠を超えた女子スポーツコミュニティ形成に貢献する競技団体へ成長

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