フランス代表SHアントワンヌ・デュポンが、シックスネーションズ2023の最優秀選手に選ばれた。
デュポンの受賞は、2020年、2022年に続いて今回で3度目となり、過去に3度受賞したのは、アイルランドのレジェンド、ブライアン・オドリスコル(2006、2007、2009年)のみ。デュポンはまだ26歳。ラグビー選手のキャリアとしては、中盤に差し掛かったばかりでこの記録に追いついた。
現地ラグビーサイト『ラグビーラマ(Rugbyrama)』に受賞したばかりのデュポンのインタビューが掲載された。
キャプテンとしての会見以外でデュポンの談話が掲載されることが最近はレアになっている。せっかくの機会なので紹介したい。
今回の受賞について、「もちろん嬉しいし、誇りに思う。たとえ個人的な賞よりもチームの優勝を望んでいたとしても。フランス代表は2位で終えたが、最後の2試合のイングランド戦とウエールズ戦はいいゲームができた。この賞はチームに対する賞。今後の励みになる。この受賞はチームメイト、スタッフ、サポーターのおかげ。感謝している」と話した。
今回のシックスネーションズを振り返る。
「ポジティブなことが多くある。第2節でアイルランドに敗れた後、チームの誰もが連覇は難しいと認識していた。アイルランドがあのあとの試合で負けるとは思えなかった。だから僕たちは自分たちのことに集中し、残り3試合すべてに勝つと決め、実際に勝つことができた。今大会は出だしが悪かったから、良い終わり方をすることが絶対に必要だった。最後の3試合は内容も良かった」
トゥイッケナムでイングランドに53-10で勝利し、歴史的な快挙を成し遂げたことについては、「あまり実感がない。試合前に『こんな勝ち方をするよ』と言われていたとしても、信じられなかったと思う。実際、試合を戦った僕たちにはまだピンと来ていない。現役を引退した後、みんなでビールを飲みながら思い出して誇りに思うだろう」と言う。
2018年のシックスネーションズ以来、初めてデュポン自身のトライがない大会になった。しかしトライアシストが4回で大会最多。今回の受賞は、これまでの個人技に対する評価から、チームを生かすプレーに対する評価になってきたということか?
「確かにデビュー当時の自分のプレーから進化させてきたが、チームの変化も背景にはある。大会が進むにつれて、新しい攻撃の鍵や方法が見つかり、様々な方法で多くのトライを挙げることができた。これは本当にポジティブなこと。周りの選手がトライしてくれれば、僕にはとても好都合」
他チームからのマークがどんどん厳しくなっている。
「自分のプレーのバリエーションを増やし、また的確な判断力も求められた。無駄なコンタクトも避けるようにした。スコットランド戦ではコンタクトがひとつも無かった。そんなことは久しぶり。今までとは違う役割をプレーしているけど、パフォーマンスは出せている。年齢を重ねて、もしかしたら成熟してきたのかな(笑)」
次にフランス代表チームが集合するのはワールドカップ(以下、W杯)の準備合宿となる。
「最終節のウエールズ戦を前にして、この試合がW杯モードに入る前の最後の試合になるということは誰もが頭の片隅で思っていた。自国開催のW杯を経験できる。しかもチームは好調。一生の出来事になる。これからあっという間に時間が過ぎるだろうけど、ずっとその時を待っていたから、むしろ待ち遠しい」
W杯が待ち遠しい。しかし、その前にトゥールーズでトップ14とチャンピオンズカップの2つのタイトルを狙う。
今週末はチャンピオンズカップのファイナルステージに突入し、南アフリカのブルズと対戦する(4月2日)。これに勝利すればシャークス(南アフリカ)とマンスター(アイルランド)の勝者との準々決勝に進出できる。その先には、レンスター、アルスター(どちらもアイルランド)、レスター(イングランド)、エディンバラ(スコットランド)の勝者と準決勝で当たる。
難敵との戦いが続く。だからこそデュポンはさらに進化していく。