2週間の休みを挟んで再開されたトップ14の第21節(3月26日、27日)はダービーマッチで盛り上がった。
ダービーと言っても、スタッド・フランセとラシン92以外は、同じ地域に複数のクラブがあるわけではない。できるだけ近隣のクラブ同士を組み合わせる。
例えば、フランスの地図を縦半分に分けて東側に位置するリヨンとトゥーロンが対戦するが、両都市は400キロを隔てる。しかしダービーなのだ。
ダービーマッチをさらに盛り上げようと、大西洋ダービーでラ・ロシェルを迎えるボルドーは、約3万5千人収容のホームのスタッド・シャバン・デルマスから、半年後のワールドカップの会場にもなっているマトムット・アトランティックに会場を移し、4万2115枚のチケットを完売した。
またバイヨンヌは、国境を超えてスペイン、サン・セバスチャンのサッカーチーム、レアル・ソシエダのホームグラウンドであるエスタディオ・アノエタに会場を移してポーを迎えた。
国境を跨いでも同じバスク地方で距離にして約50キロ。バイヨンヌは過去にもアノエタで試合をホストしており、今回は9年ぶりの帰還となった。
収容規模が大きなスタジアムに会場を移して試合をホストする例は、ダービーマッチ以外でもよく見られる。
トゥーロンは毎年4月下旬にマルセイユのスタッド・ヴェロドロームでトゥールーズとのホームゲームをおこなっている。昨年はフランス代表がシックスネーションズで全勝優勝したあとで、トゥールーズに所属する代表選手が見られるということもあり、6万4805人を集客した。
今年のトップ14のスケジュールでは、代表選手が不在のシックスネーションズの期間中にトゥールーズとの対戦が組まれた。それでも4万3000人を集めた。
今週末、トゥールーズは欧州チャンピオンズカップで南アフリカのブルズを、スタジアム・ドゥ・トゥールーズで迎える(4月2日)。昨秋のフランス代表×日本代表の会場である。
いつもより大きな会場で、より多くの観客を集めて試合をするのは、経済効果を狙うだけではない。選手たちにとっても特別な1日となり、モチベーションが高まる。
ラシン92のように、ホームのパリ・ラ・デファンス・アリーナがコンサートで使用されるため、ホームから200キロ離れたフランス北部のランスやル・アーヴルに会場を移して試合が開催される例もある。
バイヨンヌの今回のアノエタでのホームゲームは、3万8645席が完売となった。興行的には成功である。
「いい選手をリクルートするためにも、しっかりとクラブの経済を築いていかなければならない。今回のアノエタのような取り組みは、クラブの財政にとてもポジティブ。また、多くのメディアに取り上げられ、バスク地方以外でも予想以上の反響を呼んだ。このような活動を続けていくことで、新たなスポンサーを惹きつけることができる」と語るのはフィリップ・タイエブ会長だ。
しかし、このスタジアムはバイヨンヌの選手にとって未知の世界だった。
また多くの選手は、4万人という観衆の前で試合をした経験が無い。クラブとサポーターの期待を背負い固くなってしまったのか、試合では彼ららしくないミスを繰り返した。
一方、対戦相手のポーはアノエタの雰囲気に慣れるため、YouTubeで見つけたスタジアムの音源を大音響で聞きながら練習してきた。
残留のために絶対に勝たねばならなかったポーの選手たちは、「ゲームプランを完璧に遂行した」(ポー、セバスチャン・ピケロニ ヘッドコーチ)。バイヨンヌのために用意された大舞台で今季最高の試合をし、30-20と勝利を掴み取った。
ピケロニHCは、「今日はバイヨンヌの祭りだったが、ただの招待客で終わるのではなく、私たちも祭りに参加したかった。この勝利で降格ゾーンから抜け出せた。しかし、サバイバルモードであることは変わらない。この状況では、ただ耐え忍んで奇跡が起こるのを待つか、立ち上がってチャレンジし、ラグビーをするかのどちらか。私たちは見る人に喜んでもらえるラグビーがしたい」と試合後に話した。
残すところ5節。残留をかけて、またプレーオフ進出をめぐって、熾烈な戦いが続く。
トゥーロンもリヨンに勝って6位に浮上。ラシン92もスタッド・フランセに勝利して7位につけた。
現在首位のトゥールーズと2位のラ・ロシェル以外は混戦状態だ。
6月9、10日のトップ14の準決勝、どのチームがアノエタの芝生を踏むことになるのだろうか。