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フランスの名門・トゥーロンを現地取材 オリヴォン「ここでプレーできることは特権」

2022.12.20

トゥーロンのクラブハウス 🄫Rugby Club Toulonnais


 フランス国内リーグ『トップ14』第12節のラシン92戦の準備をしているトゥーロンの練習を訪れた。ベルナール・ルメートル会長が私費を投じて新しく建てられたクラブハウスがすばらしい。人工芝の屋根付きグラウンドを囲んだコの字型の構造で、一方の「プロ」のゾーンにはウェイトルーム、メディカルルーム、交代浴ができるプール、クリオテラピー、ミーティングルーム、食堂、選手の休憩場などが集約されている。とても機能的だ。グラウンドを挟んで向かい側には「エスポワール(アカデミー)」用の施設になっており、「プロを見ながら『いつかはあちらに行くぞ』と思いながら練習するのだ」と案内してくれたプレス担当者が話してくれた。

 練習後、トゥーロン、そしてフランス代表のキャプテンであるFLシャルル・オリヴォンに話を聞くことができた。代表選手の多くは、11月20日の日本戦のあと1週間の休暇を与えられているが、チームの状況によってはオリヴォンのように連戦している選手もいる。

「代表試合からクラブの試合に切り替えるのは簡単なことではない。まず心身ともにしっかりリカバリーしなければならない。そしてチームとの最初の練習でチームメイトやスタッフとコネクトし直す。僕が代表に行っている間もチームメイトは戦っていた。これもモチベーションになる」

シャルル・オリヴォン。写真は10月のブリーヴ戦から 🄫Rugby Club Toulonnais

「試合が続くのは心身ともにシンプルなことではないが、僕も29歳になり自分の限界もわかってきた。自己管理してパフォーマンスを保てるようになってきた。来週は1週間休暇だから、その前に日曜日の試合をチームとしっかり終えたい」と話す。

「昨季よりチームの状況は良くなっている。すばらしい施設でトレーニングできて僕たちは恵まれている。すばらしいサポーターもいる。またトゥーロンは晴れの日が多く、気候も温暖で生活するにもすばらしい場所。ここでプレーできることは特権だ」

 入団して8年目、彼のトゥーロン愛は変わらない。

 フランス南東部、地中海に面したトゥーロンは港町。ビーチもあり夏は観光客であふれ、夜遅くまで街中や海沿いのレストランやクラブが賑わい眠らない街になる。しかし、冬はディナー営業をしない飲食店も多く、19時を過ぎると冬眠してしまったかのように静まり返る。

 試合当日、21時キックオフなので駅前のホテルを19時過ぎに出発した。クリスマスマーケットがおこなわれているリベルテ広場を通り過ぎ市街地に入ると、店は閉まっているし人も歩いていない。しかもこの日は日曜日。翌日から始まる新しい1週間に向けて自宅で静かに過ごす人が多いのはどこの国も同じである。

 トップ14では毎週日曜日の21時に1試合組まれる。テレビ放映局のカナル・プリュスの意向である。視聴率を集めやすいクラブがよく選ばれる。今季12節でトゥーロンはホーム、アウェー含めて6回、トゥールーズとラ・ロシェルが4回、ボルドーが3回、モンペリエ、クレルモン、リヨンが2回、ラシン92が1回、他のクラブは当たっていない。クラブにとっては集客しやすい土曜日、せめて日曜日の日中に試合をしたいところだ。サポーターも同じことを望んでいる。

 スタジアムに近づくにつれ、トゥーロンのエンブレムのついたウェアやニット帽を身につけた人が少しずつ見られるようになってきた。歩き始めて20分ほどでスタジアムに到着。トゥーロンの選手のバスが到着するまでにまだ20分あるが、すでに50メートル足らずの花道ができていた。日曜日の夜ということもあり子ども連れの家族は少ない。

 バスが到着した。歓声が上がる。拍手で選手を迎える。この日のファンのお目当ては週の初めにチームに合流したウェールズ代表SOダン・ビガーだ。本来は試合メンバーのみがチームバスに乗ってスタジアムに到着するのだが、この試合の前にお披露目がおこなわれたためビガーも同乗してきていた。

会場入りしたダン・ビガーを出迎えるファン(撮影:福本美由紀)

 スタジアム内をカモメが舞う。ファンクラブが80分通して声援を送り続ける。

 トゥーロンはオリヴォンが不在の間に2連敗したあと、前節のアウェーでのスタッド・フランセ戦で逆転勝ちし、ようやく調子が出てきたかと期待されていた。一方、ラシン92は次週から始まるハイネケン・チャンピオンズカップで、アイルランド代表で居並ぶ強豪レンスターを迎えるため主力を温存してきた。多くの人がトゥーロンの勝利を予想していた。もしかしたらトゥーロンの選手もそう思ってしまったのかもしれない。

 しかしその予想は覆された。14-31でトゥーロンは敗れた。試合後の会見でピエール・ミニョニHCが「モンペリエ戦で大敗して、スタッド・フランセ戦で立て直した。そして今日また逆戻り。正常じゃない。相手よりハングリーでなければ勝つことはできない。今夜、ラシン92の気持ちはすでに来週のチャンピオンズカップにあったかもしれない。でも試合に出ていた選手はハングリーだった。チームメイトのために戦わなければならないのに、戦うふりをしているだけの選手がいる」と落胆といらだちを隠さなかった。

 主力の負傷者も多い(ヴィリエール、バスタロー、グロ、パリセ、コルビ)が、この日はセットピースで苦戦した。またトゥーロンには本職のSOがイハイア・ウエストしかいなかった。この日は負傷していたため本来CTBの選手が10番でプレーしたが、彼にとっては厳しい試合となった。ビガーへの期待が高まるが、「ダン(ビガー)の周りの選手がしっかり仕事をしなければ彼も何もできない」とミニョニHC。

 パフォーマンスが安定しないもう一つの原因はリーダーシップの弱さと言われている。この日もオリヴォンは最前線で身体を張って奮闘、最多タックル数でスポンサーが選ぶこの試合のトゥーロンチームの最優秀選手にも選ばれた。しかし疲れも見られた。シーズンはまだ半分に達していない。1週間の休暇で充電する必要がある。

 早めに立て直さなければ、昨年のように降格の危機に直面する厳しい冬になる。

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