ラグビーリパブリック

日本での2シーズンでラグビー愛を思い出した。ネッド・ハニガン[オーストラリアA]

2022.09.30

来年のワールドカップ出場が叶えば初めての大舞台。アピールを重ねたい。(撮影/松本かおり)

明るい性格のナイスガイ。(撮影/松本かおり)



 両WTBのフィリポ・ダウングヌ、スリアシ・ヴニヴァルはフィジアンの強力ランナー。
 FBのジョック・キャンベルも含めて先発のバックスリーは全員レッズで、コンビネーションも良さそうだ。

 代表チーム、ワラビーズの選手層を厚くするオーストラリアA代表。10月1日にジャパンXVと戦うメンバーが9月29日に発表された。
 冒頭のバックスリーをはじめ、強力な布陣を組んでいる。

 先発15人の中には8人のキャップホルダーがいる。FLネッド・ハニガンはキャップ25を持つ。
 27キャップのPRトム・ロバートソンに次ぐ経験値の高さで、練習時から多くの声を発し、リーダーシップを発揮していた。

 ハニガンは2017年にテストマッチデビュー。 2019年こそケガの影響でワールドカップ(以下、W杯)出場を逃すも、2020年にはオールブラックスやアルゼンチンと戦い5キャップを獲得している。
 スーパーラグビーのワラターズでも活躍し、50試合以上の出場経験がある。

 2020-2021年シーズンから2シーズンに渡り、クリタウォーターガッシュ昭島でプレーした。
「日本に戻って来られた。そして、秩父宮ラグビー場でプレーできるのは幸せなこと」と笑うナイスガイは、来日した仲間たちについて「フレッシュな選手たちばかり。できることを出し切る」と話す。
 若いスコッドの中で、キャップホルダーとして集団の先頭に立つ。声を出す。ムードを高めるために明るく振る舞う。

 本人は、「ありのままの自分を見せているだけ」と自然体だ。
「ケイデン・ネヴィル(LO/2キャップ/豊田自動織機にも在籍経験あり)、トム・ロバートソン(PR)とワラビーズのキャップを持ち、いろんな経験をしてきた選手たちが他にもいます」
 一緒になって、国際舞台で戦っていくために必要なことを伝えていく。

 日本での生活を振り返り、「技術うんぬんの前に、ラグビーを楽しむ気持ちがあらためて強くなった」と言う。
「昭島の仲間たちは仕事を終えて練習へやってきて、本当に楽しそうにラグビーの練習に取り組んでいた。その姿を見て、ラグビー愛を思い出したんです。試合の勝ち負けを超えた、ラグビーのいい文化がありました」

 まだ上がったことのない舞台、 W杯への出場を目指し、自分自身も来年へ向かって全力で走る。
 スコッドの中の若手からも、モチベーション高く取り組んでいる様子が伝わってくると笑顔を見せる。
「今回のツアーの結果は、さらに次へつながる。ベストのパフォーマンスを出せるように、(準備段階で)やれることすべてやるのが大事」
 ジャパンXVのバックローは強力。CTBコンビ、カウンターアタックも要注意。初戦に向けて、そんな注意点が頭にあると話した。

 オーストラリアのニューサウスウエールズ州の内陸部、ダッボーの出身。実家は牧場で、牛や馬を放牧している。
 そんな田舎育ちの少年が都会に出たのは高校時代からだ。シドニーにあるセントジョセフカレッジ・ハンターヒルズに進学した。
 ラグビーが扉を開いてくれた。

 幼い頃からワラビーズを夢見て過ごした少年が、その願いを叶えたのは22歳の時だった。
 それから何度も国を代表して戦い、悔しい思いをしたこともあれば、オールブラックスに勝ったこともある。

 以前、そんなラグビーキャリアの中でもっとも強く記憶に刻まれているのは2020年10月18日のオールブラックス戦と話してくれたことがある。7-27と敗れた試合だ。
「脳震とうの影響で前年はプレーできる時間が短く、W杯のメンバーからも外れました。そんな状況からハードワークを重ねて、ふたたびテストマッチの舞台に戻れた。苦しい間に支えてくれた人たちへの感謝を強く感じた試合だったので忘れられません」

 悔しさ。喜び。いろんな感情が自分を強くしてくれた。その経験を若い選手に伝えることが、チームを強くする。
 年齢幅の広いチームには、そんな魅力がある。


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