ラグビーリパブリック

トップ14(フランス)は9月3日。プレシーズンの様子をもとにシーズンプレビュー!

2022.09.02

2021-2022シーズンのファイナル、モンペリエ×カストル。(Getty Images)



 9月3日、トップ14の2022/2023シーズンが開幕する。

 6月初旬にPRO D2で優勝し昇格を決めたバイヨンヌが、7月4日にプレシーズンのトレーニングを開始したのに続き、他のチームもトレーニングを再開、8月1日に昨年度チャンピオンのモンペリエが始動、すべてのチームが新しいシーズンに向かって動き始めた。
 7月に来日していた代表選手たちも8月中旬から各チームに合流した。

 開幕2週間前からは練習試合も行われた。ただ、近年は練習試合の数が少なくなっている。多いチームで2試合。モンペリエ、ラ・ロシェル、トゥールーズなどは1試合しかおこなっていない。

 シーズンが長く試合数が多いこと、GPSなどのデータで選手の状態が把握しやすくなったことに加えて、8月に開催されるスーパーセブンズ(トップ14のクラブ対抗の7人制の大会)で若手選手の成長度合いを見ることができるようになったためではないかと言われている。

スタッド・フランセの上昇はあるか。

 長年クレルモンでプレーし、黄色のジャージーで見慣れたSHモルガン・パラが、スタッド・フランセのピンクのジャージーでプレーする姿にはまだ違和感がある。
 そのスタッド・フランセは練習試合でラ・ロシェルに7-5と僅差ではあるが、勝利した。昨季まで救世主的な存在であったCTBワイセア・ナヤザレヴがトゥーロンに移籍した穴を埋めることは難しいだろうが、パラの経験とリーダーシップで2015年のトップ14優勝以来低迷しているチームを立て直すことができるかが見ものだ。

 また、サラセンズ(イングランド)やイングランド代表でディフェンスコーチだったポール・ガスタードが今季からスタッド・フランセのコーチングスタッフに加入した。
 メンタルが弱いと指摘されているこのチームをガスタードがどう指導するかも注目したい。

 クレルモンでパラとHBを組んできたSOカミーユ・ロペスは、バイヨンヌへ移籍した。ラシン92から移籍してきたSHマキシム・マシュノーとHBを組む。2019年ワールドカップのアメリカ戦以来のことだ。
トップ14残留を目指すバイヨンヌは練習試合2試合に勝利した。特に2試合目はボルドーに25-10で勝利。ロペスのキックと味方のBKを巧みに使うゲームメイクが光った。

 トゥールーズでフランス代表FBメルヴィン・ジャミネとイタリア代表FBアンジュ・カプオッゾが見られるのが新鮮だ。
 トゥーロンとの練習試合で後半から途中出場したジャミネは、得意のロングキックで陣地を挽回。また、敵ゴール前で得たペナルティから味方SHが仕掛けた速攻に素早く反応してトライも決めた。
 トライには繋がらなかったが、カプオッゾもイタリア代表でウエールズに勝利した時のように縦横無尽にグラウンドを駆け巡った。トゥーロンの防御を混乱させた。

 ラ・ロシェルも新加入の選手が充実している。
 日本戦2試合に出場したNO8ヨアン・タンガがラシン92から移籍し、代表チーム活動時同様にグレゴリー・アルドリットとポジション争いをすることになる。SOアントニー・アストイもジュニア時代も含めて10年以上過ごしたポーから移籍して上位チームで切磋琢磨し、ワールドカップスコッド入りを目指す。

 また2021年夏のオーストラリア遠征を最後に代表から遠去かっているWTBテディー・トマもラシン92から移籍した。ボルドーから移籍したCTBウルパノ・セウテニも心強い戦力となるだろう。

賢いリクルートのモンペリエ。

 モンペリエも賢いリクルートをしている。
 トゥーロンで生まれ育ち、トゥーロンのホームスタジアムである「マヨールの子」と言われたSOルイ・カルボネルが加わった。練習試合では、カルボネルが10、イタリア代表SOパオロ・ガルビシが12に入っていた。今後どのような使い方をしていくのか楽しみだ。
 ボルドーから移籍したWTBベン・ラムもすでにチームに馴染んでいる。

 前述のセウテニとラムを失ったボルドーは、フランス代表FL/LOカメロン・ウォキもラシン92へ移籍。その穴を埋めるだけの十分な補強ができていない。

 リヨンもバラシだけでなく、FLコルビー・ファインガア(九州電力キューデンヴォルテクス)、CTBチャーリー・ナタイ(レンスター/アイルランド)と攻守の要になっていた選手を失った。
 また、HCも7年間チームを率いてきたピエール・ミニョニからグザヴィエ・ガルバジョサに代わり、軌道に乗るまで時間が必要だろう。

 ミニョニは、生まれ育ったトゥーロンにディレクター・オブ・ラグビーとして帰還した。昨年10月末からチームを率いてきたフランク・アゼマとコンビを組む。
 カルボネルだけではなく、もう1人のSOアントニー・ベロー(クレルモン)も失い、現在本職のSOはラ・ロシェルから移籍してきたイハイア・ウエストだけ。そのウエストが負傷していたため、練習試合は2試合ともSHバティスト・セランがカバーしていた。

 練習試合も、クレルモンには21-40で負け、トゥールーズ戦では、トゥールーズが2度のシンビンで14人の時間帯があったにも関わらず得点することができず21-31で敗れた。
 フランス代表WTBギャバン・ヴィリエールが出場していなかったとはいえ気になるところだ。

 練習試合1戦目でトゥーロンに快勝したクレルモンは、2戦目はボルドーに14-17と惜敗した。チームの大黒柱だったパラ、ロペスを失い、新しく加入したベローがどれだけゲームコントロールをできるようになるかが鍵になるだろう。

 ラシン92はBKはギャラクシー軍団と言われているが、それに見合う結果が出せていない。多くの選手が流出した割には控えめなリクルートだった。
 来季に照準を合わせているのだろうか。

 以上がリクルートと練習試合からの所感だが、フランスのシーズンは長い。
 昨シーズンのモンペリエ×カストルの決勝を予想した人がどれだけいただろう。今季もどんな展開になるのか楽しみだ。