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崖っぷちのオールブラックス、連敗ストップなるか?

2022.08.12

追い詰められる指揮官、イアン・フォスター。(Getty Images)



 8月6日に開幕したザ・ラグビーチャンピオンシップの初戦でニュージーランド(以下、 NZ)代表、オールブラックスは、南アフリカ代表 、スプリングボックスに10−26で敗れた。
 7月のアイルランド戦での連敗(3テストマッチの初戦に勝った後連敗)と合わせ、オールブラックスはこれで泥沼の3連敗となった。

 その結果を受けNZ国内では、イアン・フォスター ヘッドコーチ(以下、HC)とサム・ケイン主将への批判はさらに過激さを増している。

 南アフリカ戦敗戦後のフィールド上での『Sky Sports NZ』のインタビューで、フォスターHCが発した言葉が荒れるNZ国内をさらに混乱させてしまった。

「今季最大のパフォーマンスだった」
 多くの人がこの言葉の理解に苦しんだ。置かれた状況が分かっているのだろうか?
 エラーが多発した試合後だっただけに、なおさらだ。 
 試合後の正式な会見でも、メディアの前で「改善した点では」とつけ加えたものの同じことを繰り返した。

 アイルランド戦と比べ、ラインアウト、モールのディフェンスなどは確かに改善した。しかし指揮官の言葉は、格下の相手が格上のチーム相手に善戦したときに使う言葉ではないか。「今は強いオールブラックスではないんだ」と自ら認めた瞬間だった。
 ラグビー王国と呼ばれているNZでは、この言葉が火に油を注ぐことになった。メディアの標的になり、各局が大々的にトップニュースで扱った。

▼傷心の中で次の試合に勝てるのか?

 印象的だったのは、南アフリカ戦の入場時にケイン主将を筆頭に、多くの選手が戦う顔ではないように見えた事だ。また、敗戦直後の『Sky Sports NZ』のインタビューでは、主将の唇が震えていた。目を見ると「もうこれ以上は話を聞かないで」と訴えているように感じられた。
 それくらいキャプテンのメンタルは重症に思えてならない。

 南アフリカとの2戦目(8月13日/ヨハネスブルグ)に向けて、キャプテンは自信のあるコメントも発した。しかし、その表情からはとてもそのようには感じ取ることはできなかった。
 他の選手もインタビューに応じるが、キャプテン同様に表情は曇っている。NZメディア、ファンからのプレッシャーをもろに感じているようだ。
 その中で、ボーデン・バレットだけは笑顔でしっかりと話をしていたのが唯一の救いか。


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▼崖っぷちの中でオールブラックスが勝利するには?

 1戦目の南アフリカはミスも少なく、完璧な試合で勝者にふさわしいパフォーマンスをした。2戦目に向けてオールブラックスは、どう修正すべきなのか。

 1戦目は16点差で敗れた。失トライは2つ。
 ひとつ目のトライはハイパントのボールをキャッチできず、こぼれ球を拾われて走られた。ふたつ目は軽率なノックオンがきっかけで取られた。
 いずれのトライもミスから奪われた。相手に崩されて与えたトライではない。この両シーンでの失点は、コンバージョンを入れて14点。これらのミスがなければ2点差となり点数上では対等になる。
 上記を踏まえて改善事項は、大きくわけて2点と見る。

①ハンドリング

 チャンスでノックオン、パスミス、そしてリスクのある場面でのパスからボールを奪われ、のちにドロップゴールを決められるきっかけにもなるなど、オールブラックスのハンドリングエラーが目立った。
 その中でも1戦目の一番の敗因は「ハイパント処理のミス」だろう。8割以上キックボールを確保できてない印象で、テリトリーとポゼッションを同時に奪われる場面が多く見られた。

 昨年の対戦時のハイパント処理の確保もおそらく5割くらいと良くなかったものの、2試合とも接戦に持ち込めていた。そう考えると、フィフティーフィフティー程度なら戦えるということになる。
 南アフリカのキックの精度は高い。空中でコンテストする選手の体の入れ方にも上手さがあった。2戦目もハイパント処理に苦労すると思われるが、その点の改善なしに勝利は難しいだろう。

②ブレイクダウン

 南アフリカのHOマルコム・マークスのジャッカルに何度もやられた。ボールキャリアーへの2人目の寄りが若干遅かった。そこは、ちょっとした意識で修正できるだろう。
 そこが改善できれば初戦より攻撃のチャンスは増える。

 上記を踏まえて勝利するためにもっとも重要になることは、「自信を失ったオールブラックスの選手達が自分達の能力を信じて戦えるか」だ。これに尽きる。
 選手たちはプレッシャーを感じており、本来のプレーとは程遠いパフォーマンスしか発揮できていない。現在の心理状態では勝利は難しいだろう。

 今回の南アフリカ遠征で2連敗となると、国民の怒りが限界に達してHCへのバッシングがこれまで以上になることは間違いない。
 また、いつまでも雲隠れしているNZラグビー協会のマーク・ロビンソンCEOも、いよいよ表に出ざるをえないだろう。

 敵地・エリスパークで6万を超える観衆を前に戦うのは、ただでさえ難しいシチュエーションだ。
 崖っぷちのオールブラックスの復活に期待したい。


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