南半球ラグビー4大強国が戦う「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」は8月6日に開幕する(大会の模様はWOWOWで全12試合独占放送・WOWOWオンデマンドでライブ配信)。2023年ワールドカップに向け、各国強化の土台となるバトルに目を凝らそう。今回は、北半球勢の台頭に抗い切磋琢磨する4チームの立ち位置、横顔を紹介していく。
ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチン、オーストラリアの強豪4か国が南半球最強の座をかけて激突する「ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)」が、8月6日(日本時間8月7日)に開幕する。7月に行われた南北交流のテストマッチシリーズでは北半球勢の充実ぶりが目立っただけに、復権を期す各国の今回のTRCにかける意気込みは強い。それぞれの状況を振り返りながら、大会を展望してみたい。
安定感抜群の南アフリカ。ニュージーランドはどん底から這い上がれるか。
北半球の4か国(イングランド、アイルランド、スコットランド、ウエールズ)が南半球に遠征したこの7月の国際交流は、いずれも同一国同士が3テストを戦う形式で実施された。南半球勢で勝ち越したのは南アフリカ(対ウエールズ/2勝1敗)とアルゼンチン(対スコットランド/2勝1敗)で、ニュージーランドはアイルランドに、オーストラリアはイングランドに、それぞれ1勝2敗で負け越している。この結果、テストシリーズ終了後の世界ランキングではアイルランドが1位に躍進し、南半球勢は南アフリカが3位、ニュージーランドが4位、オーストラリアが6位、アルゼンチンは9位という順になった。
このうちの最上位で、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の優勝国でもある南アフリカ代表スプリングボクスは、ウエールズとの初戦に32-29で競り勝った後、先発14人を入れ替えた第2テストこそ12-13でホームでのウエールズ戦初黒星を喫したものの、第3戦を30-14で制してシリーズ勝ち越しを決めた。
キャプテンのFLシヤ・コリシや横浜キヤノンイーグルス入りが決まったSHファフ・デクラークを筆頭に、2019年W杯の優勝メンバーが数多く残っており、圧倒的なフィジカルをベースにした安定感ある試合運びは今なお健在だ。 FWは「ボム・スコッド」と称されるリザーブメンバーまで含めてインパクト抜群のハードヒッターがひしめき、長く課題とされてきたNO8ドウェイン・フェルミューレンの後継も、ジャスパー・ヴィザでほぼ固まってきた。BKではSOハンドレ・ポラードやダミアン・デアレンデ、ルカニョ・アムのCTBコンビにWTBチェズリン・コルビらお馴染みの顔が並ぶ中、24歳のダミアン・ヴィレムセがFBに定着し、新たな武器となりつつある。
堅い組織防御を軸とする頑健なスタイルで2019年W杯と2020年のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ来征シリーズを制し、ここ数年の国際ラグビー界のトレンドを生み出してきた存在だけに、世界中が今大会での戦いぶりに注目しているだろう。
対照的に2019年のW杯以降、深刻な不振に陥っているのがニュージーランド代表オールブラックスだ。2020年のTRC(南アフリカの欠場で3か国による開催)は優勝したものの、アルゼンチンに初めて敗れる蹉跌を味わい、2021年秋のヨーロッパツアーではアイルランド(20-29)、フランス(25-40)に連敗。本年7月のテストシリーズでもアイルランドに1勝2敗で負け越し、世界ランキングは過去最低の4位にまで下降した。
もっとも、スーパーラグビーは2021年、2022年ともニュージーランド勢が圧倒しており、ラグビー王国の「国力」そのものが大きく衰えたわけではない。ブロディー・レタリック、サム・ホワイトロックの両LOやFL/NO8アーディー・サヴェア、SOボーデンにLO/FLスコット、FBジョーディーのバレット3兄弟など、国際ラグビー界を代表するスターがずらりと並ぶ顔ぶれを見てもそれは明らかだ。わずかなきっかけでチームが急上昇する可能性は十分あり、どん底の状態で迎える今回のTRCは、何かを大きく変える格好の機会ともいえる。イアン・フォスター監督の去就に関する話題も活発化しており、今大会のオールブラックスの結果次第では、今後の世界の流れにも大きな変化が表れるかもしれない。
上昇気配のオーストラリア。チェイカ新HC体制のアルゼンチンも可能性秘める。
評価が難しいのは、2021年のTRCで4勝2敗の2位につけたオーストラリア代表ワラビーズだ。昨秋のテストシリーズは日本代表に32-23で勝利するも、欧州遠征ではスコットランド(13-15)、イングランド(15-32)、ウエールズ(28-29)に3連敗。今年7月の南北交流の初戦で豪州出身のエディー・ジョーンズ監督率いるイングランド相手の連敗を8で止めたものの(30-28)、第2戦(17-25)、第3戦(17-21)はあと一歩で届かず、シリーズ勝ち越しを逃した。
一方でポジティブな要素も少なくない。チーフスを2度のスーパーラグビー制覇に導いた名将、デイヴ・レニーヘッドコーチの就任後の2年間で、FL/NO8ハリー・ウィルソンやNO8ロブ・ヴァレティニ、SOノア・ロレシウ、WTBトム・ライトら将来性豊かな若手が多数台頭。7月のイングランド戦では22歳のLOニック・フロストも非凡なポテンシャルを示し、FLマイケル・フーパーやCTBサム・ケレヴィ、WTBマリカ・コロインベテら日本でも活躍した中軸と合わせて成長力を感じるスコッドが形成されつつある。7月21日に発表されたアルゼンチンとの初戦に向けたツアーメンバーには、ケガが心配されたSOクウェイド・クーパーやユーティリティBKジョーダン・ペタイアらも名を連ねており、万全の布陣が整った時にどんなラグビーを見せるか楽しみだ。
スコットランドとの3連戦に2勝1敗(26-18、6-29、34-31)で勝ち越したアルゼンチン代表ロス・プーマスも、確かな可能性を秘める。昨秋の欧州遠征はアイルランドとの最終戦こそ完敗(7-53)を喫したものの、フランスに20-29と互角の勝負を演じ、イタリアには37-16で完勝して格の違いを示した。よくも悪くも調子の波の激しさが特徴のチームだけに、今回序盤の2試合をホームで戦えるのは(対オーストラリア)、貴重なアドバンテージといえるだろう。
チームは元オーストラリア代表監督のマイケル・チェイカが今春よりヘッドコーチに就任し、元アルゼンチン代表のフェリペ・コンテポーミやフアン・マルティン・フェルナンデス・ロベらをアシスタントコーチに加えた新体制のもとで強化を進めてきた。キャプテンのHOフリアン・モントーヤにLOグィド・ペティ、今季スーパーラグビーのクルセイダーズで大活躍したFL/NO8パブロ・マテーラら世界的名手がそろうFWは強力で、BKにもSOサンティアゴ・カレーラスやWTB/FBエミリアノ・ボフェリ、FBフアン・クルス・マリアら才能みなぎる俊英が勢いを生み出している。日本代表にとっては来年のW杯フランス大会で同じプールDに入るライバルだけに、このTRCはさまざまな面で注目すべきポイントが多くなりそうだ。
大会は日本時間8月7日(日)0時5分開始の南アフリカ対ニュージーランド(@南アフリカ・ネルスプロイト)で開幕。その4時間後の日本時間4時10分に、アルゼンチン対オーストラリアの第1節(@アルゼンチン・メンドーサ)がキックオフされる。
「南半球4カ国対抗戦 ザ・ラグビーチャンピオンシップ」
8/6(土)開幕!WOWOWにて独占放送&ライブ配信!
【第1節】
「南アフリカ vs ニュージーランド」
8/6(土)午後11:50〜[WOWOWプライム]にて生中継、[WOWOWオンデマンド]でライブ配信
「アルゼンチン vs オーストラリア」
8/7(日)午前3:55〜[WOWOWプライム]にて生中継、[WOWOWオンデマンド]でライブ配信
【第2節】
「南アフリカ vs ニュージーランド」
8/13(土)午後11:50〜[WOWOWプライム]にて生中継、[WOWOWオンデマンド]でライブ配信
「アルゼンチン vs オーストラリア」
8/14(日)午前3:55〜[WOWOWプライム]にて生中継、[WOWOWオンデマンド]でライブ配信
【第3節】
「オーストラリア vs 南アフリカ」
8/27(土)午後2:15〜[WOWOWライブ]にて生中継、[WOWOWオンデマンド]でライブ配信
「ニュージーランド vs アルゼンチン」
8/27(土)午後4:35〜[WOWOWライブ]にて生中継、[WOWOWオンデマンド]でライブ配信