ラグビーリパブリック

ライオン、日本で初キャップつかむ。トマ・ジョルメス[フランス代表LO]

2022.07.05

7月2日におこなわれた日本代表戦(豊田)で先発し、後半4分までプレーした。203センチ、127キロ。(撮影/松本かおり)



 現在来日中のフランス代表にトマ・ジョルメス(26歳/LO)という選手がいる。私は彼のことをひそかに『ライオン』と呼んで注目してきた。
 彼の髪型が、所属クラブであるボルドーのマスコットのライオンに似ていることがきっかけだったのだが、試合中、彼が戦う姿はまさにタテガミを振り乱して獲物に飛びかかっているライオンのようだ。

7月2日の日本戦で初キャップを得た。試合後の記者会見でファビアン・ガルチエHCは「30分間、今季は所属クラブのボルドーで試合に出続けて疲れがあるにもかかわらず、彼はとても高いレベルの試合をした。するべきことを全てして期待に応えてくれた」と評価した。

 彼の初キャップまでの道のりは決して平坦ではなかった。
 ジョルメスは10歳でラグビーを始めた。父親もジョルメスと同じLOの選手だった。叔父は元フランス代表LOのオリヴィエ・ブルゼ(72キャップ)だ。2016年、父も叔父もプレーした地元のグルノーブルで20歳でプロデビューし、その活躍が当時ラ・ロシェルのヘッドコーチだったパトリス・コラゾの目に留まり、2017年に移籍した。

「ラ・ロシェルでは無我夢中で頑張った。練習では毎回極限まで自分を追い込んだ。それが2年続いた。そして燃え尽きてしまった。練習が嫌になり、メンタルもやられ、体重も増えた。このまま続けても何もいいことはない、頑張りすぎは逆効果だと気づいた」

 2020年、ロックダウンの後にトゥーロンに移籍、心のバランスを取り戻し体重も落とした。しかし試合出場機会はあまり回ってこなかった。
 2021年3月、シーズン途中でボルドーに移籍することになった。ボルドーのクリストフ・ユリオスHCは、2018年にフレンチ・バーバリアンズを率いた時に参加していたジョルメスに目をつけていたのだ。

「ボルドーで練習メソッドを変えた。クリストフ(ユリオス)が練習やリカバリーの時間枠を作ってくれ、どこで練習をやめなければならないか今はわかっている」

 すると、試合中の動きがどんどん良くなってきた。ワークレートもプレーのインテンシティーも上がってきた。『ライオン』はまさに獅子奮迅の働きを続けた。
そのパフォーマンスが認められ、2022年のシックスネーションズ期間中に代表合宿に招集された。しかし合宿集合日の前日、トップ14の試合でハムストリングを傷めて参加することができなくなった。

「代表スタッフの候補者リストに入っているというだけでも嬉しいこと。招集され、試合に出るには、さらに努力しなければならない。代表チームのパフォーマンスのレベルをみてもわかるように、ここで自分の座を掴むことは容易なことではない。でも僕はそのために努力を続ける。いつか実現するかもしれない。フランスを代表して国の代表のジャージーを着る。光栄なこと、ぜひ経験したい」と現地のラジオで言っていたのは今年の4月のことだった。

 そしてとうとう実現した。

「この遠征を目標にしてきた。これからも謙虚にいながら最大限の努力をしていく。僕のポジションにはとても強い選手がいるので、このチームにできるだけ長くいるには努力を続けなくてはならない」

 頭にはこの日授与された代表キャップを被り、片手にはチームの洗濯物が詰まった大きな袋を持ち、ライオンはチームバスの方へ去っていった。


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