ラグビーリパブリック

14人のワラビーズ、ホームで対イングランド戦連敗を止める。

2022.07.03

後半28分にトライを奪ったオーストラリア代表HOフォラウ・ファインガア。(Getty Images)



 エディー・ジョーンズ率いるイングランドに8連敗を喫していたオーストラリアが、前半に退場者を出しながらも30-28で勝ち切った(7月2日/パース)。

 ラグビーに限らず多くのスポーツでイングランドを宿敵と見るオーストラリアは、クウェイド・クーパー(SO・花園近鉄ライナーズ)、サム・ケレビ(CTB・東京サントリーサンゴリアス)、 マリカ・コロインベテ(WTB・埼玉パナソニックワイルドナイツ)と、日本でプレーする海外組を招集した。

 対するイングランドは、ダニー・ケア(SH)、ヴニポラ兄弟(ビリー・NO8、マコ・PR)など長く代表から外れていた選手を呼び戻し、試合前から大きな話題を呼んだ。

 実力が拮抗していると見られていた両チームの戦いは、堅い前半戦で始まった。
 6分、20分とイングランドのオーウェン・ファレル(CTB)がPGを決めて先行。追うオーストラリアは、22分にノア・ロレシオ(SO)が応戦して3−6とした。
 この日SOとしてスタメン出場予定だったクーパーは、試合前のウォームアップで足首を痛めるというアクシデントに見舞われ、急遽ロレシオが出場した。

 オーストラリアはこの日、予想外の出来事に見舞われた。
 トム・バンクス(FB)、アラン・アラアラトア(PR)が早い時間に負傷退場したことに加え(それぞれ22分、26分)、ダーシー・スウェイン(LO)がレッドカードで退場となった(前半31分)。
 スウェインはイングランドのジョニー・ヒル(LO)に頭突き。その直前の密集で、ヒルから髪を引っ張られたことへの意図的な報復行為の罪は重い(ヒルはイエローカード)。

 両チームとも14人で戦った前半の終盤。オーストラリアのSOロレシオがPGを決めて6−6。同点でハーフタイムを迎えた。
「とにかく、規律だ。テストマッチの僅差の戦いは、ペナルティで勝負が決まる。後半は、規律面をしっかりして戦おう」とは、ハーフタイムにイングランドのコートニー・ロウズ(FL)主将がチームに語りかけた言葉だ。

 後半、先手を取ったのはオーストラリアだ。開始早々にイングランドがオフサイド。ロレシオがPGを決めた(9-6)。
 しかしイングランドはLOヒルがシンビンから戻ってくると勢いを得る。相手陣ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、エリス・ゲンジ(PR)のトライで逆転に成功。ゴールキックは外れたが、その後のPGをファレルが決めてリードを広げた(オーストラリア=9、イングランド=14)。

 流れが変わったのは後半20分を過ぎてからだった。
 24分、オーストラリアはBKが巧みに攻め、ジョーダン・ぺタイア(FB)がトライ。ゴールも決めて逆転した(16-14)。
 試合前の予想通り、イングランドは攻守ともに真っ向から肉弾戦を挑み、コリジョンに勝つことによって試合をコントロールしようとした。
 しかし、それが結果に結びつかない。67分、ビリー・ヴニポラ(NO8)がマイケル・フーパー(FL)に放ったタックルが頭部に当たってイエローカードを受ける。試合は再び14人同士の戦いとなった。

 後半28分、オーストラリアはそのPKからラインアウト→モールを形成し、隙を突いて密集から抜け出したフォラウ・ファインガア(HO)がインゴールに入った。
 37分にはイングランド陣でラックを連取した後にピート・サム(FL)がディフェンスの綻びを突いてトライ。両トライともゴールが決まり、オーストラリアがあっという間に30-14とリードを広げた。

 現実的に勝負が決まった時点で、イングランドは若手にテストマッチデビューの機会を与えた。
 19歳のWTBヘンリー・アランダルがファーストタッチで2人のタックルを弾き飛ばし、3人目をステップでかわしてトライ。21歳のSHジャック・ヴァン・ポートヴリートがゴール前のラックからトライを取るが、時すでに遅し。オーストラリアは30-28で対イングランド戦の連敗を8で止めた。

 試合後、オーストラリアキャプテンのフーパーは「何かと予想外の出来事が多い試合だったが、これもゲームの一部。まだまだ改善すべき点はあるし、来週に向けて準備に挑むだけだ。イングランドも生まれ変わって勝負を挑んでくるだろう」と冷静に試合を振り返った。
 デイヴ・レニー監督は、「正直言って、いろいろな意味でゲームプランから外れた試合でした。しいかし、経験豊富な選手たちがグランウド内で上手く修正してくれました。今日はイングランドに肉弾戦でやられた感があるので、ここが来週へ向けた課題です」

 対するジョーンズ監督は、「勝てるチャンスは何度かありましたが、数少ないチャンスを逃していては、テストマッチには勝てません。我々はチャンスをモノにする術を磨く必要があります。才能溢れる若手のテストマッチデビューはポジティブでしたが、彼らのキャリアはまだ始まったばかり。これからまだまだ学ばなければなりません。この遠征は3戦全勝を狙っていましたが、2勝1敗を目標に切り替えます」

 2016年にイングランド代表監督として祖国オーストラリアを訪れたジョーンズ監督は、3戦全勝という快挙を成し遂げた。6年の歳月の流れとともに、名将は何を思うか。
 この夏の対決は、まだ始まったばかりだ。


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