ラグビーリパブリック

今季のプレー時間が2000分を超える『プレミアム』選手は外れるも、フランス代表来日メンバーは「重さより動ける選手」が並ぶ。

2022.06.26

経験値の高い選手の一人、WTBダミアン・プノー。(写真/Getty Images)



 6月19日、ファビアン・ガルティエ率いるバーバリアンズはロンドンのトゥイッケナムでイングランドと対戦し、ウィル・スケルトンがレッドカードで退場になり40分以上も14人で戦ったにも関わらず、8トライを決め、52-21で快勝した。

 バーバリアンズのメンバーは、埼玉ワイルドナイツから参加したジョージ・クルーズを除いては全てトップ14でプレーしている選手、そのうち18人がフランス代表資格のある選手だった。

 膝靱帯手術のため長期離脱していたFLシャルル・オリヴォンが相手のボールをインターセプトし70メートル走り切って最初のトライを決め、復活を飾った。

 WTBダミアン・プノーのアクロバティックなトライもあった。
 また、初めて経験したNO.8ヨアン・タンガ(25歳)、FBマックス・スプリング(21歳)、SHノラン・ルガレック(20歳)らの活躍もあり、フランスの若い才能の豊かさをあらためて感じさせた。

セクー・マカルーも目を引いた。FLが本職も、この日はWTBで起用された。
マカルーは自陣22メートルからボールを持ち出し、イングランドの防御をかわしながら敵陣に入ったところでルガレックにパス。ルガレックが敵のプレッシャーを受けながらもゴールポスト前にキックで落とし、走り込んできたスプリングが押さえてトライにしたプレーにはコーチ陣からも笑みが漏れた。

「若い選手にとっても、我々にとっても新しい経験で学びの一週間だった。ダミアン・プノーやシャルル・オリヴォンのようにテストマッチレベルの選手は多くなかったが、全員が試合メンバーに入ろうと努力し、ポジション争いでお互いを高め合い、またマインドセットも素晴らしかった。経験のない選手はグラウンドの中だけではなく外でも多くのことを学んだ」とガルティエHCは準備期間を振り返った。

 試合に関しては特にディフェンスを評価し、「この3年間、ショーン(エドワーズDFコーチ)が我々のラグビーの土台を作ってくれている。ディフェンスなくしてアタックはあり得ない。良いディフェンスがあるからこそ、良いボールを得てアタックができる」と述べた。

 トップ14のプレーオフがおこなわれており、選手選考も困難な状況で日本戦の準備を進めなくてはならないというタイミングでの試合。指揮官は、「このレベルに達するなんて素晴らしい。若い選手をさらに成長させていきたい。練習は4日しかできなかったが2日だけ強度を上げた。それが日本遠征に向けて良い準備になった」と現在の仕上がり具合に満足した。

 試合の翌日、来日メンバーが発表された。バーバリアンズ戦のために召集されていたフランス代表資格のある19人全員に新たに23人が加わり、総勢42人が選ばれた。
 トップ14の準決勝で敗退したトゥールーズ、ボルドーからHOペアト・モヴァカ、LOチボー・フラマン、WTBマチス・ルベル、SHマキシム・リュキュ、CTBヨラム・モエファナ、SOマチュー・ジャリベール、またFBメルヴィン・ジャミネも選ばれた。

 キャプテンにはオリヴォンが選ばれた。
「復帰してからのトゥーロンで、そして先週のバーバリアンズでも素晴らしいパフォーマンス、意欲、そしてリーダーシップを発揮した。コーチ陣全員一致で決まった」とカリム・ゲザルFWコーチは述べた。

 最終的にシックスネーションズ全勝優勝に参加した選手が10人来日することになった。
 一方、ノンキャップの選手が17人、そのうち2部リーグの選手が4人、またU20サマーシリーズの準備合宿中だったフランスU20代表から3人の選手が新たに召集されている。
 平均年齢23歳、平均キャップ数6の若いチームだが、いずれも今季クラブで活躍して代表レベルで見てみたいと思われていた選手ばかりでとても楽しみな顔ぶれとなった。

 42人の選考基準として、「まず今季のプレー時間が2000分を超える『プレミアム』と呼んでいるカテゴリーの選手を休ませることにした。時間だけではなく怪我や疲労度も考慮した。彼らを休ませて心身ともにリフレッシュさせるタイミングが他にない。疲れた選手を無理に遠征に参加させると今後に向けて問題を積み重ねていくことになり、W杯が近づいているこの時点でリスクは取れなかった。また今回選ばれた選手も選ばれるに値する選手ばかり、彼らは実力で勝ち取った」と現地出発前の記者会見に現れたパフォーマンスディレクターのチボー・ジルーが説明した。

 ちなみに選考から外れた『プレミアム』の選手の今季のプレー時間は、ンタマックが32試合で2380分、アルドリットは30試合で2180分、フィクーは28試合で2151分、デュポンが30試合で2079分。終盤戦では明らかに疲れが見えた。
 この夏はしっかり休んでもらって、また元気なプレーを見せてもらいたい。

 また、「どんどんボールを動かし運動量がとても多い日本代表チームに合わせて、重さのある選手よりも動ける選手を選んだ。日本の蒸し暑さの中で動き続けることができるかということも考慮した」とジルーは続けた。

「暑さ対策はすでに行っている。トレーニングセンター内に設置されているサーモルームで気温、湿度を調整した環境で体を慣らしている。また今日(22日)は、熱を保持する機能のあるコンプレッションシャツを選手に着けさせて強度を上げた練習をした。もちろん栄養面でも指示を与えている」といつものように徹底した準備が行われている。

 フランス出国前に行われたPCR検査で、ショーン・エドワーズDFコーチ、ロラン・ラビットATコーチ、FBマックス・スプリング、FBエムリック・リュックが陽性となり隔離されたが、来日可能な状態になればチームに合流予定と発表されている。

 またトゥールーズのPRドリアン・アルデゲリが負傷のため不参加となった。本遠征でアピールしてW杯メンバーに入ることが期待されていただけに彼にとっては残念だが、その分他の選手にチャンスが与えられることになる。誰がこのチャンスを掴むことになるのか、こちらも楽しみである。


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