先週末、猛暑に見舞われたフランスで行われたトップ14準決勝は2試合とも大方の予想を覆す結果となった。デュポン、ンタマックらフランス代表の主力選手を数多く擁する前年度チャンピオンのトゥールーズがカストルに敗れた。また、こちらもウォキ、ジャリベール、リュキュ、モエファナと代表選手が名を連ねるボルドーがモンペリエに屈した。
リーグ戦1位と2位のチームが決勝に勝ち上がったのだから順当な勝利なのだが、この結果を予想していた人は多くはなかった。
どちらの勝者にも共通して言えることは、リーグ戦上位2に入り、準々決勝を戦わずして準決勝に進出することができたので、一週休むことができフレッシュな状態だったこと。さらに強いメンタル、強いディフェンス、そして強い団結で決勝戦への切符を掴んだことだろう。
カストルは以前からそれがチームのカルチャーであり、2018年の決勝戦でもその強さでモンペリエを降して優勝している。
しかし、その時代からモンペリエは変わったと会長のモヘド・アルトラッド氏は言う。
「フィリップ・サンタンドレ(ヘッドコーチ)が来るまでは、南アフリカの選手はこのテーブルで、フィジーの選手はそっちのテーブルで、フランスの選手はまた別のテーブルでと、国籍別に分かれて食事していた。何においてもそれがこのクラブの状態だった。しかし今ではすっかりそういうことがなくなった。この団結がグラウンド上でも感じられる。準決勝でも我々のディフェンスは素晴らしかった。ボルドーの選手に糸口を与えなかった」と満足する。
スピードとゲームを読む力で今季のモンペリエに幾度となく勝利をもたらした、南アフリカ代表SHのコーバス・ライナーが4月に負傷して以来、チームは失速していた。さらにフランス代表LOのポール・ヴィレムセまで負傷して戦列を離脱してしまった。
しかし、プレーオフの直前にもう1人のこのチームに欠かせない選手が怪我から復帰してきた。
もう1人の南アフリカ代表のCTBヤン・サーフォンテインだ。常に体を張ったプレーで攻める時も、守る時もチームを前に進め、若いイタリア代表SOパオロ・ガルビシに指示を出しながら司令塔となってチームを導く。
「すべてのリスクに対応してくれるセキュリティー・エージェントのようだ。彼がチームにいてくれて本当にラッキーだ」とチームメイトのFBアントニー・ブチエは笑いながら言う。
もう1人、このチームに欠かせない人がいる。
元フランス代表キャプテンのギレム・ギラドは、この試合で代表時代のような闘魂むき出しのプレーを見せた。
「現役最後の試合がファイナルだなんて、とても幸せだ。昨季はコロナもあり、また降格の危機に直面していた時期もありとても難しいシーズンだったから尚更だ。欧州チャレンジカップでの優勝で自信をつけ、みんなでグループを立て直し、団結することができた」と振り返る。
「今日、準決勝の会場だったニースのスタジアムは、トゥーロン時代にプレーした場所で、ここに来る時にトゥーロンを通ってきた。その道は僕が何年も通っていた道だ。そして来週は、かつて代表時代にプレーしたスタッド・ド・フランスで決勝戦ができるなんて。僕は、人生の中に時々現れるサインのようなちょっとした偶然を大切にする。素晴らしいストーリーだ」としみじみと噛み締める。
ストーリーの最終章はこれからだ。