きょう6月20日まで訪日中の15人制男子韓国代表。練習最終日の19日は在日選抜チームと20分ハーフの練習試合をおこない、韓国代表が前後半2トライずつ奪って24-12で同胞対決を制した。
試合は有観客でおこなわれ、在日選抜チームの家族などが猛暑の中、熱い対戦を見守った。会場はNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安のグラウンド。
当初、40分ハーフも検討されたが、15日に来日以来、ハードな練習を課してきた韓国代表の体力などを考慮して半分になった。
前半、韓国代表FB張容興(チャン・ヨンフン)が観衆を魅了した。3分に在日選抜のディフェンスをかわし右隅に飛び込んだ。途中、ジャージーのデザイン、色が両チーム重なり「分かりづらい」と選手から話があり、在日選抜が赤色ビブスを身につけて続行した。
9分、在日選抜は敵陣ゴール前の反則からタップでしかけ、最後はチームを支援するためかけつけた金崎廉太朗(三菱重工相模原ダイナボアーズ)が右中間へしとめた。
しかし、またも魅せたのが張だった。19分、自陣でボールをもらうとグラバーキックを蹴り、自分で拾い、在日選抜を置き去りにして逆転トライを左中間インゴールへ運んだ。コンバージョンはSOオ・ジミョンが決め、12-5で折り返した。
後半も最初に加点したのは韓国代表。6分、中央線右中間スクラムから順目に回し、在日から代表に参加したマツダスカイアクティブズ広島所属で2016年代表に選ばれキャップ3を持つCTB李修平(イ・スピョン)がトライを奪う。3分後にもトライ。
在日選抜は元神戸製鋼コベルコスティーラーズの森田慎也が5点を返した。
韓国代表は2022アジアラグビーチャンピオンシップの第1戦(6月4日、韓国・仁川市南洞アジアドラグビー場)で55-10とマレーシア代表を下しており、帰国後、7月9日にはホームに香港代表を招き決勝を戦う。そして、その勝者はアジア代表として、ワールドカップ2023フランス大会予選のアジア・パシフィックプレーオフ(7月23日)でトンガ代表と戦うことになっている。
韓国代表と在日選抜チームは試合後、お互い混じって記念撮影。そこに家族も加わり、温かい雰囲気がグラウンド上に展開された。
2トライの張は「トライを取れて嬉しい。韓国にいるとできない練習ができた」。張は香港戦の他、9月に南アフリカで開催されるワールドカップ・セブンズの候補選手だ。「セブンズ代表に向けてもしっかり準備したい」
韓国代表で後半出場した、期待されている社会人1年目のSH李ゴンは「15人制は李ミョンジュンさん、7人制は朴ワンヨン先輩たちと代表を争います。得意なラン、オフロードパスなどを強化して代表へ入ります」と代表ジャージーを手にする決意だ。
韓国チームの主将を務めたFLノ・オクギ(韓国電力)は「課題だったスクラムなどが徐々に改善されてきた。基本スキルが向上しました。韓国に戻り香港戦へ向け準備をしたい」と感謝を込めて話した。
なお今回、両チームの臨時コーチとして、FWを日野レッドドルフィンズのヘッドコーチである箕内拓郎氏、主にスクラムを三菱重工相模原ダイナボアーズのアカデミー担当である成昂徳(ソン・アンドク)氏、BKはクボタスピアーズ船橋・東京ベイの田邉淳アシスタントコーチが教えた。
ブレイクダウンへの入り方、ラインアウトでの基本スキルを教えた箕内氏は「両チームを教える機会をいただいて感謝しています。韓国が見据える対香港、対トンガの目標を在日選抜も理解して激しいプレーで取り組んでいました。できれば継続して交流してほしい。次は在日チームが訪韓するなど話も出ていたようです」と、継続した取り組みを期待する。
韓国を代表して呉英吉(オ・ヨンギル)大韓ラグビー協会理事/元大阪朝鮮高級学校監督は「日本ラグビー協会、在日ラグビー協会、韓国協会のおかげで良い機会を持てました。韓国へ戻り今回出た課題を修正して香港戦に臨みます」と述べた。
最後にほっこりする話題を一つ。両チームの合同練習初日。在日選抜チームのCTB権裕人(コン・ユイン)のもとへ韓国若手FWが駆け寄った。「中学生の時に韓国で上映された『60万回のトライ』を観ました。憧れのヒーローです」。これには権も思わずにっこり。「嬉しかった」。『60万回のトライ』は2010年度の第90回全国高校ラグビー大会(冬の花園)で準決勝進出した大阪朝鮮高級学校に密着したドキュメンタリー映画。呉大韓協会理事が当時同校ラグビー部を指導した。2013年、日本公開に続き韓国内でも上映され多くのラグビー関係者が鑑賞した。この日の在日選抜では他にSH梁正秋(リャン・ジョンチュ、トヨタヴェルブリッツ)、SO朴成基(パク・ソンギ、三重ホンダヒート)、韓国代表のCTB金勇輝(キム・ヨンヒ、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪)も当時のメンバー。