トンガラグビー協会は5月27日、7月からのパシフィックネーションズカップおよびラグビーワールドカップ2023予選に臨むトンガ代表“イカレ・タヒ”のスコッドを発表し、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安に所属するイズラエル・フォラウが初選出された。
現在33歳のフォラウはオーストラリア代表として73キャップを持つが、国際統括団体のワールドラグビーは昨年11月、「国の代表チームでプレーする資格」に関する規定の改正案を承認し、今年1月より、一定の条件を満たせば選手は一度だけ代表する国・地域を変更することが可能となった。
条件には、「最初の代表チームで最後に試合出場してから36か月(3年)間以上経過していること」、「選手が代表資格変更を希望する国で生まれている、または親や祖父母のうち誰かがその国で生まれていること」などがあるが、フォラウがオーストラリア代表として最後にプレーしたのは2018年11月24日のため3年以上経っており、両親がトンガ出身のため、条件クリアで、トウタイ・ケフ ヘッドコーチが率いるイカレ・タヒの一員となった。
ラグビーリーグ(13人制)、オーストラリアンフットボール(オージールールズ)と別の楕円球競技でも活躍し、2013年にラグビーユニオン(ラグビー)に転向してからも、スーパーラグビー通算最多トライ記録を樹立し、ジョン・イールズ メダル(オーストラリア年間最優秀選手賞)を3度受賞するなど、世界最高のフルバックと呼ばれたフォラウだが、2019年にSNSで極端な宗教的見解による過激な投稿をして物議を醸し、同性愛者などを中傷したと大批判され、オーストラリアラグビー界から追放されていた。
そして騒動後、2020年にラグビーリーグでアスリートとして再出発し、昨年7月にはシャイニングアークス入団が発表され、再び15人制に戻ってジャパンラグビーリーグワンで活躍していた。
今年7月にフィジーで開催されるパシフィックネーションズカップには、トンガ代表、フィジー代表、サモア代表のほか、オーストラリアAも参戦することが決まっており、フォラウは、かつて親しんだゴールドジャージーの男たちと激突する可能性がある。
来年のワールドカップを見据えるトンガラグビー協会は、フォラウのほかにもトンガにルーツを持つ他国代表経験者に積極的にアプローチしており、日野レッドドルフィンズで共同主将を務めた元ニュージーランド代表スクラムハーフのオーガスティン・プルも、今度のスコッドに招集されている。
プルは2014年にニュージーランド代表“オールブラックス”として2キャップを獲得し、その後、7人制代表として2016年のリオオリンピックにも出場しているが、それ以来、黒衣は着ておらず、父方がトンガ出身とのことで、トンガ代表入りが叶った。
そのほか、ニュージーランド代表から資格変更して昨年の東京オリンピック予選で母国トンガの7人制代表キャプテンを務めたマラカイ・フェキトア(CTB)もイカレ・タヒの一員となり、同じくオールブラックスでプレーしたことがあるチャールズ・ピウタウ(FB/WTB)も両親の出身国であるトンガの代表に選出された。
なお、新たにトンガ代表入りが期待されている元ニュージーランド代表のジョージ・モアラ(CTB)は、所属クラブの試合で負傷した影響により、今回は招集されていない。
そして、トンガに血縁があり、2019年のワールドカップを最後にオーストラリア代表から離れているセコペ・ケプ(PR)やアダム・コールマン(LO)も今年中に資格変更が可能となり、11月の欧州遠征でトンガ代表の赤いジャージーを着ることになるかもしれない。