アレクサンドル・ルイーズ(35歳)。2012年からワールドラグビー・セブンズシリーズのレフリーに任命され、2016年のリオ・オリンピックにも参加。15人制では2019年ワールドカップ日本大会でアシスタントレフリーとして参加した国際レフリーだ。
同氏は昨季限りでレフリーを引退し、今季からモンペリエのコーチングスタッフに加わっている。
昨季、チャレンジカップの準決勝前にモンペリエのアドナイザーとして練習にスポットで参加した。コンタクトの姿勢について提言した。
そのときの印象をフィリップ・サンタンドレ ヘッドコーチ(以下、HC)は、「アドバイスとメソッドがとても良かった」と話す。
ルイーズは2012年にトップ14のレフリーとしては最年少の25歳でデビューした。
その後レフリーを続けながら、3部、4部リーグのチームでコーチを続け、2018年にはコーチの資格も取得した。
モンペリエでの最初の目標は、「レフリーとしての自分を忘れてもらって、コーチとして認識してもらうこと」だった。「初めてのトレーニングの前日は、ワールドカップの試合の前日と同じぐらい眠れなかった」と思い出す。
ゲーム形式の練習では、レフリーをしていた時のようにフィールドの中で選手の動きに合わせて動く。
しかし今は笛を吹かない。その代わりにセッションの切れ目に「今のプレーはペナルティを取られる可能性があるから気をつけて」と全体の練習の妨げにならないように、さっと選手に伝える。
指摘された選手からも「実際プレーの中で起きたことをすぐに説明してくれるから理解しやすい」と受けがいい。
「フィールドに入っているのは、レフリーをするためではなく、コーチとして自分が担当しているコンタクトの姿勢、ブレイクダウンでのプレー、個々のディフェンスやラインスピードを見るため」とルイーズは説明する。
「試合でイエローカードになるようなプレーをすれば、フィールドから退場させてシャトルランを課している」と言う。
厳しさはレフリー時代から変わらない。
4月初めのペルピニャン戦、チームは23-13で勝利した。しかし、ペナルティを15も取られた。
「これは僕の責任。試合後はロッカールームの荷物をとり、1人さっさとバスに乗った。帰りのバスの中でも誰とも話さなかった。3日間はブスッとしていた」
レフリー時代よりも感情を出すことができるようだ。
「彼はレフリーの目とコーチの目で分析することができ、チームにとっては大きなプラス」とサンタンドレHCは評価する。
「レフリー時代から気づいていたことだけど、選手はルールを把握していないことがある。選手の方から質問しにきてくれるようになり、その場で説明し、わかりやすい動画をシェアしている」とルイーズは話す。
結果、選手のルールへの理解が深まった。
また、レフリーへの態度も指導する。「両手を広げて敵のペナルティをアピールする選手には容赦しない。レフリー時代、大嫌いだった」と言う。
レフリーにアピールできるのはキャプテンだけだ。そのキャプテンには、話しかけるタイミングなどレフリーとのコミュニケーションの方法をアドバイスする。
ルイーズにとって一つだけ残念なことがある。
「試合後、レフリーのロッカールームを訪ねて、かつての同僚とビールでも飲めると思っていたけど、そうすることで、『このレフリーはモンペリエのスタッフと親しくしている』という批判を招くことになるかもしれないと気づいた。寂しいけど禁じている」
現在モンペリエはトップ14では1位。また欧州チャンピオンズカップでも準決勝進出を決めている。
フランスでは、ワールドカップ日本大会の決勝を担当したレフリーのジェローム・ガルセスが、代表チームのスタッフに参加している。
カストルにもProD2(2部リーグ)の元レフリーが週1回、ディシプリン、コンタクト、そしてレフリーとのコミュニケーションの指導にあたっている。
また今季でレフリーを引退するロマン・ポワットも来季からトゥーロンのスタッフに加入することが発表されている。