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欧州番記者チェック。走るアイルランドか、はじけるフランスか。シックスネーションズ優勝のゆくえは週末の最終節で

2022.03.16

ウェールズ戦では貴重な先制トライを挙げたFLアントニー・ジュロンシュ(Photo/Getty Images)

 2022年シックス・ネーションズが今週末に最終節を迎える。優勝の可能性があるのは2チーム。本命フランスと、下馬評通りに新たな強さを見せつけてきたアイルランドだ。両国の対戦は2月に終わっており(フランス30-24アイルランド)、最終節はフランスがイングランドと、アイルランドがスコットランドと戦う。WOWOWで全試合が独占放送&ライブ配信される大会から、フランスの内幕レポートでお馴染みの福本美由紀氏が優勝争いをチェックする。

 2月5日に開幕した今年の欧州6ネーションズもこの週末最終節を迎える。第4節を終え、ここまで全勝のフランスと、そのフランスに1敗を喫したアイルランドの2チームで優勝が争われる。開幕前の予想通りの展開となった。両チームに共通しているのは、昨年11月にNZを降し、自信をつけ勢いに乗っていたところだろう。

 フランスは初戦でイタリアに37-10と手堅くボーナスポイントを獲得して勝利した翌週、スタッド・ド・フランスの約8万人の観衆の前でアイルランドとの接戦を制し(30-24)、スコットランド戦では6トライを決め圧倒的な攻撃力を見せ、マレーフィールドで8年ぶりの勝利(36-17)をものにした。

 しかし先週末のウェールズ戦は一転して閉塞的な試合となった。開始8分のFLアントニー・ジュロンシュのトライの後は、ウェールズの戦術的なキックで何度も後退させられながらも、強固なディフェンスでゲインラインを越えさせず、またディシプリンの高さでウェールズSOダン・ビガーに得点のチャンスを与えず逃げ切り(13-9)優勝に王手をかけた。ウェールズが6ネーションズのホームの試合でトライを取れなかったのは13年ぶりだ。

 一方アイルランドは、初戦でウェールズに29-7のスコア以上の強さを感じさせて勝利、翌週フランスに敗れるも、第3節は60分間を13人で戦うことになったイタリア相手に9トライを決め57-6と力の差を見せつけた。

 第4節のイングランド戦は、開始早々にLOチャーリー・ユールズのレッドカードで14人となったイングランドの果敢な戦いぶりに阻まれはしたものの、70分過ぎてイングランドの選手に疲れが見え始めると2トライ決め、ボーナスポイントをとって勝利、優勝への望みを繋いだ。

 アイルランドはもともと強いFWと正確なキッカーで、ハイパントを多用しピック&ゴーを繰り返し、ゴール前ラインアウトモールからトライをとる印象が強かったが、アンディー・ファレルがHCに着任して以来、パスを繋ぎボールを生かすようになり攻撃の幅が広がった。テンポ良く球出しをしてプレーにスピードをつけるSHジェイミソン・ギブソンパークの起用が効いている。

 WTBジェームズ・ロー、CTBギャリー・リングローズ、FBヒューゴ・キーナンに加えて、開幕のウェールズ戦で代表戦初出場しプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたWTBマック・ハンセンの4人が今大会4節までの記録でランメーターベスト10に入っている。NO8キーラン・ドリス、FLジョシュ・ファンデルフレイヤーも続いている。こんなに駆け回っているのかとあらためて感心する。

アイルランドの弾丸FBヒューゴ・キーナンは25歳。2020年10月に代表デビュー(Photo/Getty Images)
191㌢、日本のラグビーファンにも馴染みの巨漢WTB、ギャリー・リングローズ(Photo/Getty Images)

 最終節、アイルランドはホームのアビバ・スタジアムでスコットランドを迎え撃つ。スコットランドがこのスタジアムで最後に勝ったのは2010年、またアイルランドに勝利したのは2017年に遡る。グレガー・タウンゼントHCの下、フランスメディアが「シャンパン・ラグビー」と言うほど、スコットランドもどこからでも攻めることができる魅力的なラグビーをしているが、今の両チームの状態を比べると、アイルランドがボーナスポイントを獲得して勝利すると予想される。

 その試合の結果を見てから、フランスはスタッド・ド・フランスにイングランドを迎えての決戦に臨む。アイルランドが勝てば、フランスはイングランドに勝利することがマストになる。

 ウェールズ戦の後、ガルティエHCは「すべてが良かったわけではない。判断が良くなかったところもある」と言っていた。キャプテンのアントワンヌ・デュポンも「空中戦と戦略的なキックの使い方ではウェールズの方が優っていた。イングランド戦に向けて改善するべき点」と上げていた。

 対するイングランドは、14人でアイルランド戦を戦うことによりチームがようやく一つになったように思える。エディー・ジョーンズHCは「2023年W杯に向けてこのチームの基盤となる試合だ」と言っている。

 何よりも驚かされたのは、アイルランドのスクラムを後退させ引き裂いたイングランドFWだ。PRエリス・ゲンジがトイメンのアイルランドのタイグ・ファーロンから何度もペナルティーを奪った。フランスは土曜日のファイナルがどんな試合になるのか、あらためて認識したことだろう。

タックルにいく右PRウィニ・アトニオはNZ生まれ。州代表レベルで苦しんでいたが、フランスはラ・ロシェルで飛躍した(Photo/Getty Images)

 このフランスチームは試合を重ねるごとに成長している。11月にNZを倒して自信もついた。優勝にここまで近い状態で最終節を迎えるのは初めてだが、選手もスタッフも経験を積んできており、精神的にも身体的にも良い状態に仕上げてくるのではと思われる。

「決勝のひとつ前の試合が精神的に最も難しい。決勝は自分達の才能を存分に発揮するだけ」と言うのは、12年前にグランドスラムを達成したチームのキャプテンだったティエリー・デュソトワールだ。

さらにスタッド・ド・フランスの8万人の観客の後押しもある。

 フランスだけではなく、今や世界のラグビーファンを魅了しているのは、復活したフレンチフレアだ。1人の選手のひらめきに他の14人が共鳴しブルーの波が押し寄せるように動く。NZ戦でのロマン・ンタマックのインゴールからのカウンターが良い例だ。ガルティエHCはフランスのアイデンティティーにこだわってチームづくりをしてきた。もう一方で大切にしているのがラグビーの基本であるセットピースとディフェンスで、「恐れられるセットピースとディフェンス」を目指してきた。チームのアイデンティティーができてきている。

 フランスが接戦を制して2022年ヨーロッパチャンピオンに輝くところをようやく見られそうだ。

 そして7月にはこのフレンチフレアが日本代表と対戦するために来日する。相手に安定したアタックをさせないためにも、ジャパンのスクラム、ラインアウトは重要なディフェンスの起点になる。シャンパンの泡が弾けるように湧き上がってくるレ・ブルーの攻撃を日本代表がどう迎え撃つか、今からとても楽しみだ。

ラグビー欧州6か国対抗戦 シックス・ネーションズ 

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2月5日(土)〜3月20日(日) 
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