セルジョ・パリッセ、38歳。イタリアラグビー界のレジェンドだ。
フランスメディアはイタリア代表のメンバーが発表される頃になると、「パリッセは召集されるのか?」と毎回話題にしてきた。今回のシックスネーションズも例外ではなかった。
先週木曜日、彼が現在所属しているトゥーロンの試合2日前の記者会見だった。パリッセに記者がその質問を投げかけると、苦しい状況にあるクラブの力になるために代表を辞退したことを明かした。
トゥーロンはトップ14で現在12位と降格の危機に直面している。
「代表メンバーのリストが発表されたが、僕はその中に入っていない。代表監督やイタリア協会の会長とも話し合い、このシックスネーションズで代表最後の試合に出るつもりだった。でもトップ14の延期になった3試合がシックスネーションズの期間におこなわれることになった。それを考慮していなかったし、クラブがこんな状況になることも予想していなかった。イタリア代表チームに『今は代表で試合することよりもトゥーロンに残ることを選ぶ』と伝えた」とパリッセは語った。
イタリア代表142キャップのパリッセの代表サヨナラ試合はこれまでも延期されてきた。
2019年ワールドカップでプール予選の最終戦、対ニュージーランド戦が台風の影響で中止になった。
翌年のシックスネーションズで、イタリアのホーム試合で、サポーターの前に立って最後の試合を戦うはずだった。しかしそれも新型コロナウイルスの感染拡大のため延期となる。その後も自身の負傷もあり、現在まで叶えられていない。
「トゥーロンに入団して以来、僕の中での最優先はトゥーロンだ。イタリア代表はボーナスのようなもの。だからここに残って戦うと決めた。これからモンペリエ(現在2位)、ラ・ロシェル(現在6位)との大切な試合がある。いまクラブは苦しい状況にあり、この状況からクラブが脱出できるよう力になりたい。代表スタッフも協会も賛成してくれた。彼らもがっかりしているが、一番がっかりしているのは僕自身。でも人生には選択しなければならないことがあり、これが最も筋の通った選択だ」とパリッセは続けた。
パリッセは今季開幕第3節で手首を骨折し、3か月プレーできなかった。その間、苦戦するチームをコーチの隣で見ることしかできなかった。
パリッセの発言を受け、トゥーロンのフランク・アゼマHCは「ローマでは彼のサヨナラ試合の準備が進められていたことだろう。多くの人が彼を讃えたかったはずだ。だが彼はクラブのために彼のベストなプレーをしようと決心してくれた。素晴らしい態度だ」とパリッセを讃えた。
2日後のビアリッツ戦。現地メディアが『恐怖の試合』と銘打った残留を賭けた対戦で、トゥーロンは45-17と勝利した。今季初めて、このチームのポテンシャル通りのパフォーマンスができたのではないだろうか。
パリッセは80分間積極的にプレーにからみ、また敵ラインアウトで何度もスティールする活躍だった。
とても38歳とは思えない。若い選手が多いトゥーロンでは、パリッセのように戦う背中を見せてくれるベテランの存在がありがたい。
イタリア代表のブルーのジャージーを着たパリッセをまた見ることができるだろうか?
「3年前、自分がトゥーロンのジャージーを着ることになるとは思ってもいなかった。でも今はこのジャージーを着て全力でこのクラブのために戦っている。人生、何があるかわからない」と言う。
現役引退についても、「将来のことはまだ決めていない。今は一日一日、一試合ずつを生きている。とにかく勝つトゥーロンが見たい」と述べた。
ビアリッツ戦後の、恒例のロッカールームでのチーム写真。10も年下のチームメートに混じり、パリッセも笑顔で写っている。
トゥーロンはトップ14で残り8試合、チャレンジカップもまだ残っている。シーズンの終わりにパリッセのこの笑顔が見たい。