ラグビーリパブリック

ボーデン・バレットが見たワールドカップ1年7か月前のフランス代表

2022.02.23

脳震とうからの復帰も間近のボーデン・バレット。(Getty Images)



「インゴールからボールを持って駆け上がっていくンタマックは『自由』の象徴だった」
 フランススポーツ紙『レキップ』のインタビューで、昨年11月のフランス×NZ(40—25でフランスの勝利)でのロマン・ンタマックのインゴールから仕掛けたカウンターについて尋ねられたオールブラックスのSOボーデン・バレットは答えた。

「彼は結果を恐れず自由に自分を表現した。まるで魔法がかかったようだった。僕たちはみんなそんな境地になることを目指してプレーしている。(シックスネーションズの)アイルランド戦でダミアン・プノーがデュポンのパスを足でコントロールしたのもそう。子どもがするように、また僕たちも練習の時に遊びでしているように、失敗を気にせず、観客のプレッシャーやコーチに叱られるのではという不安からも解き放たれ、ただただ楽しんでいるようだ」とフランス代表チームのプレーについて印象を語った。

 フランス戦の前週のアイルランド戦で頭部にタックルを受け、ウォーターボーイとしてチームをサポートしていたバレット。「この試合の時はまだ頭の中に霧がかかったような状態で、スタジアムの歓声が頭で鳴り響いていた。キックティーを持っていくのに走ると激しい頭痛に襲われた」と脳震とうの症状に苦しみながらも、「スタジアムの雰囲気、フランスサポーターのものすごい声援を全身で感じ、ワールドカップはこの空気の中で戦わなければならないんだと思った」と2023年の開幕戦に思いを馳せていた。

「フランス代表とサポーターが一体になっていた。コーチの手腕によるところが大きい。彼はフランス代表に光を与えた」とファビアン・ガルティエ監督の功績を讃えた。

 また、この試合で見たアントワンヌ・デュポンは強烈だった。
「とてつもなく強い。彼が巨大なディフェンダーにも負けずに前進するところをこの目で見た。ラック周辺で彼に50パーセントのチャンスでも与えるとたちまち脅威になる。スピードもパワーもあり、常にサポートにもついている。このチームのプレーに完璧にはまっている」

 先週は朝5時45分に起きてフランス×アイルランドを見た。WTBギャバン・ヴィリエールに驚いた。
「体格は大きくないが素晴らしい選手。チェズリン・コルビのようだけど、もっとアグレッシブでしつこくてディフェンスもいい。抜け目なく次々と仕事をこなす。サイズは違うがコーリー・ジェーン(元オールブラックスWTB)のようだ」

「NZでは近年、北半球のラグビーへの関心が高まっている。対照的なこの2チームの対戦はとてもためになった。しっかり組織化されたアイルランドのプレーに対して、フランスは自由を与えられていて何をしてくるのか読めない。ボールキャリーできる強力なFW、スナイパーのようにボールを飛ばすデュポンがいてンタマックとの息もあっている。その後ろにはあらゆるオプションになり得るBKがいる。フランスの戦術は選手の特性によく合っている」と分析する。

 フランスのプレーを見ていて、「選手に合ったゲームプランを取るべきか、ゲームプランに合わせて選手を選ぶべきか?」とあらためて考えさせられたと言う。

「フランスは今素晴らしいラグビーをしている。これからワールドカップまでに修正はしてくるだろうが、大きな骨組みはできている。我々はこれから2年でそれに応えなくてはならない。いろいろなプレーを見て研究し適応していかなくてはならない。これからオールブラックスのプレーが変わっていくのを見てもらえるだろう」と今後の展望を述べた。

 2か月ほど続いた脳震とうの症状もようやく治まり、スーパーラグビーパシフィックの準備を進めている。
「コンタクトも少しずつ増やしていき、3月5日のチーフス戦で復帰できればと思っている」

 2023年ワールドカップの開幕戦では、やはりこの人がいるオールブラックスとの対戦が見たい。
 脳震とうから順調に回復してくれることを祈る。

Exit mobile version