2022年シックス・ネーションズで本命視されるのはフランス。そして、昨年秋のテストシリーズでニュージーランドを倒したアイルランドは、間違いなくもう一つの注目チームだ。2月5日開幕 、WOWOWで全試合が放送&ライブ配信される大会から、欧州在住の竹鼻智氏が好調チームにクローズアップする。
グランドスラム(全勝優勝)チームがいなかった昨年大会は、4勝1敗のウェールズが最後に優勝を決め、2位のフランス、3位のアイルランド、4位のスコットランドが3勝2敗で並ぶ僅差の結末となった。
欧州ラグビー界の真冬の風物詩ともいえる、シックス・ネーションズ。毎年この季節になると、各チームは当落選上の選手も含めた代表合宿招集メンバーと、該当選手の負傷やコンディションなどの精査を行う。
2月5日(土)の開幕戦前週を迎えたアイルランドはケガ人復帰を発表。LOイアン・ヘンダーソン、WTBキース・アールズ、FLジョシュ・ファン・デル・フリール、SOジョーイ・カーベリーと負傷を抱えていたメンバーが、初戦のウェールズ戦に向けた練習に合流するという朗報だった。
主将、そして大黒柱としてグランド内外でチームをリードするのは、SOジョナサン・セクストン。昨年秋の日本代表戦で100キャップ目を獲得したカリスマキャプテンは、36歳の今も、実力でスタメン司令塔の一番手としてその名をチームシートに連ねている。経験と年齢を重ねた名選手なら誰でも、軽症を含めたケガや、疲労回復にかかる時間やコンディション調整に悩まされる。稀代の名選手であるセクストンとて、例外ではない。
だが、アイルランドラグビーはコンディション維持の面でアドバンテージがある。この国の大きな強みは代表チーム(ラグビー協会)とプロクラブの協働が非常に上手くいっているという点だ。セクストンだけでなく、34歳で112キャップを誇るPRキアン・ヒーリーなどのベテラン選手は、代表戦に最高のコンディションで挑めるよう、代表監督が所属クラブに対して、「この週の試合は出さないで貰えないか?」と頼むことができる。クラブと代表で良好な関係が築かれているため、クラブの監督は代表監督からの頼みに応じ、かつ色々と相談しているという。
代表チームの勝利を最大の目的として国内のラグビーが協働するアイルランドでは、協会が選手の移籍を「推奨」することもできる。有名な例で言えば、セクストンの後継者とされる現在26歳のカーベリーだ。
カーベリーは、2018年にレンスターから、ライバルクラブであるマンスターへ移籍している。レンスターではセクストンがスタメンのSOとして活躍しており、2番手SOであるカーベリーはFBで出場する試合も多く、司令塔としての試合経験を積めていなかったからだ。
もちろん、本人の意思に反して無理やり移籍を強いることはできないが、「アイルランドの将来のため、マンスターへの移籍を考えてくれないか?」と頼まれたカーベリーは、移籍を決意した。細身で繊細なテクニシャン。新天地では負傷で欠場を強いられたことも多かったが、出場すればスタメンSOとしてその才能を十分に発揮、経験も積んでいる。
FWに目を向けてみると、3番(右PR)から1番(左PR)へのコンバートを遂げたアンドリュー・ポーターが注目選手の一人として挙げられる。
スクラムを両PRで組めるだけでなく、ボールを持った時の仕事、密集での力仕事、激しいディフェンスと、必要とされるタスクを全て上手くこなせる器用さがある。26歳で40キャップと、チーム内では中堅としていい仕事が求められる時期にいる。当然、来年のワールドカップでの主力候補であり、昨年に続き接戦が多いと予想される今大会で、活躍を期して燃えているだろう。
中堅選手といえば、27歳、37キャップのCTBギャリー・リングローズ、28歳、53キャップのCTB/WTBロビー・ヘンショウ、25歳、16キャップのFBヒューゴ・キーナンなど、スピードとスペース感覚に優れた“飛び道具”が、どれだけトライを挙げられるかも勝負を左右する。
日本であればまだ大学生の22歳で今大会の代表に招集されているのは、LOライアン・バード(6キャップ)と、SHクレイグ・ケーシー(4キャップ)だ。二人とも昨年夏の日本代表戦にも出場しており、未来の代表チームを背負っていく期待とともに経験を積んでいる。
この代表チームをまとめるのは、46歳のアンディ・ファレル監督。選手時代は、イングランドと英国代表としてラグビーユニオン、ラグビーリーグともに代表キャップを持つツワモノで、イングランド代表のオーウェン・ファレルの父としても知られる。
昨年秋のテストシリーズでは、日本代表を60-5、翌週にはニュージーランド代表を29-20で下し、その翌週にはアルゼンチン代表を53-7で大破したアイルランド代表。レンスター、マンスター、アルスター、コナートの4つのクラブから代表選手を集めるアイルランドは、決して選手層に恵まれた国ではない。だが、国内のプロクラブと代表チームの協働体制で言えば、間違いなく欧州ナンバーワン。今大会では、どんな戦いぶりを見せてくるだろうか。
ラグビー欧州6か国対抗戦 シックス・ネーションズ
2/4公開! ラグリパYouTubeチャンネルで、欧州vsフランス「番記者」の開幕直前トーク!
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2月5日(土)〜3月20日(日)
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