「FWで優位に立てればラグビーはシンプルになる」と先週のビアリッツ戦(12月4日/39-11で勝利)の試合後にコメントしたのは、クレルモンのアシスタントコーチのグザヴィエ・サドゥルニだ。
試合開始早々のビアリッツボールのファーストスクラムを押し込み、ターンオーバーした。両チームのFWの力関係が決まった。
前節(11/27)、昇格チームのペルピニャンに試合終了間際に逆転され、今季開幕以降、波のあるパフォーマンスを指摘されていた。「今日は結果よりも、『やると言ったことをやる』を目標にしていた」と、この日3度モールからトライを決めたHOヨアン・ベエレガライは言う。
HOでハットトリックを達成したのはトップ14では3人目。「前で仕事してくれているFWの大きなお尻にくっついていって、ラインが見えたらボールを持って飛び込んだだけ。頑張ってくれたFWを讃えるべき」とインタビューに答えながら笑みが溢れる。
負傷のためレギュラーのSHモルガン・パラとセバスチャン・ベジーが戦列離脱、この日は21歳のケヴィン・ヴィアラールが初スタメン、また18歳のバティスト・ジョノーがトップ14デビューを果たした。終始敵を圧倒するFW陣の後ろで安心して自分たちの仕事に集中できたことだろう。
後半は激しい雨となったが、BKのプレーにも勢いが感じられた。
この日CTBに配置されたダミアン・プノーが、ジョージ・モアラと交差しながら自由自在に動き回り、ビアリッツのディフェンスをかき乱す。SOカミーユ・ロペスからのキックパスを受け取りトライも決めた。
松島幸太郎もラックに入り、ハイボールを制し、ボールを持っては防御に何度も切り込んだ。
この試合で特に目を引いたのがキャプテンのアルチュール・イチュリアである。
「長いシーズン、負けることもある。でもペルピニャン戦のような負け方は許されない。もっとプライドを持たなければ。僕たちがここにいるのは偶然じゃない、このクラブを代表して戦うことを選んだのだ。それぞれが自身に対してもっと努力することを強いなければならない」と試合前のインタビューで訴えていた。
パラが今季でクレルモンを退団することが先週発表された。ロペスも今季終了後、移籍を希望していると報道されている。この2人のリーダーがいなくなった後、誰がチームを率いるのかと心配されていた。
「主力がいなくなれば、その分僕たちがカバーしなければならない。僕は喜んで引き受ける」と話していたイチュリアが、行動でその決意を見せた。敵ラインアウトボールを4度奪い、タックルは12/12の成功率。試合中も周囲に気を配り、リーダーの風貌になってきた。
スタンドでは楽隊が明るい音楽でスタジアムを活気づける。チームについて500キロ以上も離れたビアリッツから遠征してきたビアリッツサポーターも、クレルモンの楽隊のリズムに合わせて一緒に歌う。
フランスのサッカーのスタジアムでは、最近サポーター間、またサポーターと選手の間で残念な事件が続いているが、ラグビーは平和である。スポーツ担当大臣が「自分の息子をサッカーではなく、ララグビースタジアムに連れていっていてよかった」と発言してしまうほどだ。
この試合でクレルモンの選手が着ていたジャージーは、フランソワ・グロリエールというクレルモン=フェランのアーティストに特別にデザインされたもので、フランス人のルーツとされているガリア人がラグビーをしているイラストが描かれている。
このジャージーは、それぞれの選手のサイン入りでオークションにかけられ、売上の半分は『ASM SOS』という難病の子供の支援活動団体に寄付される。89ユーロからスタートし、現段階(12/7)では、ジョージ・モアラのジャージーが635ユーロになっている。オークションは、12月12日(日)フランス時間15時まで。
ちなみに、同デザインのジャージーがこの日スタジアムのブティックで300枚限定販売され、数時間で完売となった。